2008年12月31日水曜日

ZARA

ヨーロッパの各国はもちろん、日本でも存在感の高いアパレル小売りのZARA。Affordable Fashionなるポジショニングで一躍有名になりました。ZARAは、Strategyのクラスの中盤あたりのケースでした。

このクラスは、朝から22時まで続くクラスで、丸1日ミーティングルームにスタディグループ6人でこもって、Strategy Auditをするというもの。スタディグループによっては、議論の収拾がつかなくなるところもあるとか。

我がグループは、はじめのストラクチャーをきちっと作ったおかげで、役割分担や個々の作業は比較的スムーズ。最後の仕上げはちょっとこづったけれど、ネイティブスピーカーの高度な編集能力によって、いいレポートが仕上がりました。

洋服のデザインから製造そして店舗のデリバリーまでのリードタイムが、普通のアパレル会社の場合は、8ヶ月。すなわち、ワンシーズン前から企画をはじめて翌シーズンできるというのがパターン。一方、ZARAは、わずか21日という超イノベーティブなバリューチェーンを産み出したとてつもない企業です。

そういう企業なので、至る所でぶっとんだことをやっている企業なわけですが、個人的に面白いと思ったのは、メリハリの効いた外部リソースの使い方です。

調達:
ベーシック品50%は、外部から調達してくる
ファッション品50%は、コア商品として内製する

内製・外製基準が明確。意外とこれが明確でない企業は多い気がする。工場の稼働が余ったから作っていますとか、単純なコスト比較で、外注してしまったりして、自社工場の位置づけが曖昧に成ってしまうケースはよくあるパターン。

製造:
労働集約的な作業は、零細企業にアウトソース
機械化可能な作業は、自社で全部自動化

自動化できない部分―すなわち縫製―は、自社工場の周辺に零細企業を呼びこんで、アウトソースしている。それも、生地や自社工場にピックアップしてもらい、縫製したら工場に届けるということで、「縫製」の部分だけやってもらい、その他の部分にはタッチさせていない―ノウハウ流出せず。

デザイン:
デザイン学校の卒業生を採用し、有名ブランドを徹底的にパクる

このおかげで、デザイナーコストがきわめて安い。有名ブランドをコピーするだけなので、クリエイティビティはいらず、ベーシックスキルだけあればOK。かつ、じつは、新卒の若い人達なので、ZARAのターゲット顧客層でもあるのもきわめてプラス。

宣伝広告:
やらない

自社、アウトソースという議論ではなく、そもそもいわゆる「広告宣伝」はやらない。そもそも何もしないという、第三の選択肢を提示してくれた意味は大きい。これは流通業の通常の広宣費を考えれば、とてつもないコストインパクトになります。その代わり、店舗のレイアウト、ディスプレイ、口コミなどが広告宣伝の代わりになっている。

***

企業がだんだん成長してくると、だんだんと面倒くさいことは、戦略的アウトソーシングと称して、「はい、これも外注さんお願い」、となってきて、気づいてみると、「自社のコアなものって何だっけ」と自問する大企業は少なくありません。いやほんとに。
企業のバリューチェーン上で、自社で何をどのようにやり、他社に何をどのように出すのか?そんな問いのヒントになるケースだと思います。

2008年12月28日日曜日

あらゆるものが個人間取引で可能な時代

街中の銀行よりも、借り手も貸し手も有利なレートで、貸し借りができるようにしたのがProsperという会社。
http://london-twk.blogspot.com/2008/12/zopa.html

じつは、金融サービスに限らず、ありとあらゆるモノ―それは、人、モノ、カネ、サービス、知恵―が、個人の間で取引できるようになっているのが今の時代です。

「人」ということでいえば、出会い系サイトは、社会現象として、個人と個人の出会いを加速させました。もう少し、まともな商売ということでいえば、転職サイトが上げられるでしょう。

LBSの、Career Centralと呼ばれるポータルにも、Job Postingが数多くされていて、リクルーターと、個人とのマッチングを実現させています。

「モノ」ということでいえば、やはり、eBayやYahooに代表されるような、オークションでしょう。このオンライン・オークションは、はじめは、懐疑的な向きもありましたが、すっかりと市民権を得ています。

昔のレアもののグッズなども、この手のオークションサイトを少し検索するだけで、ガサガサとめぼしいモノが見つかると言った感じです。イベントのチケットなども、このオークションサイトのおかげで、一気に流通するようになりました。

そして、「カネ」ということでいえば、Zopaや、Prosperなどの会社はココにも書いたとおりです。

「チエ」も、前にこのブログでも紹介したInnoCentive.Comなどはそのままです。これは、問題を抱える人と、その問題の解決策をもっている人をマッチさせるサービスです。
www.innocentive.com

もっち身近なところでいえば、最近伸びているのが、「体の悩み相談」です。人にはあまり相談したくないし、病院にいくのも面倒という人が、サイト上に体の悩みをポストすれば、医者が応えてくれるというもの。なんとも上手な顧客セグメントを括りだしたサービスです。
http://www.askdoctors.jp/public/showTopPage.do?pageFrom=indexPatient.html&cc=1230502660409633

「サービス」は難しいのか、といえば、そんなことはありません。キャリアコーチ、英会話レッスン、コンサルテーションなどであれば、こんなサービスも始まっています。サービスの個人取引を可能にするプラットフォームです。
http://www.pepoz.jp/

他にも、たとえば、セミナーをやりたい講師と、セミナーを開催したい団体のマッチングサイトとしては、セミナーポータルサイトがあります。
www.seminars.jp/

要は、個人同士を結びつけるビジネスは、今や百花繚乱というところです。アイディア次第では、他にもなんでもありでしょう。

基本的にこの手のビジネスは、需要と供給の偏在化を解消するしているので、きちんとした社会的な価値があるわけで、一時的なブームではないと思います。

需要と供給の偏在化というのは、端的にいってしまえば、ほしいと思っている人と、与えたいと思っている人が出会えない問題です。この問題は、じつに社会的に大きいと私は思っていて、この解消に動くようなビジネスモデルは「強い」と思います。

実際、こんな大げさなハナシをしなくても、たとえば、社内の同じ部署の、席の隣り合わせ同士であったとしても、きちんと情報共有できていなかったために、同じことを繰り返し行っているという状況は、ごまんとあるでしょう。

では、こうした個人間取引の次は何がくるのか?

私は、ほしいと思っていないかもしれないが与えられればすごく役立つ人と、与えれば役に立つがそのことに気づいていない人の、マッチングだと思っています。顕在化しているニーズ同士のマッチングが、マッチング1.0だとすれば、顕在化しているニーズを引きずり出してきてマッチングするのが2.0の世界ということになる気がしています。

冬のロンドンショット



Sommer Set Building.
冬のロンドンの風物詩といったら、スケートリンク。



トラファルガースクウェアももちろん健在。




ナショナルギャラリーとクリスマスツリー。
我が子が噴水でおおはしゃぎ!


Russell Square Garden.
なんともBritishな我が家近くの公園
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2008年12月27日土曜日

Zopa;個人が個人にお金を貸す

Strategyのクラスの第1回目のケースは、振り返ってみれば、Zopaでした。日本にも今年のはじめあたりに、参入するといって、一時期話題になりましたので、ご存じの人も多いと思います。

Zopaは、めずらしくイギリス発のベンチャーで、インターネット上のオークションのような感覚で、個人と個人の間で、お金の貸し借りをする、きわめて画期的なビジネスモデルです。
http://uk.zopa.com/ZopaWeb/

アメリカでは、Zopaよりも、Prosperの方が有名でしょう。いずれの企業も、アジア進出を検討しています。

果たして、これは永続的なビジネスモデルなのでしょうか?

私は「あり」だと思っています。その理由は、バックオフィスなど、物理的なものは何も構わないわけで、コストアドバンテージがあるからです。すなわち、銀行を使うよりは、貸してはより高金利で、借り手はより低金利で貸し借りができるのです。

例:3,000ポンドを3年間借りるローン

借り手の利率
  Zopa 5.2%
HSBC14.9%

貸し手の利率
  Zopa 6.75%
  HSBC4.75%

貸し借りを個人間ベースで、市場レートよりも劇的に有利にできる、新たなプラットフォームが出現したわけです。

結局のところ、コモディティというのは、価格が安いところへ行き着きます。たとえば、パソコンでいえば、DELLが台頭してのは、やはり安かったからですし、Amazonが当初アメリカで急成長し出したのは、ネットの利便性云々の前に、本屋より安かったからです。

ローンも考えてみれば、もう昔からあるコモディティ商品です。したがって、本来的には、「価格」が大事なはずです。

しかし、課題は、その「与信システム」だと思います。借り手の「信用」をやはり審査する必要があるわけで、現状はこの部分は、外部の既存の信用システムに独自の分析を加えて、審査しています。

Zopaによれば、ターゲット顧客は、フリーランサーなど、従来の金融機関ではなかなか貸してくれなかった人とのこと。彼らは、Freeformers*と表現しています。そうであれば、なおさら、従来の与信システムを使っているようでは、そういったターゲット顧客には結局高いリスク・プレミアムをつけざるを得ない。

*Freeformers; Freeformers were devined as self-employed, project-based or freelance workers who were not in standard “full-time” employment

したがって、従来の与信システムでは切り取れなかったような、新たなロジックのもとに、新たな独自の与信システムを構築していく必要があると思います。

さらにいえば、Freeformersなんて、難しいややこしいターゲット顧客を設定しないで、ただ単に、”Cost-conscious”セグメントを対象にすれば、ビジネスモデルはよりシンプルになるはずです。なぜなら、このビジネスモデルの最大の強みは、「低価格」なのですから。

まあ、もうひとつその裏をかくと、既存の銀行から総スカンから食らわないように、「あなたたちとは、セグメントを分けていますよ」と演じているのだとは思いますが。

今後の可能性としては、この個人間プラットフォームを使って、個人のプロジェクトを企業とみたてた、取引市場が出てくるかも知れません。すなわち、たとえば、ある人が本を出版しようとしたときに、その出版資金を、個人から調達してくることも考えられます。もしくは、小さな会社の資金をこうしたプラットフォームからお金をひっぱってくることも考えられます。

Zopaは、個人間取引を後押しするビジネスモデルだと思います。

2008年12月26日金曜日

サンタさんをいるのだ!

12月26日はBoxing Dayといわれ、25日のChristmas Dayと並び、すべてが休業状態です。みんな家族や仲間と大切な時間を過ごします。そんなクリスマスに欠かせないのが、サンタクロース。

サンタさんは子供を喜ばせ、そしてその結果、家族全員をハッピーにしてくれる。そう、サンタクロースは、人生を豊かにしてくれるのです。僕も小さい頃は、サンタさんが夜にプレゼントを届けにきてくれるのが楽しみで仕方がありませんでした。

自分が「ほしい」と思っていたプレゼントが、豪華に包装されて、ベッド脇に置かれているのを発見する喜びといったら!

London Business Schoolでも、サンタさんのイベントがありました。学生一同、サンタさんの格好をして、Londonの街を占拠するというもの。数百人のサンタさんでLondonの街中を後進して、トラファルガー・スクウェアや、Tubeなどをジャックしていくというイベント。やはりサンタさんは、みんなを楽しくしてくれるようです。

そういうわけでして、我が3歳になる息子にも、今年はサンタさんの存在を知ってもらって、少しでも人生を楽しくしてほしいと思うわけです。そこで、まずは、うちの子に何かほしいものを言ってもらわないといけません。

私:えいじくんはさあ、何かほしいものある?

子:えいじくんはねぇ、マールターで、バスをふたつ買ったから、何もいらないの。

私:・・・・

マルタ島では、あれだけバスをほしがっていた物欲の固まりだった息子が、いまさら、なんでこんなに謙虚になっているのか。初っぱなから僕の大事なミッションが頓挫しそう。

最近、公園でみんながサッカーをやっているのをみて(こういうところは、さすがイギリス)、ボール蹴りに興味があるのを思い出し、僕はこう聞く。

私:ねぇー、おおっきいボールが欲しいんじゃない。こう、ポーンっと蹴るやつ。

子:うーん、ほしーーー。

私:じゃあ、サンタさんにお願いしてみよっか。お願いできる?「サンタさん、サッカーボールをお願いします」って、大きな声で言ってみたら?

子:「サンタさん、サッカーボールをおねがいしますー!!」

そして、クリスマス当日。

もっと喜んでくれると期待していたのですが、けっこう冷静だったうちの息子。いつもの感じで、

子:「サッカーボールで遊んでみるぅ。ぱぱぁー、こうえん、いこーーよーー」

うーん、サンタさんが届けにきたことを認識してんだろうか。しかし、ちゃんと分かっていることが判明したのです。

その後、近くのホテルで、サンタの格好をした人が二人いたのみて、こう言ったのです。

子:どっちのサンタさんが、えいじくんにボールをくれたのぉ?

おお!
こうして、僕の大事な今年のミッションは無事に終了することができたのです。

サンタさんの存在をきっかけに、クリスマスは、カップルで過ごすのもいいし、商業的に盛り上がるのもいいけれども、家族で集まって楽しく過ごす大事な時期だということを教えていこうと思います。

2008年12月25日木曜日

知識の調達先:社内 vs. 社外

Strategyのクラスで面白い論点がありました。

それは、Knowledgeは、社内で調達すべきなのか、それとも社外から調達すべきなのか、という問いかけです。クラスでは、少し触れただけでしたが、実は、重要になるトピックだと思います。ちなみに、ここでのKnowledgeというのは、専門知識であったり、社内の問題に対する問題解決であったり、何らかビジネスを遂行する上での知識です。

なぜ、重要なトピックかというと、どちらの方法もあり、だからです。

このクラスで議論されたケースがデンマークの補聴器メーカー、オーティコン。この会社は、社内からの調達を先鋭的なまでに徹底しました。以前のブログでも書いたように、すべての組織体系を取っ払い、あらゆるタスクをプロジェクトベースにしました。

このやり方、すさまじいカオスが想像できます。ここでのポイントは、社内のプロジェクト競争に生き残っていく過程で、社内の良質な知識が生産されていくということです。ダメなプロジェクトチームは衰退するし、成果を出すプロジェクトチームは生き残るという競争原理が「社内」で働く仕組みです。

通常の組織体系であるならば、それぞれの役割分担が決まっていますから、そう簡単には他人の仕事領域に進入することはできません。ある意味で、競争から守られているわけです。市場の競争でいえば、A社はこのマーケットで戦い、B社は違うマーケットで戦い、といったように、価値の提供が明確に規定されているのが、組織図アプローチということになります。

デンマークのオーティコンは、この非効率さ-市場原理から照らし合わせれば非効率です-を解消するために、社内にある種の市場原理をもちこんだというわけです。ぶっとんだ発想をするもんだと思います。

一方で、社外から知識を調達することも最近はいとも簡単にできるようになってきています。もちろん、従来のように、他社と提携したり、エキスパートを雇ったり、またコンサルティング会社を雇うというのも、社外から知識を調達することになります。

クラスでいくつか紹介されたのは、Crowd Sourcingです。いわゆる、Wikipedia的アプローチというのでしょうか、大衆の英知をかき集めれば、じつは専門家をも凌駕する可能性があるという考え方です。

たとえば、InnoCentive.comでは、大企業の抱える問題を、web上にポストし、その解決策を募るというウェブサイト。解決策を提示してくれたら、事前に決められた金額を渡すというもの。このInnoCentiveを利用したら、今まで解決できないと思っていた問題が解決できたよ!などといった、声も以下のサイトでは見ることができます。
http://www.nbcchicago.com/news/local/Thinkers_Putting_Creative_Caps_On_For_Cash_Chicago.html

その他にも、この手のものとしては、TopCoder.comや、Sourceforge.netなどがあり、今は雨後の竹の子状態といえるでしょう。

Crowd sourcingの本としてよく売れた、Wikinomicsという本の冒頭では、金鉱のありかを社内の部署で調査するも不調に終わり、仕方なく、今までの調査データなどを公開し、金鉱のありかを見つけた人には賞金を出す、というように、外部から知識を調達する方式に変えたとたん、あっさり見つかったというエピソードが紹介されています。

場合によっては、社外にナレッジを求めた方が良い場合すらざらにあるのです。

では、何でもかんでも社外に外注して知識を仕入れればいいのか、というとそうでもありません。やはり「役に立つ」知識の多くは、今直面している問題のコンテクストと連携しているものですが、外部から知識を取ってくる場合、今抱えている問題との関連性を自ら考える必要があるからです。だれでも、この情報が欲しいと思って、外部の調査機関や雑誌、記事にあたっても、「これだ」と思うデータがそろわないという経験はあるのではないのでしょうか。

自社が提供している価値に密接に寄り添う形式で、社内で知識を創造、蓄積、展開することも、これまた絶対に必要な活動だと思います。

じつは、この議論、企業のバリューチェーン(製造から販売までのビジネスの流れ)上のどこをアウトソースし、どこを自社で取り組むべきかという議論に酷似しています。というより、全く本質的には同じです。

今の時代、企業のバリューチェーン上のありとあらゆる要素がアウトソース、オフショア化できます。これは逆に、企業に自社では何をやるのか?という問題を突きつけました。すなわち、企業のコア・コンピタンス(その企業のもつ競争優位たらしめている要因)はどこにあるのか、という命題を突きつけました。

ナレッジという観点でも、これが必要です。すなわち、どのような知識ならば内製するのか、どのような知識ならば外製するのか。この線べきを明確にもつ必要があるのだと思います。

Merry Christmas! ~ローストターキーに挑戦~

今日はクリスマス・イブ。

クリスマスが差し迫ると、街中はなんだかせわしなく、とても混んでいます。そして、いたるところに大小のクリスマスツリーを見かけることができて、ロンドンの街をクリスマスらしく彩っています。

そして、クリスマスツリーとあわせて、さまざまなライトアップがなされています。ここのライトアップは、どちらかというと、単色系のとても落ち着いたライトアップです。おそらく、こちらの人が日本の、クリスマス・イルミネーションをみたら、「うわ、派手~、やっぱりアジアだ」ときっと思うことでしょう。

あくまでも、ロンドンのイルミネーションは、飾りであり、それ自体が主役ではないのです。

せっかくロンドンにいるのだし、クリスマスらしいことをしようと、今日はロースト・ターキーに挑戦!

さっそく、近くのスーパーのwaitroseで七面鳥を調達してきます。やはり、ヨーロッパ。どこにいっても七面鳥は手に入ります。スーパーにごろごろと、丸ごとの七面鳥が並んでいるのはある意味で、滑稽な光景です。

それにしても、どのターキーもでかい!すでに売り切れてしまったのだろうか。一番小さそうなおよそ7キログラム弱のターキーをみつけた。「これにしよっか」

しかし、このターキー、表示をよくみると、11人~15人用と書いてあるではないか。我が家族は、妻と3歳の子供と私のほぼ2.5人。いかんせん、このターキーだと大きすぎるでしょう、と一瞬躊躇するも、せっかくの機会なので、強引にそのまま買うことにした。そのターキーを持ち上げる。

重い。

ちなみに、お値段の方は、30ポンドだったので、およそ4000円ちょっとという感じでしょうか。かつ、消費税対象外の商品だそうだ。日常品には消費税がかからないのが、EU流。このあたりの概念は、全商品一律に消費税アップを議論している日本とは根本的な思想が異なるのです。

それにしても、ターキーって、日常品なんだ。

スーパーからの帰りは、私が息子をだっこし、妻がターキーをもつものの、帰りにターキーの袋がやぶれるというハプニングが発生。いやー、なんだか慣れません。

さぁ、つくるぞ。

レシピを読む。オーブン170度で、40分/Kgやく。えっ、1kgあたり、40分?ということは、7kg×40分=280分=4時間40分。なんと、5時間弱も焼くんだ!!これは、うちの子は今日は食べられんな。まあ、明日の朝ご飯に食べさせよう。

七面鳥を水でよく洗い、タオルで水気をとる。
七面鳥の中に詰めるスタッフィングをつくって、詰める。
塩、こしょうをよく揉み込み、溶かしバターとオリーブオイルをべたべたと塗る。
そして、オーブンで焼く。
30分おきに、肉汁と溶かしバターとオリーブオイルを塗る。

意外と作り方はシンプル。でも、30分おきに、オーブンから取り出して、肉汁と溶かしバターとオリーブオイルを塗る作業を繰り返していると、あたかも我が子の成長をみるように、だんだんと七面鳥に愛着がわいてくるのです。

そして、30分おきにオーブンから取り出す度に、どんどんときつね色に成っていく様をみるにつけ、手塩を掛ける甲斐があるなあと思うのです。

そして、ついに完成!歓声!

しみ出した肉汁に塩こしょうをし、片栗粉でとろみをつけて、グレービーソースをつくる。

一口目。うまい!肉が非常にやわらかい!慣れないことを試行錯誤しながらやったので、いっそうおいしく感じたのかもしれない。

それと、日本でターキーを買うと冷凍品になってしまうのだが、こちらで買うと冷蔵品なので、その点もいいのかもしれない。

ターキーはまだまだ残っています。年末に向けて、ターキーづくしが待っていそうです。まずは、明日の朝、子供にたくさん食べてもらおう。

さあ、そろそろ、子供のベッドにクリスマス・プレゼントをそっと置きに行こうかな。これも、とても大事な仕事だ。

2008年12月23日火曜日

測定行為そのものが測定値に影響を与える功罪

ロンドンは、すっかりクリスマスづいてきました。クリスマス時期は、電車のかずも相当減り、しかも店もバタバタと閉まるので、注意しなければなりません。

忘れないうちに、1学期中で面白かったトピックを冬休み中にアップしておきたいと思っています。今日はAccountingです。

物理の不確定性原理で、ある粒子の位置を正確に測定しようとすればするほど、その測定行為そのものが、その粒子の位置を動かしてしまうという主張があります。

ビジネスも全く同様で、会計の制度そのもの、すなわち、会社の利益をどのように測定するのか、その方針そのものが、利益を動かしてしまうのです。

1学期のFinancial AccountingのIntercorporate Investmentsのクラスのときでした。普段は、比較的淡々とすすんでいたこのクラスでしたが、Fair Value-時価会計のクラスディスカッションのときは印象的でした。

今、会計の世界でホットなトピックは、「時価会計は今まさに起こっている金融危機を増幅させたのか?」というもの。

今はなきBear Stearns出身のあるクラスメイトは、「この全くおかしい会計制度のおかげで、実現してもいない損失を、毎期ごとに損益計算書に計上しなきゃいけなくて、今の金融危機の一役を担った」と語気を強めて言っていたのが印象的。

というのも、短期売買目的で保有している証券については、四半期ごとに、時価にあわせて評価しなければいけなく、かりに、ロスをだしていたとしたら、そのロス分をPLに計上しなければなりません。(逆に、ゲイン(利益)を出していたら、PLに利益を計上します。


この金融危機は、株式市場6000兆円の富をわずか半年足らずで半額3000兆円になりました。多くの金融機関は、この煽りをまさに受けまくって、莫大なロスをPLに計上しなければいけず、その結果株価の暴落を招いたというのが、上記の主張です。

助教授が言うには、本当にその考え方は正しいのか?というもの。

というのも、まず、短期売買目的の時価会計導入は、オプションとして選べたというもの。時価会計基準を導入しないという選択もできたとのことなのです。しかし、当時は株価は上昇基調、だれもがその上昇分の利益をPLに反映させたくて、”Everyone jumped to the fair price option”だとか。

それが一転、株価が急激に降下したとなれば、まさに悪夢の始まり、今の金融機関というわけです。

さらに、面白いことに、長期投資目的で株を保有していたのなら、じつは、ロス(もしくはゲイン)を出していたとしても、PL(損益計算書)にはその変化を反映させなくてもよいのです。「長期投資の目的」だからです。

多くの金融機関は、PLに株価上昇の利益を乗せたいが故に、短期売買目的として、分類したそうなのですが、ところがどっこい、最近はこんなニュースが登場しているとクラスで紹介されました。

Deutsche Bank has recorded a profit instead of a loss in its most recent results by using new accounting provisions designed to mitigate the impact of the financial crisis on European banks. Germany’s largest bank is the first big European institution to use the opportunity to avoid having to account for some of its assets at their severely impaired market value.

すなわち、今まで短期保有目的にしていた証券を長期保有にするから、もう損益計算書にロスを出さなくて済むので、もうロスを出さなくていい、というニュースです。やや節操がないポリシー転換という印象はぬぐえません。

CFOが言うには、

Changes to auditing methods allowed “a more proper treatment” of the bank’s assets. “Accounting is catching up with our true business intent,”

だそうで、これで、よりビジネスの実態に会計が近づいてきたという主張ですが、何ともしらけてしまいます。

やはり、会計の制度そのものが、会社の意志決定プロセスをときんは、良くない方向へと、動かし、結果として、利益を動かしてしまうのです。

多くの金融機関が、時価会計を利用して、実態以上に、利益を多くみせかけ、そして、その反動で、多くの金融機関がより痛んでしまっているとしたならば、やはりこれを次の世代へ教訓として残しておかなければいけないと思います。

そもそも、ビジネスの実態とは何なのか。それは、企業それぞれが、ある種の信念のものとにもってなければいけないのでしょう。その実態がまず先にありきでなければいけなく、その次に、それをどう会計的に表現すべきなのかを議論すべきだと思います。ここで難しいのは、企業の実態そのものは、企業が「自律的に」認識する必要があるということです。そうでないかぎり、会計制度側から、実態を作り上げる発想に靡いてしまう可能性を否定できません。

エース社員ほど失脚する

エース社員ほど失脚してしまう。このテーマは、いくつもの視点でビジネス・スクールの教授陣によって研究されてきたようです。

Global Leadership Assessment for Managersのクラスで教授がさりげなく触れた次の詞は、じつにマネージャーが成長するに伴ってぶつかるその「壁」を象徴的に表していると思います。

Help! THE BEATLES

Help! I need somebody
Help! Not just anybody
Help! You know I need someone
Help!

When I was younger so much younger than today
I never needed anybody's help in any way
But now these days are gone
I'm not so self assured
Now I find I've changed my mind
I've opened up the doors

(Lennon-McCartney), © 1965 Northern Songs Ltd.

じつに示唆深い詩ではありませんか。

アナリスト時代であれば、一人で仕事をやりきることができるし、駆け出しのマネージャーであったとしても、問題が起きれば、自分がその問題に自ら手を下して、部下の失敗をリカバーすることができるものの、さらにマネージャー・リーダーとして成長するには、じつは「周り」からの「助け」を上手にマネジメントする必要があり、今までとは全く違うスキル・能力が求められ、そこに成長の「苦しみ」があるというわけです。

エース社員ほど失脚してしまう。

そもそも、なぜ、このようなジレンマが発生してしまうのか?これに関しては、いくつかのファインディングスがすでにありますので、少し書いておきたいと思います。

そのひとつの理由は、昇進は、「過去の」パフォーマンスによりドライブされるから、というもの。たとえば、優秀なアナリスト社員が、ハイパフォームしていたのなら、それを当然、きちんと評価し報いなければなりません。その報い方が昇進なわけです。この場合、昇進後のスキルセットが十分かどうか、その検証が不十分なまま、昇進が決定される「傾向」があるというわけです。そして、もし、昇進させなければ、そのエース社員は会社を去ってしまうかも知れないリスクがあり、会社としても、昇進を決定します。

しかし、アナリスト、マネージャー、リーダーへと、成長そして昇進するにしたがって、求められるスキルは、予想以上に劇的に変ってきます。冒頭に書いたように、他人から助けを借りなければならない、さらには、自分より専門性をもっている人をマネジメントしなければならない、といったように、上へいけばいくほど、違った能力が求められるわけです。じつは、昇進は、未来志向なのに対して、人事評価は過去に依存するモノ。ここにギャップが発生してしまう。

悪いことに、エース若手社員であれば、あるほど、自分で問題を解決できてしまうので、周りの力を上手に借りる術を知らないままにマネージャーになってしまい、いつまでも手取り足取りと指示をするといった、マイクロマネジメントを続けてしまうケースも多いということになります。

この典型例を、”Wolfgang Keller at Konigsbrau-Hellas”でもクラス内で議論をしました。Harvard Business Schoolを卒業したエリートKellerは、とんとん拍子に昇進するものの、本社役員になるところで、壁にぶつかってしまうと言うケース。本社役員クラス一歩手前くらいのクラスになると、そもそも個別問題に自らが首を突っ込んで解決すべきではないのに、どうしてもその「クセ」から抜け出せず、その課題に本人はまだ気づいていないのが舞台設定。

Kellerの後日談では、自らのマネジメントスタイルを見直し、変えていく努力をすることで、めでたくさらに上に上り詰めることができたというハッピーストーリーなのですが、そうでなければ、そうしたマネージャーは転職の道を選ぶわけです。

しかし、実際は、転職したとしても、そもそもの問題自体は解消されるわけではないですから、転職したからといってうまくいくはずがありません。さらには、転職先のリソースを十分に使えないですから、輪を掛けて、パフォームできないという悲惨な結末に陥るのです。リソースというのは、その社員が優秀という「評判」や、社内の人脈も含めての話しです。その社員が優秀というある種のレッテルは、じつは社内の仕事を円滑化するのに相当一役買っていると思います。

転職の繰り返しは、キャリアを傷つけることになり、これが、エース社員が失脚する顛末なのです。

若手が早い昇進を望む傾向は、世界的にもひとつの潮流であり、この流れをとめることはできません。とくに中国の血気の盛んな優秀な若手は、すぐに役員にしろ、といった要求は相応にあるようです。そして、日本においても、徐々にそうなっていくでしょう。私のいるコンサルティング業界しかりで、業界のトレンドとして、若手の優秀なスタッフは、早期に昇進させる方向に舵を切ってきています。

であるならば、それへの対応策がますます重要になってきます。企業側、さらには、個人もこの問題を常に意識しておく必要があると思います。具体的な対応策としては、私は、「教育」「メンタリング」「新たな成長モデル」の3つがあるのではないかと思います。

どんどん昇進が早くなっているとすると、経験量が不足するわけで、それらを補う形で、「教育」が今後、重要な役割をますます担ってくると思います。それは、分析といった、スキルセットの習得というのではなく、成長の「壁」に対処するための心構えだったり、アナリストからマネージャー、マネージャーからリーダーへ成長していく際の落とし穴を学んだりといったよりソフトスキルの習得に重きをおいた教育です。

もうひとつは、よきメンターもしくは、コーチを見つけることなのでしょう。これは、企業が仕組みを入れることも大事かもしれませんが、個々人が常にメンターをもつようにするというマインドセットが大事なのかも知れません。私も、今までメンターに色々と話しをしたりして、とても有意義でしたので、今後もこのメンターは大事にしたいと思います。

そして、最後は、新しい成長モデルの導入です。企業が採用している、成長モデルの多くは、階段モデルです。すなわち、アナリスト自体は、こういうスキルが必要で、さらに次のレベルにいったら、これこれのスキルを習得するというように、スキルを積み重ねていく方式が一般的です。そうすると、過去のパフォーマンス評価に基づいて昇進させると、次でコケるリスクが出てくる。

そこで、成長の考え方を、階段方式から相似形モデルへ切り替えなければいけないのではないか、というのが私の仮説です。すなわち、あるべきリーダー像なりマネージャー像を定義したのなら、その小さい版を、アナリストのあるべきスキルセットとして定義するやり方です。四角形の一辺ずつをマスターするのではなく、小さな四角形を少しずつ大きくしていきます。

コンサルティング業界でいえば、新米のコンサルタントであっても、アナリストであっても、まずは小さな課題領域について、データ収集、仮説検証、資料作成、クライアントとのミーティング設定、プレゼン、アフターフォローをすべてやってもらうという考え方です。なるべくすべてのプロセスをやってもらうように、上が意識して育てなければいけないのだと思います。アナリストであっても、提案書の作成や、次のプロジェクトを取ってくる仕事にも関わってもらう。

一方で、上の立場として、楽な仕事の任せ方は、新米コンサルタントには、情報収集だけやってもらうというやり方で、まずは、情報収集スキルという一辺を身につけてもらおうということなのかもしれませんが、個人的にはよくないと思っています。

よく「自分より1階層上、数階層上の立場を想定して仕事をやれ」と言われますが、これはまさに、より大きな「四角形」を見据えた上で仕事をすることになりますから、エース社員の失脚防止のために、個人としてできる重要なマインドセットだと思います。

エース社員ほど失脚してしまう。これは古くて新しいテーマですが、若手の昇進スピードが速まっている世の中の潮流を考えると、ますます大事なissueになると思います。私も個人として常に意識する必要があるし、会社としてもこの問題に今まで以上に注意を払う必要があると思います。

2008年12月21日日曜日

「あなたならどうするか」的ケースは教育効果が高い

MBAで扱うケースは、何らかの企業を想定した上で、その企業の成り立ち、ビジネスモデルからはじまり、産業動向や顧客動向などの客観的な事実が語られています。通常は、そこで何らかの問題が浮き彫りにされており、今後どうすべきかを議論するように仕掛けてあります。

ここで、ケースには大きく分けて、一人称のケースと、非一人称のケースに大別されてくると思います。非一人称のケースは、どちらかというと、その企業がどうすべきかを論じるようにしくんであるケース。一人称のケースとは、ある企業の、ある部署の、ある特定のだれかを主人公に見立てて、その人がまさに次に何をすべきかを論じるように敷くんであるケースのことです。

この一人称のケースの方が、もし活発に議論する素地のあるメンバーと学ぶなら、分析スキルと人間系のスキルの双方が同時に要求され、きわめて深みのある議論になり、結果として、学びが大きいと思います。

Strategyの最後のクラスで行われた、Sabena Belgian World Airlines: Weytjens’ First Assignmetは、一人称のケースでした。

INSEAD MBAを取得した後、Sabena Belgian World Airlinesのある部門のリーダーについた主人公Weytjenの直面したリアルな課題を議論していきます。MBA卒の新リーダーがどのように現場から信頼をとるのか、どういう立ち振る舞いをすべきなのか、などにも思いをはせる必要があり、結構楽しいのです。

まずは、部門の小さな問題解決からはじまり、部門全体のパフォーマンスの向上、さらには労使問題との直面、部門縮小(リストラ)圧力との向き合いなど、3時間の間で、5つくらいの具体的な問題を取り上げて議論をしていきます。

面白いのは、それぞれの問題の議論をしたのちに、ビデオ動画を見て、その当の主人公が自分はどういう行動をしたのか、何を思ったのか、何を感じたのかなどを赤裸々に語っていくのです。最後は、主人公の上司が、有無を言わさず、主人公の強い意向とは反対に、リストラを断行してしまい、そのときは「無力感でいっぱいだった」と語っていました。

一人称のケースだと、分析スキルや数値分析といった、ハードスキルに加えて、人間とどう向き合っていくかというソフトスキルも試されてくる分、状況が複雑になり、より高度な知的思考が試されることになります。これが私が面白いと感じる理由です。

結局、実際のマネジメントの現場では、「私」がどうすべきか、「私」ならばどう行動すべきか、にかかってきています。それは、企業、もしくは部署の方向を分析に基づいて、導き出すだけでは当然なく、その方向性を実現する上で、まずだれにどのような内容を話し、その次にどのようなミーティングを開催し、だれを招集し、落としどころをどこにするか、はたまた抵抗勢力を事前にどのように押さえ込んでおくか、などといったきわめて生々しい、でも、きわめて、リアルな管理職な動きをシミュレーションすることができる、という意味で、一人称のケースは効果的です。

日本でも、ケース、ケースとよく聞きますし、ケースブックも結構多く出回ってきていると思います。多くは、非一人称のケースなのではないでしょうか。もちろん、非一人称のケースは、分析スキルを習得する上では、非常に有効なやり方だと思いますが、人間系のスキルを学ぶ上では、一人称のケースが最適です。

しかし、ケースライティングのスキルや、ファシリテーション、クラスの準備、それから場合によっては動画の準備など、相応に問われることにもなりそうです。たとえば、ケースライティングでは、感情移入できるような状況設定描写能力が問われるわけで、ある種の作家的能力が問われるかも知れません。私が好きな本で、三枝匡氏の「戦略プロフェッショナル」は、ある小さな企業経営者視点で書かれた生々しいストーリーですが、日本では、一人称型のケースの走りといえるかも知れません。

知識経営のを生みだし、『知識創造企業』の著者である、野中郁次郎氏の講演を以前に聴いたとき、センスのある名研究者を育てるには、優秀な先輩研究者の書いた論文を読むのではなく、その研究者がいったいどのような試行錯誤を経て、その結論に至ったのか、その思考プロセスを丹念に追っかける以外にないと言い切っていました。

一人称のケースは、マネージャー、経営者の逡巡、迷い、間違い、そして意志決定といった、まさに思考プロセスをなぞるのに打ってつけだと思います。そして、それらがこのケースを通じて垣間見ることができるからこそ、面白いのだと思います。一人称のケースは、ハードスキルとソフトスキルを一体化して、学ぶのに有効な一つの方法論だと思います。

シンプリシティの法則

The Laws of SIMPLICITY
DESIGN, TECHNOLOGY, BUSINESS, LIFE
John Maeda

一冊の本。
MIT Media Arts and Sciencesの教授による著作で、ちょっと話題になった本です。シンプリシティをどう実現すべきかについて10の法則について、語っています。その10の法則とは:

Law 1: Reduce – The simplest way to achieve simplicity is through thoughtful reduction.
Law 2: Organize – Organization makes a system of many appear fewer.
Law 3: Time – Savings in time feel like simplicity.
Law 4: Learn – Knowledge makes everything simpler.
Law 5: Differences – Simplicity and complexity need each other.
Law 6: Context – What lies in the periphery of simplicity is definitely not peripheral.
Law 7: Emotion – More emotions are better than less.
Law 8: Trust – In simplicity we trust.
Law 9: Failure – Some things can never be made simple.
Law 10: The one – Simplicity is about subtracting the obvious, and adding the meaningful.

そのエッセンスは、Complexityが増している世の中だからこそ、SimplicityがDesign Technologyの世界だけでなく、BusinessやLifeにも今にもまして、求められてきている、ということだと思います。すなわち、Complexityの高い世界の中での、Simplicityの有効性です。これについては、全く同意。

Simplicityはビジネスにも必要との主張ですが、全くそのとおりで、私がいたコンサルティングの世界においても、いつもSimplicityを追求していたように思います。

手をつけなければいけない様々な問題点、こうしたらいいのではないかというアクションのアイディア群、ステークホルダーのさまざまな声、膨大なマーケットデータなどなど・・・。その中から、どしっとした、なおかつ刺さる物語を紡いでいくような仕事であったともいえます。

じつは、私はクライアント報告用のスライドを書くときには、99%手書きで書いていました。えんぴつと消しゴムをもって、白紙のA4用紙に向かうわけで、気分はさながら作家のようでした。その理由のひとつは、スライドが複雑に成りすぎないということです。手で書くと、細かいことは書けず、骨太な分かりやすいスライドになりやすいのです。

Simplicityのビジネスの効用とは、要は「売れる」ということ。この本の中では、iPodやgoogleの検索画面などが事例として紹介されてありました。

iPodではないですが、最近、このシンプリシティの威力を垣間見たのがiPhoneです。このiPhoneですが、じつは、うちの3歳の息子も、操作できるという優れものなのです。シンプルなボタンと、直感的な操作が功を奏して、うちの子も、ボタンを押しては、写真をみて喜んでいます。

そして、このiPhoneですが、我がLBS学生の間のシェアは、気づいてみたらものすごい高い。確実に学生の30%はiPhoneをもっていると思います。私のstudy groupに関して言えば、6人中4人がiPhoneを使っているという状況です。われわれのような顧客セグメントにバチっとはまってしまっているのです。

もしかしたら、MBAの学生などは、ある種ものすごい情報の洪水におかれるわけで、そして、職を失った2年間を過ごすわけで、通常よりもComplexityが高まっている状況下であるからこそ、シンプルに作りになっているiPhoneが受けているのかも知れません。

ちなみに、AppleのMacユーザーのシェアも、MBAの学生の間では高く、その比率は年々高まっています。将来の企業幹部候補が、今はものすごい勢いで、Appleシフトを水面下で続けているこの現象は、今後ボディブローのようにMicrosoft陣営のPCメーカーに影響を与えることは必至です。これが、Simplicityの私が間近で見る威力です。

話しはもどり、この本の最大の学びは、世の中ある方向に極端に触れると、必ずその反動がくるのが世の常ということ。Complexityに触れれば、Simplcityが出てくるわけです。

上述の反動ということでいえば、今は、金融危機により、極端な状況に世の中がふれていますから、何らか逆の反動が、これまた世界規模で、必ずあるはずで、そこには莫大なビジネスチャンスがあります。

2008年12月20日土曜日

Inside Malta

マルタ島は、地中海に位置するマルタ共和国の中心的な島です。北にはシチリア島があり、南にいくとすぐアフリカ大陸、リビア、チュニジアにぶつかります。マルタ共和国の人口は40万人で、その国面積は淡路島より少なくおよそ300キロ平米と、超小国です。同じくくらいの人口のある国としては、超小さいですが、立派に「国」として運営しているのですから大したものだと思います。

では何でこの国は生きているのか?このクラスの小国だと、最近何かと金融危機で騒ぎとなっているアイスランドが30万人、ルクセンブルグが40万人です。これらの国は、やはり金融が一大産業になっていて、そのおかげで、一人当りGDPもトップクラスで日本より大きいわけですが、それに対して、マルタ共和国はというと、一に観光、二に観光、三に観光で、そして農業が少しという感じです。一人当りGDPは、およそ1万5,000ドルとほぼ日本の半分くらいでした、そんなに大きくはないですが、途上国よりは大きいという、まあまあのサイズです。

今回、4,5日という短い滞在でしたが、その間、現地に人や、現地の新聞などを読んで、感じるのは、マルタ人は、マルチーズとしての独立心は、人一倍大きいということです。一方で、EUの一員にならなければ、小国として生きていけないのもどこかで分かっていて、今回の旅行では、その狭間で揺れる複雑な心境を垣間見たような気がするのです。

マルタは歴史的にみれば、他の被支配国と同様、多くの国家の支配下に置かれました。古くは、スペインやオスマン帝国、また、フランスの支配下にいたこともありました。そして、もっとも大きな影響を与えたのは、第二次世界大戦、およびその後を支配していたイギリスでしょう。今ではすでに、イギリスからも独立を果たし、共和国として独立していますが、イギリス連邦の一員になっています。

しかし、とくに年配の人の、これらの支配国に対する感情のアレルギーは今でも深く根ざしているようです。我々をナビゲートしてくれた、50歳半ばの男性ガイドも、このあたりのイギリスとの関係の話しになると語気が強まります。今でもたまにイギリス人がマルタに訪れてくると、マルタ人を「猿」呼ばわりすることがあったり、または、イギリス人がマルタ人のサービスに不満があったりすると、「指を切るぞ」と言ったりすることがあるそうなのです。その度に、ムカツク思いをすることを、チラリと会話の端々にのぞかせます。この手の話しになると、楽しげなガイドも、妻と私は顔を見合わせ、ちょっとだけ空気が凍りつくのです。

また、フランス人は、プライドが高いとも言っており、フランス人とは、心理的に距離感をおいているように感じられました。じつは、マルタの公用語は、フレンチ、ドイツ、イタリア、アラビア語がミックスされたマルタ語、および英語であることから、じつは、かなりの多くの言語を理解できますし、話せるそうです。このガイドもそうで、マルチ言語を操れるのです。ガイドをするときも、必要に応じて、何カ国語で複数話すらしいのですが、フランス人は、英語を理解できるのにも関わらず、英語は分からないと知らないふりをし、フランス語のガイドも求めてくるので、「なんとプライドが高いのかと、同じことを2回もしゃべらせるな」、そんな風に話すのです。

やはり、マルタ人は、どこかで、大陸の国々とは、距離感をもちたいと思っているようです。

しかし、一方で、マルタ共和国は、2005年にEU加盟を果たし、今年2008年にはユーロに加盟し、大陸の国々との距離感を、政治的、経済的には急速に近づけています。今の与党である国民党が、自由主義経済、近EU主義によるものだからです。

このような方針を掲げる政党が与党であり得るのも、そうなのです、国民は、経済的には、EUと一体化した方がいいと、どこかやはり思っているのです。脱EUを標榜している野党である労働党は、政権をとれていないわけです。そして、国民党が与党でいられているのも、実は僅差の勝利です。ここにも、マルタ人の微妙な心理がみてとれると思います。 実際、こうした動き-近EU政策-に対して、マルタは昔のような被支配国に成り下がると、やや極端に懸念して悲観している人々もいるようです。

そして、今年の1月にEU単一通貨、Euroを導入しました。いたるところで、まだ現地通貨Lmと、ユーロが併記されている状況です。このユーロ導入には一悶着がありました。国民選挙した際、開票結果は、ユーロ導入否決であったが、数日後、「やはり間違いだった、ユーロ導入の方が過半数を越えていました」と政府からアナウンスがあり、国民は、みんな「なんだよそれ」としらけてしまい、笑うしかなかったとのこと。いずれにしても、きわめて微妙などちらに転がってもおかしくない結果だったのです。

ユーロ導入後は、やはり、物価があがったようです。ガイドの話しによると、お金持ちはいいが、大工のような職業の人には生活に相当にインパクトを与えていて、本当にユーロ導入はよかったのかねぇ、などと話しをしていました。

しかし、今の金融危機に鑑みると、EUそして、さらにユーロという安全網にマルタが入っていたのは、大正解だったと思います。小国の通貨は、このような荒波の中では、アイスランドの事例のように、操縦不可能になる可能性がきわめて高いからです。そして、今のマルタの経済は、他のEUの国々比べても、そこそこ安定しています。足下の経済成長率は、EU平均に比べてややいいとの新聞報道が載っていました。もし、ユーロを導入していなかったら、こう安定していたかどうかは分かりません。

マルタ人は、過去の歴史的な経緯から文化的には独立心はツヨイが、経済的な側面を考えるとEUと一体化しなければいけないと思っている。そんなマルタ人の横顔が見えたマルタ旅行でした。

2008年12月17日水曜日

Gozo島へゆく

暗いうちから朝早く起きる。泣き叫ぶ息子をたたき起こす。
朝一番のフェリーに乗り込む。
今日はマルタ島の北西に位置するゴゾ島へ!

長さ14km、幅7Kmの小さな島をジープで巡る。
ガイドは陽気なマルト人のおじさん。
英語、ドイツ語、フランス語、
僕らは、後部座席に座り、風と戯れる。
悪路で大きく車体が揺れる。
風がピリりと冷たいが、朝には心地良い。
海。美しい海岸に息をのむ。

ランチはこじんまりしたレストランで。

熱々の田舎風野菜スープと

ハーブが利いたチキンと温野菜。

家庭的な料理を満喫。

オフシーズンなので、いるのはほぼ我々だけ。

ゴゾ島の大事な産業は、農業。

起伏の豊かな島だから、

だんだん畑がどこまでも見渡せる。

ちょっとしたビーチとホテルがひっそりと佇む。

夏場は、大盛況なのだろう。

オフシーズンのゴゾは、穏やかな暖かい島。

人も穏やか。気候も穏やか。

ゆっくりとした時間がゴゾには流れているようだ。

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2008年12月16日火曜日

マルタ島へゆく


マルタ島は、イタリア、シチリア島の少し下に浮かぶ。
気候は地中海性 。
ロンドンから飛んでくると、とても暖かく心地よい。
ホテルから見える青い海が美しい。


「青の洞窟」のそばのレストランにて。
レモンとバルサミコ酢でさっぱりと魚をいただく。
やはり、魚料理は日本人の体質に合うのか、なんだかほっとする一品。


古代遺跡であるTemplesをみにゆく。
海に通じるかのような一本道を気持ちよく歩いていく。
風も心地よく、最高である。

ローカルなバスは、激しく揺れながらもなんだか風情がある。
青い海と海岸をバックに、颯爽とバスは走っていく。
旅はまだまだ続く。
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経営はAccounting的

昨日のFinancial Accountingの試験をもって、1学期終了です。その前日は、朝から晩まで、ひたすらAccountingを勉強していて、学生の頃の「詰め込む」感覚を思い出します。頭に詰め込んだ知識を、「こぼれないように、こぼれないように」しながら朝学校に向かう感覚。なんだか懐かしい気もします。

Accountingは、Corporate Financeのように、いくつかの少数の数学的な法則に還元されていくような学問ではありません。少数の法則はあるものの、それらは、数式というよりは、言語された原理原則です。たとえば、「売上は、売り上げられ、かつその額が測定可能なときをもって、認識する」などといったRevenue Recognitionに関する原則があります。

しかし、実際の適用の段階には、数式を展開するというよりは、その原理原則から一歩、突っ込んで、実際のいくつかの適用のパターンも、きわめて大事な知識として、覚えておかないとできないわけです。たとえば、雑誌購読のように、1年一括で前払いする際にはこのように会計処理するとか、ワインの醸造のように、製造に10年架かる場合のコストの計上の仕方などは、パターンとして知っておかないといけないと、実際の問題は解けません。

したがって、原理原則から、一歩深く、より具体的な適用の方法論、考え方までを、ひとつひとつ個別に、覚えないとといけないので、Corporate Financeより試験対策に時間がかかるわけです。Corporate Financeの試験は、いくつかの学問的な数学的な法則をマスターして、それらを自在に操れるように、練習しておけばOKなのに対して、とても対照的に思えます。

私は、理系育ちで、物理や化学、大学院のときには、統計の美しい理論体系に惹かれたたちですので、Corporate Finance的な学問の方が昔だったら好きだと思います。

しかし、ビジネスでは、このAccounting的なアプローチがきわめて有効だと思います。すなわち、大きな原理原則と、実際の事例の、ちょうど間にある、「具体的な方法論、適用の方法」を積み上げていくアプローチです。というか、こちらのアプローチでないと、対応できないはずです。

私が、以前の大学院で所属していた研究室は、統計解析をひとつの専門としていましたが、もう一つ力を入れていたのは、「言語された知識の再利用化」でした。私はTotal Quality Management(TQM)の研究室にいたので、その研究室として扱っていたのが、製品設計や製造工程設計、工程管理周りのテーマで、扱う知識としては、それらの失敗を未然に防ぐノウハウでした。担当の飯塚教授がよくおっしゃっていたのが、すべての技術的な失敗は、結局「F=MA違反に起因するんだけど、それでは全く意味がないんだ」というもの。F=MAというのは、物理の基本法則のひとつ。

この意味するところは、今でも、本当に大事なことだと思っています。F=MAは、広範な物理的な運動を予測はするけれども、じつはそれでは現実には役に立たないというもの。技術者は、みんなF=MAくらいは知っているし、当然それ以上の技術レベルを持ちあわせている。しかし、失敗は起きてしまう。なぜか?F=MAをより一歩、その当該領域に適用させたときの「コトバで語られる適用のノウハウ」が不足しているからだ、というのが「F=MA違反に起因するんだけど、それでは全く意味がないんだ」のココロです。

実際問題、品質管理上の不具合では、同じ原理にもとづく失敗は繰り返し起きています。なぜかといえば、その失敗固有の知識が上手に共有されていなくて、技術者がその知識を使えていないことでした。もちろん、その知識のさらに上流にある、F=MAのような法則、みな知っているわけですが、適用する段階での留意点―これはおもにコトバで語られるモですが―がすっぽり抜けてしまうわけです。

マネジメントやビジネスでも全く同じことがいえると思います。

実際の経営の現場で使われるのは、コトバで語られます。経営会議や、ひごろのビジネス遂行する上でもコトバがとても大事です。また、ビジネスの現場で、マイケルポーターの諸原理が、「直接」役に立つこともありません。数式されることのない、かつ、原理原則からもう一歩具体化したところでのナレッジをどのように蓄積し、活用できるかどうかが、最大のキーポイントになります。じつは、このあたりは、常に経営では比較的属人的に行われてきたように思います。一方で、ナレッジマネジメントははやりましたが、ITツールとしての位置づけで終わってしまいました。アカデミアは、どちらかというと、原理原則を希求したがります。

このあたり、もう少し科学的な方法論こそが、今求められてくるのではないかと思っています。すなわち、大きな原理原則と、実際の事例の、ちょうど間にある、「具体的な方法論、適用の方法、ノウハウ、留意点」のマネジメント方法です。

2008年12月13日土曜日

転職エージェントとしてのBusiness School

ビジネススクールは、教育機関でありながら、じつはでっかい転職エージェントなのです。

多くの学生がキャリアチェンジのために学校にくると同時に、多くの企業、金融機関、コンサルティング会社が優秀な学生を採用していくわけで、ビジネススクールは、まさにAgentとして、機能しており、その価値がじつは大きいことに最近気づきつつあります。このあたりの位置づけは、日本のビジネススクールとかなり違うと思います。

今回は、私が今見えている範囲で、この転職エージェントとしての機能を簡単に書いておきたいと思います。

London Business Schoolにも、教育サービスを提供するFacultyとは別に、Career Servicesという組織があり、ここが主にキャリア支援サービスを提供することになります。キャリア志向のアセスメントからはじまり、どうやったらいいレジュメを書けるのか、どうやったらいいカバーレターをかけるのか、どうやったら効果的にインタビューに答えられか、などなど様々なワークショップが提供されます。ビジネススキルに加えて、ある意味で、「就職力」を鍛えることにもなっているのではないでしょうか。

また、LBSの学生の履歴書(CV)は、企業のリクルーターに公開されていて、リクルーターは自由に検索をかけることができます。そして、学生にコンタクトをとることも可能のようです。そして、LBSのポータルのCareer Centralの中には、Job Postingといって、さまざまな企業の求人情報がざーっとリストアップされており、興味のある学生はそれを見ながら、パートタイムや、フルタイムの仕事を見つけにいくことができるようになっています。

そして、そのCareer Centralからは、自由にキャリアコーチと面談を申し込むことができます。履歴書をレビューしてもらったり、インタビューの練習をしたり、使いたいように使えばいいのです。私の場合は、新しい仕事を探す必要がないので、あるキャリアコーチとひょんなことから仲良くなって、毎週1回くらい別枠で時間をとってもらって、英語力向上のために、ライティングレビューなどをしてもらっています。た

そういうわけでして、さながら転職エージェントになっているわけです。正直、「ここまでやるんだ」というのが正直な感想。そして、転職エージェントのような、転職させることにインセンティブが偏っていることもないので、比較的中立的な立ち位置でアドバイスをしているようにも思います。ただし、日本での転職を考える場合には、その支援領域は相当限られてきます。Career Serviceは日本語は分からないし、日本のジョブマーケットにも精通していません。あくまでも欧米がカバー対象です。

さて、毎週このCareer ServiceからはメールでNews Letterが届くのですが、そろそろ本腰を入れて準備しよう!というメッセージが入っていましたので、メールから少し抜粋してみます。来年1月からは、各企業がキャンパスにきて、リクルーティング活動がはじまります。

Preparing for Corporate Partner Week and On Campus Recruitment (OCR)

We wish you all a lovely Christmas break. In order to support you fully during term time, career Services takes our annual leave during your term breaks. The Career Services office will be losed from Wednesday 23 December until Monday 5 January 2009. Limited coaching sessions, including sessions with our Finance Executive in Residence Michael Lehmann, will be available next week.

It's important that you keep practising interview questions in preparation for On Campus Recruitment next term. For all upcoming interviews, remember you can link to InterviewStream over the holidays as long as you have a web cam. Video your own mock interview and practice answers to commonly asked questions via http://campus.interviewstream.com/login/?schoolid=46.

→クリスマス休暇に入るけど、インタビューなどぬかりなく練習してね、ということです。インタビューの練習は最低1回はFace to Faceのをこなさないと、Career Skillsという科目の単位を落とすことになります―私も今朝ひとつこなしてきました。英語でのセルフアピールをする練習になります。ビデオをとられて、フィードバック。後日DVDがもらえるそうです。

→あとは、PCでの練習を推奨しています。InterviewStreamは、パソコンでインタビューを練習するオンラインソフト。ある設定をすれば、想定質問を投げてくれる。webcamをつければ、録画し、繰り返しみることができて、ヒトと共有したりフィードバックをもらえたりというソフト。こんなのもあるんですね。

If you would like to have a coach review the video please arrange to meet with them through Career Central and email them the video that they will then offer feedback on during your meeting.

→インタビューをレビューしてもらいたかったら、キャリアコーチと早めにアポイントメントをとれと。

Also review sample interview and networking questions on your portal homepage. Christmas gatherings are the perfect environment to sharpen your technique and personal brand as well as your elevator pitch - a concise, carefully planned and well-practised description of yourself designed to be clearly understood in the time it would take to ride up an elevator.We hope all your questions about Corporate Partners week and OCR were answered at the presentation on Tuesday night. One clear takeaway from the panel was to be yourself, be natural when networking and ensure human connection. Make sure the impression you leave with them is that they would want to work with you on a daily basis.

→ネットワーキング(=コネづくり)もきわめて大事。これもぬかりなく。短い時間で、自分らしさを出して、印象づける練習をしなさい―これは難しい。

Just after OCR we will hold Cover Letter Review sessions - watch this newsletter for times and your Career Reps will also keep you informed. Sign up will be via career central.
Have good holidays; keep networking, researching companies and reading (including your skills development binder!), and return full of energy and enthusiasm for OCR and Corporate Partners week.

→カバーレターのレビューもやるので、準備しといてね。休み中にいろいろがんばってね、というニュアンスでしょうか。

学校側としても、卒業生の就職動向は、学校のレピュテーションに直結するので、結構気合いが入っている感じがします。日本人学生の多くが、社費であり、その会社に戻る場合が多いのですが、そういう学生も、基本的にこれらのものがすべて必須になっています。

ビジネススクールは、教育サービスも提供しているけれど、よく考えると学生にとっての関心事は、どういうキャリアに次に進めるかであり、こちらの方も相当大事。この転職エージェントとしての機能はきわめて大事になります。この機能とは、一言で言えば、「ハブ」です。そして、これからは就職難の時代に突入するわけですから、この機能が超重要になってくるのは容易に想像できます。

そうなってくると、これからのビジネススクールは、ますます二極化が進むのではないかと思っています。というのも、ヒト・企業が集まる学校には、さらにヒト・企業が集まっていき、逆に、少しでもヒト・企業が集まってこなくなると、さらに集まってこなくなるからです。不況のときはビジネススクールに学生が逃げてくると言うけれども、どの学校にも満遍なく逃げてくるのではなく、上位の学校に偏って学生が応募してくるだろうと想像できます。 ビジネススクールも生き残りをかけた戦いがはじまります。

2008年12月11日木曜日

Mind Mappingの特訓















今日は9:00-17:00まで、マインドマップおよび記憶術をテーマにした研修。10人ほどの少人数での受講です。

マインドマップは、カンタンに言ってしまえば、カラフルな色を使いながら、放射状にメモをとっていく、ある種のノートとりの技術です。ここ最近は、日本でも大変なブームになっています。

情報の形式としては、本質的には、ロジックツリー、すなわち、階層構造式にメモをとるのと変らないのに、何がそんなにすごいのかが知りたく、参加してみました。

私なりの解釈だと、右脳と左脳を同時に活性化させる技術、という印象をもちました。すなわち、左脳的な階層構造を維持しつつ、右脳も同時に活性化できるように、お絵かきチックにメモっていく、ということでしょうか。
















こんな感じで、マインド・マップをたくさん書いています。

たしかにマインド・マップ形式で書くと、右脳の「起動感」があります。たとえば、短いレクチャーのメモをとるという練習があるのですが、マインドマップで整理しておくと、内容を文字として記憶しているのではなく、イメージで記憶することになります。その結果、今このブログを執筆している段階でも、そのイメージを呼び起こすことができるのです。

試験で問題を解いているときに、「教科書の何ページの左下に書いてある内容だったな」と思い出すのに似た感覚です。これは、まさにイメージの力、右脳の力をレバレッジしているわけで、この原理をマインドマップは借りているのだと思います。

驚いたことに「脳に関する研究成果・知識のほぼ95%は、1990年以降に分かった」そうで、最近になってようやく脳に関して「わかり始めた」そうです。これからの脳の研究成果には要注目です。われわれの思考・発想を支援するような新たな方法論も、多くでてきそうです。 講師も、最近の脳研究の成果はめざましく、去年マスターを取り直したといってました。

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ロンドンの風景:シャーロックホームズの街


LBSのあるBaker Street Station。焦げ茶の煉瓦で積まれたアーチ型の屋根は、歴史を感じさせる。古い。


Baker Streetには、SHerlock Holmes Museumがある。晴れた日の休日には、よく家族連れが行列を成している。


そして、これがSherlock Holmesに出てくるBaker Street。抜けるような青い空ですが、空気はピリリと冷たい。
Baker Streetを少し抜けたところに、LBSがある。
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2008年12月9日火曜日

コトバを磨く

Advanced Business Writing.

今日は、朝の9時からはじまり、夕方の5時まで続くライティングの特訓デーでした。学生のコミュニケーション・スキルを向上させる一環として、提供されるものです。じつは、きわめてベーシックなものも含まれていて、ビジネススクールでこんなのも提供するのか、と驚きますが、もしかしてこれはLondon Business Schoolだけなのかもしれません。LBSの学生の特徴として、きわめて多様なナショナリティがありますが、そのせいか、我々日本人に代表されるように、LBSは、欧米ウケするコミュニケーション・スキルに全般的に不足しているのかもしれません。

コースの概要としては、次の2つは全員が受講します。

Best Practice Presentations & Communications
Writing with Impact

その上で、学生の興味に応じて、以下から2,3のプラグラムを選ぶことになっています。私は、Advanced Business Writing、Mind Mapping & Memory、The Spoken English Company (online programme), Speed Readingを選択しました。そして、今日がAdvanced Business Writingの日というわけです。

Accent & Voice Coaching (half day course)
Advanced Business Writing
Advanced Information Management Skills
Dealing with Stress
Influencing & Persuading
Listening & Observing
Managing Meetings
Mind Mapping & Memory
Personal Impact
Public Speaking
Speed Reading
Successful Negotiation
The Art of Communication
The Spoken English Company (online programme)
Winning Competitive Presentations

さて、このAdvanced Business Writing、6人くらいのグループで受講します。

頭の中に散らばっているさまざまな英文を再整理するのにとても役だったと思います。そして、やはりコトバは大事!です。コトバはメッセージを運びますから、コトバの善し悪しで、伝わるか伝わらないかが決まってしまいます。コトバは大事です。

何をやったのかというと、ひとつには、伝えにくいメッセージをEmailで伝えるという課題。Study Groupdのメンバーが無断で、ミーティングに欠席したときに、それをフィードバックする際に、どう書くかというもの。模造紙にそれぞれ、メールを書き、壁一面にそれをはり、お互いのを比べるというやり方。伝え方にお国柄というか、それぞれのキャラが出て面白い。それ言い過ぎでしょう、というものから、超ソフトなものまで、レンジはバラバラでした。講師のファシリテートにより、それぞれの伝え方がどういうインパクトをもつのか、どういう効用があるのかをディスカッションする。コトバのさじ加減ひとつで、相手の感情を傷つけたり、もしくは相手をやる気にさせたりすることができますから、コトバは何とも強力なツールです。

また、さまざまなタイプの英文を読み、それらの特徴をディスカッションしました。ハーバード・ビジネス・レビューの記事は、ライティングという観点から、やはりよく書けていると思います。また、エコノミストの英文もしかりです。シンプルな単語で、かつ全体の構成がしっかりしている。一方、極端なアカデミックな論文を読み、その読みにくさを体感する。そして、この間行われた Obama’s Victory Speechは、やはり聞いていてほれぼれします。レトリックや繰り返し、構文の作り方、よく練られています。Obamaの場合は、抑揚の付け方、ポーズの取り方の絶妙さとあいまって、感動的なスピーチが生まれています。

学びは、英文ひとことと言っても、上のように、さまざまな書き方があるということ。そのタイプは、

Exposition: 何かを説明するときの書き方。アカデミックな英文に使われる
Description: ある状況・プロセスを説明するときの書き方
Argument/Persuasion: ある主張を論じたり相手を説得するときの書き方
Narrative: 物語を語るときの書き方

の4つがあり、それぞれにテクニックや心得を俯瞰しました。私の場合、仕事では、Argument/Persuasion的な英文はよく書いていましたが、Descriptionや、さらには、Narrativeはあまり練習というか、書いたことがないので、これからの課題です。

コトバは、メッセージを運びます。いいイ文章を書く、刺さるメッセージを紡ぎ出す。コンサルティングでも、最後になやむのは、どういうコトバをスライドに書くか、どういうコトバで伝えるのか、です。

日頃、いい文章は何か?という観点では、あまり文章を読んでいないので、とてもいい機会になったと思います。ビジネスの場面では、どういうメッセージを伝えるか?にまずは、プライオリティが置かれますが、もう一歩踏み込んで、それをどういう言葉で効果的に伝えるか、そこでの原理原則は何か?まではあまり気が配られません。

せいぜいあるのは、ロジカルライティングに代表されるような、ある意味カチカチとした書き方程度ですし、最近の風潮としてそれがヨシとされているきらいがあります。でも、じつは言葉はもっともっと豊かで、さまざまな表現方法があるのにも関わらず、です。本当は、もっと効果的でグッと伝える方法があるのかもしれません。

ロジカルシンキングを包含するような、新たな書き方の体系が、今後脚光を浴びてくることでしょう。書き方というと、とてもシャビーに聞こえますが、もっともっと、注目されてもいい、そんな領域だと思います。

2008年12月8日月曜日

コンサルティング業界の見通し:Kennedy Information Consultingのハナシを聞いて

"An inside perspective on the consulting industry"

と題したスピーチがあったので、聞いてきました。現在Kennedy Information Consultingに勤務している元アルムナイがスピーカーです。Kennedy Information Consultingは、コンサルティング業界に特化したリサーチ、ヘッドハンティング会社で、経営コンサルティング会社だけでなく、人事、IT、ファイナンス・アドバイザリーなどコンサルティング/ファーム全般をカバーしています。
http://www.kennedyinfo.com/

プレゼンテンターは、今後コンサルティング業界は、今までほどには伸びず、また今までほど激しくアップダウンもなく、安定した成熟業界になるだろうと予測していました。その最大の根拠は、企業とコンサルティング会社との情報格差がなくなってきているから。たとえば、1970年代は、戦略立案そのものが爆発的に売れたのは、企業が、戦略を科学的に立案する手法を知らなかったから。そして、1980年代から90年代にかけて、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)やTQMといったプロセス型のコンサルティングが売れたのは、やはり企業がその方法を知らなかったから。1990年代は、ERPやY2K(200年問題)関連が売れたのは、やはりその解決策を企業が知らなかったから。

しかし、今や、数多くのビジネススクールが、こうした方法論・手法を、エグゼクティブMBAや、MBAプログラムを通じて、幹部や幹部候補に教えているし、本やその他の情報ソースからカンタンに上記の方法論・手法が分かるようになってきたので、昔のような情報格差を使ったビジネスはできなくなりつつあるというのが、スピーカーの主張でした。また、たとえば、BPRに匹敵するような一大ブームを巻き起こすような新しい経営コンセプトが、今後起きる可能性はきわめて低いのではないのかともコメントされていました。

私は、このような考え方に違和感をもちました。というのも、コンサルティング会社が、ある種イノベーティブな商品を提供することで、マーケットのパイを広げるという、そんな立派なことはしていないと思うからです。iPodのように、新商品をポンと出して爆発的に売れる、そんな類の業界ではありません。単純に、景気のサイクルにあわせて、コンサルティング業界の変動も規定されてきているというだけの話しだと思います。たまたま、その時代時代に応じて、比較的よくクライアントに売れたテーマが、70年代は戦略立案、80年代はプロセス改革系、90年代はITがらみだっただけの話しではないでしょうか。コンサルティングフィーは、企業にとっては調査費。企業にしてみれば、いともカンタンに削れるコスト項目なのです。ですので、Kennedyの調査のような、情報格差云々という理論を持ち出すまでもなく、企業の財布の懐の大きさ次第で、コンサルティング業界の大きさが変ってきているわけです。

むしろ、着目すべきは、コンサルティング会社を雇う雇わないの意志決定者がこの10年ほどで大きく変ってきたことでしょう。企業がその意志決定をすることに加えて、その企業のファイナンシャル・パートナー、たとえば、プライベイト・エクイティ、銀行、政府などが、この意志決定に加わり始めた動きは大きいと思います。たとえば、プライベイト・エクイティが企業買収し、そのターンアラウンドをする必要があれば、その再生におけるビジネス面をコンサルティングファームにみてもらおうということになるわけです。

その他にも、企業の買収をすべきかどうかのデューデリジェンスや、もっと広く、どのような業界のどのような企業を買収すべきか、という投資アドバイザリーといったコンサルティングプロジェクトも増えてきたわけで、ある意味で、収入のソースがひとつ増えたということになると思います。また、こうしたファイナンシャル・パートナーが持ち込んでくる案件には、今まではコンサルティングフィーをあまり払い切れなかったような、中堅企業も含まれていることも多く、コンサルティングファームのクライアントのすそのは広がってきたといえます。

世界的に今後コンサルティング業界がどうなるか、ですが、キーワードは、一言で言えば「企業再生」になると思います。この金融危機の影響を受けて、企業は、資金面でのショートに加え、雇用不安・将来不安からくる消費意欲の減退にも直面し、多くの大企業が大変な事態に陥ることが想定されます。実際、すでに米国のビッグスリーなどはその先行事例だと思います。そして、あまりにも大きくて、名の通った企業だと、政府が大胆にも支援するわけです。こうした案件には、その再生の中立性を担保する上でも、ビジネス面のサポートとして、コンサルティング会社が入りやすいのです。

じつは、日本も全く同じ過程をたどりました。日本の場合は、産業再生機構という、公的な再生ファンドを立ち上げて、ダイエーをはじめ多くの有名企業の支援に乗り出しました。おそらく、世界的にも、これと同じような動きが出てくることでしょう。立ちゆく成った大企業、もしくは名の通った企業、歴史的な企業を、公的、もしくは準公的な機関主導で、再生するシナリオです。この再生案件に、多くのコンサルティングファームが何らかの形関与することになると思います。

1学期の履修科目

ほぼ1学期の授業が終わりに近づきつつあります。来週は、個人に合わせて、ライティングやプレゼン、インタビュートレーニングなどがあるのみになっています。試験も、いくつかのレポ-トおよび、Financial AccountingのExamのみ。試験が終わったら、すぐに地中海にあるマルタ島へ飛ぶ予定でいます。

さて、今学期の履修科目を振り返ってみると、かなり広範囲な科目をカバーしていることになります。LBSの方針として、どんなバックグラウンドをもっていようと、まずは一通り満遍なく必修科目を受講することが求めているようです。

<9月>
Understanding General Management
ケース・ゲームを使って経営全般を俯瞰する。教授のフレームワークにしたがって、ざくっと経営とは何かを学ぶ。その他、グループワークや個人レポートもあり、MBA的学習スタイルに慣れるという意味合いもありました
Global Leadership Development Programme
ライティング/プレゼンなど、ベーシックなスキルを身につける-外部機関が講師。個人的には英語のコミュニケーションの練習になりGood。
Global Leadership Assessment for Managers
個人の360度フィードバック、ケース、ゲームを使ってマネージャーとしてどう成長するかを学ぶ。今までエリートであればあるほど、将来挫折する可能性があるというメッセージが好き。ある意味でMBA生に対する警告。
Business Statistics
仮説検定、重回帰分析までの基本的な統計解析スキルを学ぶ。講義、グループで問題演習、PC演習の3つがワンセットになっていて、バランスがいい。加えて、グループレポートと個人レポートの二つが必要


<10月~12月>
Financial Accounting
財務分析以前の、財務諸表の作り方/仕組みについてじっくりと学ぶ。じつはこれらの科目の中で一番ヘビーかも。会計は奥が浅いようで、深いです。
Financial Accounting - Application Session
Financial Accountingの応用事例や演習など。先生がメキシカンで、無機質な会計を、ノリノリな科目にしていくテクニックはミモノ。
Corporate Finance
いわゆるCorporate Financeをひとおりカバー。企業価値算出までが1学期までの内容。2学期まで続く長いプログラム。ロシアアンな先生が、クラスのとの関係性を作るのが上手で人気。逆に後半の講師は、講義自体はうまくないが、本質的な問いを何度も迫ってくるので、それはそれでいいやり方。
Managerial Economics
ミクロ経済学を学ぶ- 需要・供給理論、ゲーム理論、オークション、産業分析などなどを、レクチャー、ケース、グループプロジェクトを通じて学ぶ。
Strategy
ケース・ゲーム演習などを通じて、ポジショニング、リソース、組織について学ぶ。フレームワークそのものというよりは、ケースが極端なものが多くて面白い。また、いくつもの研究成果を途中途中で教えてくれるのもけっこう役に立つ。Intensiveなグループワークあり。朝に課題を言い渡され、その日の22時までに提出するという、グループダイナミクスが試される日がある。
Strategic Problem Solving
いわゆるロジカル・シンキングを学ぶが、学生からの評判は今ひとつ。
Business Ethics and Corporate Social Responsibility
マネージャーとして、倫理的な問題に対してどう判断を下すかを学ぶ。まずは、きわめて個人的な意志決定から、CSRに通じる大きな意志決定まで、答えのないIssueに取り組む。奥が深くて好き。
IT for Business Value
DBなど古典的なハナシからWeb2.0まで。
Career Skills
レジュメの書き方、インタビュー、コネの作り方などかなり実践的な内容。LBSのCareer Servicesが提供してくれているプログラム。最後は、個々人のCareer Developmentスキルがものを言う。
Global Leadership Development Programme(続)
ライティング/プレゼンなど、ベーシックなスキルを身につける-外部機関が講師。私は、Online受講による英語練習コースおよび、アドバンストライティングコース、マインドマップコースの3つを履修


満遍なく学ぶとはいえ、実は負荷としては、相当にFinance系の科目の負担が重くなっているのが実情でしょうか。10月以降からは、週に、Financial Accountingが3時間、その応用編としてFinancial Accounting-Application Sessionが90分、そしてCorporate Financeが3時間、optionalで、Corporate Finance Tutorial Sessionが90分という具合に、Finance系科目が多いのです。加えて、Financial Accountingは、個人レポートが4つ、Corporate Financeは、毎週の個人レポートおよび、グループアサインメントが3つという具合に、他の科目に比べると授業以外の負荷も多いのが特徴です。

FinanceおよびAccountingともに、積み上げの科目であるため、どこかで挫折すると、それ以降がついていけなくなるという科目です。落ちこぼれを出さないように、相当な配慮をもってカリキュラムが設計されています。

個人的には、Corporate Financeは仕事でも使っていたものの、今回きちんと復習するとても良い機会になりました。Accountingは、Financial Analysisはしていましたが、Financial Analysisに入る一歩手前のいわゆる「会計」そのものについては、それほど勉強したことがなかったので、大いに勉強になりました。Accountingの学びのもうひとつは、いわゆるCorporate Financeのように鮮やかな理論的な背景のない科目において、どのように定性的なルールを理論化していく様をみることができたのは大きいと思います。これについては別途書きたいと思います。

そして、これだけビジネススクールが、Finance系の科目に力を入れていると言うことは、逆に多くの人が学びたいと思っているともいえます。そして、Finance系を志しているクラスメイトは、さらに自主的に勉強会を開催して、昨今のディールについてディスカッションしたりしていますから、上には上がいます。なので、もうひとつ再確認するのは、Financeの領域で自分は戦うべきではないということ。選択科目は、よりソフトスキル、もしくは、Change Management系の科目をとる予定です。

広範な科目を一気に短期間の間にカバーするので、今一度、自分の関心領域なのか、どこに興味がないのかを再確認できた1学期だと思います。と同時に、忘れてはいけないのは、世界中に友人が急速にできつつあること。

まだはじまって数ヶ月なのでなんともいえませんが、こうしたビジネススクールでの科目はあくまでも、素材に過ぎず、極言すれば、素材はなんでもよくて、何らかの素材を使って、1.自分の思いや思考を深めると同時に、2。その素材を使った議論を通して、ヒトとのつながりを増幅することができる、それが価値なのではないかと思っています。

2008年12月7日日曜日

ある日の休日:友人との交流

今日は、スタディグループのメンバー5人を自宅に招いてランチをする日。ところが、朝になって、3歳になる息子の体が熱いではないか!熱を出してしまったようです。急遽中止にしようかとも思うモノの、妻と話してそのままランチを実施することに。息子には、となりの寝室でゆっくりと休んでもらうことにしました。

最近、何度か外国人を呼んできた経験をもとに、外国人にウケるメニューにすることにしました。日本人的にけっこう好きな肉じゃがなどよりは、やはり分かりやすく、味がしっかりついているものがいいみたいです

したがって、本日のランチはいたってシンプル。

前菜:
豆腐サラダ
枝豆、

メイン:
手巻き寿司(サーモン、まぐろ、かんぱち、アボガド、きゅうり、厚焼き卵)
味噌汁
からあげ、照り焼きチキン

デザート:
ケーキ、ハッピータン、せんべい、緑茶

手巻き寿司は、ゲストにとって体験型の料理になり、なんといっても外国人の大好きな寿司なので、とても喜ばれます。そして、準備する方も楽なのもポイントです。にぎり寿司はみな知っているようですが、手巻き寿司は意外と知られていません。これは、日本の家庭料理なんだ、と適当に説明を加えるととてもウケます。ご飯をのりにつけすぎて、うまくまけなかったりと、なかなかみんな楽しんで巻いていました。

ネタは、売れ行きがいいのは、文句なしにサーモン。脂身がたくさんのっていて外国人ウケするようです。サーモン、まぐろ、かんぱちを、4:3:2で調達したものの、サーモンはあっさりとなくなったものの、かんぱちは一切れ残ってしまった。きゅうりはほとんど人気がなかったので、次回はなくてもいいかも。

そして、からあげ、照り焼きチキンもよく食べていました。とくに、唐揚げは売れ行きがよかったと思います。ケンタッキー・フライド・チキンで、この手のものはなじみがあるのかもしれません。

枝豆も好評でした。ビールによく合いますから。枝豆はたっぷりの塩でゆでて、しょっぱく味つけをしました。外国人には、やはりしっかりとした味付けがポイントです。

今回新しく試してみたのは、豆腐で、サラダと味噌汁に使ってみたのですが、これは賛否両論でした。全部残した人もいれば、全部食べた人も。豆腐のような繊細で、かつ、微妙な味わいは、なかなか難しいのかも知れません。とはいえ、のりも昔は外国人は「ヘンなにおい」があって敬遠されていたものの、今は何の問題もなく、バリバリ食べていますから、これも慣れなのかも知れません。地道に普及活動を続けます!

今日よく聞かれたのは、日本の食材はどうやって作るのか?という質問。たとえば、豆腐はどうやって作るのか?味噌はどうやって?のりは?といった質問を受けたのですが、なかなかうまく説明できず、反省です。

食事のあとは、グループメイトがもってきてくれたケーキと、日本茶を楽しむ。あわせて、Rice Crackerであるハッピータンを出すも、こちらは意外に手つかずでした。

前日にLBSのイベントSanta Pub Crawl-全員でサンタの格好になり、ロンドンの街中を歩くイベント-があり、みな二日酔い気味だったのですが、けっこう食べてくれたと思います。今度は、ちらし寿司を出そうと思っています。そして、妻に感謝です。

さあ、その後夕方からは、この寮の家族クリスマス・パーティ。でもうちの子は、熱を出していたので、残念ながら我が子は行けずじまいでした。心配をしてくれた、同じ寮に住んでいる元医者が、英史をみてくれたところ、今のところ心配はないよ!とのこと。ひとまず安心です。ちょうど日本人の留学生で、元医者の方がいらっしゃって、大変心強い限りです。

せっかくなので、妻と交代で、家族クリスマス・パーティに参加することにしたのですが、やはり多くの家族と触れあえるので、こういうコミュニティでのパーティはいいもんだなあと感じます。子供も0歳から5歳くらいで、ちょうど境遇が同じような家族が集まっているのもいいのでしょう。

だんだんとこの家族寮でも知り合いが増えてきたので、こういうパーティに参加するのが楽しみになっています。そして、何よりも貴重な情報交換の場になっています。子供の病院とか、家族で行きやすい旅行の行き先などなどの、旬な情報が入ってきます。やはり、「高品質な情報は、コミュニティから」です。

そして、夜はMicro-Economicsのレポートを書きます!

2008年12月2日火曜日

London Business Schoolは日本人向きのビジネススクール

恒例になっているFinancial Timesのビジネススクールのランキングで、London Business SchoolのMBA ProgrammeおよびExecutive MBA Programmeが欧州ビジネススクールの中で1位、総合で2位にランキングされました。ここ最近は、比較的好ランキングが続いているようです。そして、今までLBSが提供していなかった、学部卒向けのプログラムMaster in Managementを来年から開講することで、総合でも1位を目指そうしています。LBSがもっとも注目してみているのは、来年の頭に発表されるFTによるグローバルビジネススクールランキングでしょう。このランキングでは、欧州、米国、その他のビジネススクールすべてを対象にランキングがされます。

さて、ビジネススクールは、やはりその発祥の地であるアメリカの学校がとても有名で、実際素晴らしい学校がたくさんあると思います。グローバルランキングでも、やはりUSの学校が多く名を連ねます。そこには、長い伝統からくる知識の積み重ねと、高いレピュテーションがあると思います。したがって、日本人は、まずはビジネススクールというと、USの学校を念頭におくのではないでしょうか。日本企業の留学生制度によっては、欧州のスクールに留学する場合は、会社からなぜ欧州系なのか、追加で説明を求められるとも聞きます(USのスクールならば不要)

しかし、最近思うのは、London Business Schoolは日本人にとても適したビジネススクールであると思います。その人にとってのベストスクールは人それぞれなので、日本人と括って議論するのは、少し無理があるのですが、欧州系のビジネススクールのアピールもかねて、そう思う「6つの理由」をあげてみたいと思います。

1.多極化する世界にマッチした世界観に触れることができる
今はまさに金融危機のまっただ中で混沌としていますが、これから先、確実にいえるのは、世界が多極化していくということでしょう。米国一辺倒でもない、EU一辺倒でもない、またBRICS一辺倒でもない、むしろ、これらの国、もしくは国のまとまりが、互いに拮抗しあう世の中になっていくのは、周知の通りです。

こうした世の中になっていく中で、LBSのような、全員がマイノリティで構成されるクラスメイトと2年間を過ごすことは大変価値があることだと思います。イギリス人、アメリカ人ですら、それぞれお10%ずつしかいません。西欧、東欧、ロシア、アフリカ、アジア、US、南米、などバランスよく国籍が分散しています。ある意味で、近未来の世界を、バーチャルにクラスで疑似体験することができると思います。

クラスディスカッションでは、「うちの国では」といった議論もよくされますし、教授の方も、どこかの国に根ざした発言はせず、いつもニュートラルな発言を求められます。我々学生もどこかで、相手のナショナリティを尊敬する必要があることを感じます。そして、世界のニュースに一段と敏感になるようになりました。たとえば、ジンバブエのニュースでも、クラスメイトのだれだれの国だという意識のもと、世界のニュースが身近に感じられるようになるのです。

また、学生だけでなく、教授もきわめて多様です。まだ1ターム目ですが、今まで受けた先生の国籍をあげてみると、メキシコ、スペイン、ロシア、ポルトガル、カナダ、アメリカ、イタリア、ルーマニアなどなどその多様性が分かると思います。

国際感覚が乏しい日本人にこそ!このような環境下での「学び」は激しく大きいように思います。

2.平均年齢が高く、大半の学生が英語を母国語としていないNon-nativeである日本人で留学する場合、概して、平均年齢は高めで、帰国子女でない限り、大なり小なり英語のハンディキャップを抱えることになりますが、上で述べたように、ほとんどがネイティブスピーカーではないので、そんなに気後れすることが少ないと思います。そして、平均年齢に関しては、このブログでも何回か書いたかも知れませんが、29歳と高めなので、日本人の留学生プロファイルとマッチするのがうれしいところです。

そして、先生もほとんどノンネイティブですので、一見英語が聞き取りにくいのではないかと思うかも知れませんが、じつは逆で、ノンネイティブなので聞き取りやすいのです。私などは、流ちょうに話すネイティブよりは、ノンネイティブの方が、難しい言い回しを使わず、スピードも遅いため、聞き取りやすく感じます。

3.授業はケース一辺倒ではないため、ワークロードは、ほどよいハードさ
LBSの授業は、ケース、レクチャー、その他体験学習などがバランスよく配置されていると思います。まだ1学期しか経験していないため一概にはいえないのですがじつはワークロードは大変は大変なのですが、超きついということにはなりません。日本人の留学生の場合は、多くはパートナーや子供とくることが多いと思いますので、家族の時間も必要でしょうし、英語のハンデを克服する時間も必要でしょう。就職活動や、課外活動時間をたっぷりと使いたい人もいるでしょう。こういう場合、ワークロードがほどよいのは、とても助かります。

その秘密は、おそらくケースをこなす数が少ないということでしょう。予習に一番時間をとられるのはケースです。LBSの授業は、一コマ3時間です。一方、よくあるのは90分。そして、その3時間で、ケースを1つ行います。学校によっては、90分で1個ずつですから、想像されるように、ケースをこなす数が少なくなるわけです。この辺りは賛否両論あるかもしれません。その分、クラスでのレクチャーや、ゲームなどが織り込まれるので、学びが少ないというわけではないと思います。またじっくりとケースの議論をできるというメリットもあります。また、グループアサイメントがけっこう課されるので、一方で時間はとられますが、これは楽しく、価値ある経験です。個人的にはグループアサイメントはもう少しあってもイイカモと思っています。

総じて、ワークロードは、大変ながらも、ほどよく調整されていると感じています。

.学校はパートナー/子供も満喫できるロンドンのど真ん中に位置する
やはりロンドンにあるというのは大きいでしょう。演劇、文化、音楽、ミュージカル、美術館、博物館など、ありとあらゆる見物がそろっているし、緑豊かな公園もとても多く、私は、とても住みやすい街だと思います。妻は、東京と同じくらい住みやすいと言っています。日本食を扱う店や日本料理店も多く、日本食が恋しくなると言うこともないと思います。

逆に、よく挨拶代わりに言われる、ロンドンのよくないところは天気。とくに冬は、そして、今は、日中がとても短くなり、寒く、よく雨が降ります。イヤです。ガ、個人的には、日中は授業を受けているわけで、そんなに今のところ苦になっていません。(これからもっと寒くなるのでしょうか?)それに、夏は、湿気もなく、東京のように酷暑になることもなく、本当に気持ちよく過ごせます。

5.日本からは旅行しにくい各国へ手軽にアクセスできる

旅行を満喫できる!これは、勉学以外のプライベートの生活を留学中豊かにする上で、とても気に入っている点です。日本からだとなかなか行きづらい多くの国々へ、手軽にいけます。フランス、イタリア、スペインなどは、もう1,2時間圏内ですし、トルコ、チェコなどの東欧へもすぐ行けます。個人的には、ロシアのセントピーターズバーグ、クロアチアのドブロクニクに加え、アイスランド、エジプトなども行ってみたいと思っています。

距離的、時間的にこれらの国が近いことに加えて、価格的にもヤサシイのも見逃せません。ライアンエアーやイージージェットのような格安航空会社のおかげで、かなり低価格でひとっ飛びできるのが何ともうれしいところです。

6.円高ポンド安によりロンドンは相当生活がしやすくなっている
そして、最後に財政面。欧州系、とくにイギリスのビジネススクールが敬遠されてきた理由のひとつに、とくに私費の留学生にとって、イギリスの物価の高さがあったかと思います。しかし、この為替の大変動のおかげで、ただいま現在は、円高ポンド安になり、かなり生活がしやすくなっています。私がこちらにきた夏は、1ポンド=220円ですが、今は、1ポンド=150円未満ですから、3割安くなった計算になります。たとえば、学校のコーヒー一杯は、1ポンド15ペンスで、今までは250円だったのが、これが170円になるという感覚です。学食は、4ポンドですが、今までは、880円だったのが、今は、600円という感覚です。そうとう日本人の懐にやさしくなったのです。日本の物価に相当近づいたといったもイイと思います。

以上、アカデミックという点でも、ブランディングという点でも、財政面においても、ロンドンビジネススクールは、日本人にとって、今まで以上に学びやすく、そして学びの多い学校なのではないかと思う次第です。

2008年12月1日月曜日

改めて思うこと:企業は変えられるという事実

Strategyのクラスでは、さまざまな業界や企業の変革のケースを扱うのですが、こうしたケースをじっくりと学んでみると、改めて、企業は変えられるという単純な事実を認識させられます。

私たちは、多くの「慣性」にのっかって、日々の延長線上で考え、仕事を回しがち。こうした惰性を、Organizational Inertia(組織の慣性、うまい訳が見つかりません)と呼ぶようですが、私はこの概念けっこう好きです。なぜなら、いろんな企業のコンサルティングを通して、まさにこうしたOrganizational Inertiaを歯がゆくみてきて、それらを上手に整理してくれているからです。

Strategyのクラスではこんな風にOrganizational Inertiaを整理してくれました。
構造的な慣性
 ・組織が複雑/硬直化して変えられない
 ・すでに投資してしまったからもう変えられない
心理的な慣性
 ・こういうもんだという思い込みから変えることができない-メンタル・ブロック
 ・行き過ぎたコミットメントが邪魔して変えることができない

こうしたOrganizational Inertiaが企業の変革を邪魔するわけです。しかし、一方で、変革に成功する企業を勉強することで、Organizational Inertiaに抗して、企業を変えることができるんだと、思えるのは実にうれしいことです。過去のコンサルティングの中でも、「やはりこの企業は変ることができないのか」と悲観的になったこともありますが、そう思う必要はない!というメッセージですから、勇気づけられます。

企業変革事例その1 スイスの時計産業
この事例は驚愕です。企業を変えた、というよりは、産業そのものを変えてしまったのですから。Organizational Inertiaというよりは、もっと大きな慣性、Industrial Inertiaというべきか。

スイスの時計産業は、高級時計セグメントとして、一躍時計産業の頂点に君臨しますが、日本勢・香港勢の安価で性能のよい時計の出現によって、スイスの時計産業は、危機に瀕するわけです。変化に対応するといっても、それはそれは難しく、スイスの時計産業は、時計職人の小さな個人商店の集まりとそれらを束ねる幾重にも成る組合からなっていたのでした。
しかし、スイスのコンサルティング会社とこの状況を憂うスイスの銀行によって、産業としてこうあるべきという青図に向けて、一気呵成にバラバラの産業を統合化し、強力な中央集権的な企業を創り出したのです。この成果が、スイスの時計産業を救うことになる「Swatch」なわけです。あらゆる生産ラインを一元化し、いらない工場はたたみ、複数あった組合は統合させてひとつの企業とし、デザインはすべてイタリアのトップデザイナーにアウトソースし、というように、産業構造自体を変えてしまったのです。想像を絶することを次々とやり遂げたのだと思います。

企業のレベルで物事を、変えられないといっているのは「まだまだ甘い」。そんな風にも聞こえてくるケースです。

企業変革事例その2 オーティコン:デンマークの補聴器メーカー
これは、企業文化を根本的に、変えてしまった事例。企業文化は、企業のDNAのようなもので、変えられないという先入観を覆すのにはうってつけのケースです。

デンマークの補聴器メーカー、オーティコンは、もともと技術志向の会社で、その先端的な技術によって一躍補聴器のトップ企業に躍り出るものの、これまた、海外勢であるソニーやシーメンス(ドイツ)の攻勢によって、危機に瀕するわけです。さらに、オーティコンの問題だったのは、そのきわめて官僚的な組織カルチャーのおかげで、にっちもさっちも身動きがとれない状況にありました。技術志向が強く、顧客をみない、その上、官僚的。日本企業でもよく聞く話です。

再生請負CEOのKolindは、まずは、マーケティング機能の強化、業務の効率化、などなど今の表出する問題点をつぶしにかかります。それはそれで、すぐ成果が現れ、めでたしめでたし。

ところが、Kolindが素晴らしいのは、この回復は、一過性のモノであると認識していたことです。危機に瀕したときは、とりあえずそこそこ外れない打ち手を打てば、業績は回復するもの。しかし、それが定常的に続く仕組みを作るのが難しいことを指摘しました。

Kolindは、組織文化を抜本的に変えるために、組織、部署というものを一切なくしてしまったのです。すべて、プロジェクトベース。だれがプロジェクトを起案してもいい。プロジェクトを起案したヒトは自分で人材を集め、チームをつくり、成果を出す。Kolindは、これを、スパゲティ組織と呼びました。官僚的な組織の全く正反対の組織形態に大きく、振り子を振ったわけです。

さすがにあまりにも混沌としたために、そのあと、もう少しいわゆる、伝統的な組織に戻します。しかし、戻したとしても、昔に比べれば全然、ましなわけで、オーティコンは今でもイノベーティブな製品を出す企業として、活躍をし続けています。徐々に変えるのではなく、一気に行き過ぎなほど変えてみる、そんな手法をKolindはとり、抜本的に組織文化自体を変えることに成功しました。

面白いケースたちです。

2008年11月29日土曜日

ネット世代の試験対策

最近は、もうすっかり期末試験のシーズン。このはじめのAutumn Termも終わりが近づきつつあると思うと、改めてTime fliesと感じずにはいられません。時間が経つのは早いものです。お世話になって卒業生に一人が、「一瞬一瞬を大事にして!」と言っていましたが、まさにそうなのだろうと思います。

こうした学校のレポートや試験対策には、インターネットが大活躍しているようです。今の学生世代は、まさに空気のようにインターネットを使いこなしている世代ですから、当然といえば、当然です。われわれの学生の間でも、試験前になると、過去問やその解説、クラスのポイントをまとめた資料などが、メールを通じて飛び交っています。

こうしたのはまだまだ原始的な手口であって、先日のBusiness Weekによると、各学校、教授、クラスの、過去問、クラスノートの情報共有サイトがここ数年で急速に伸びているという記事がありました。今まで物理的に行っていたモノを、ネットの世界に載せることで飛躍的に共有を効率化するという、とても簡単なアイディアですが、誰にもとめることのできないトレンドです。ここに紹介されてあるものとして、以下のようなものがあります。

過去問の共有サイト(PostYourTest.com, Exams101.com)
授業のノート共有サイト (NoteCentric.com)
study guides (HowIGotAnA.com)
上記の全部 (CourseHero.com).

その他にも、Business Weekには載っていないですが、よくあるレポート課題のレポートサンプルの共有サイトや、レポートの代筆、添削など、なんでもありの状況になってきています。レポートの代筆や、添削は、インドの比較的低賃金だけど、高学歴な学生を雇えば、安くできるというわけです。

こうしたサイトに対して、学校の先生、教授陣は、憤慨しているようですが、なんと時代遅れな対応をしているのかと、思わずにはいられません。試験問題の共有は、知的財産法の侵害にあたるとして、その違法性を主張したりと、あの手この手で、このサイトをなくそうとしているようですが、「音楽配信」「動画共有」などと同じで、この手のトレンドは、「止めることのできない」トレンドです。いくら阻害しようとしても、大きな力の前にはただただひれ伏すしかないわけです。

問題あるところにビジネスあり。たとえば、レポートのコピー・アンド・ペーストを摘出するソフトウェアで、Turnitin(http://turnitin.com/static/index.html)があります。大学、高校などの教育機関では、スタンダードになっているソフトウェアのようです。学生から提出されたレポートを、このソフトウェアにかけると、「カット・アンド・ペースト度」を算出するというすぐれもの。ネット上の文書などありとあらゆるテキストとの照合をかけることによって、学生が既存の文書をコピーしていないか、アイディアを盗んでいないかを検出するわけです。

アイディアの盗用に関しては、ある種の「倫理的な」問題が伴うので、別の議論が必要ですが、過去問、過去のノート、スタディガイドの共有に関しては、Business Weekで発言しているある教授のコメントは的を得ていると思います。「われわれが、もう少し努力をすればいいだけ」。そうなのです、たとえば単純なハナシですが、新しい問題をつくればいいわけです。

昨日あったStrategyの試験は、朝の9:00にメールで試験が配信されて、その日の12:00に返信すべし、というもの。ネイティブも時間いっぱいかかるという、なかなかライティングヘビーな試験です。この試験の場合は、そもそも何でももちこみOKです。やろうと思えば、クラスメイトとも相談もできますが、時間的なタイトなので、なかなか他人をサポートしている余裕もないわけです。とはいえ、こうした状況下でも、他人の力を借りられる人は、それも立派な実力でしょう。

また、日本のビジネス・ブレークスルー大学院のテストでは、授業によっては、学生の中間レポートに応じて、学生の問題をすべて変えているそうですから、これもまた、イノベーティブなやり方です。

インターネット世代である学生には、従来のもぐらたたきのアプローチではない、インターネット時代にふさわしい対応策が必要、でも学校側が、非インターネット世代なのがなやましいところです。

2008年11月26日水曜日

ブレーンストーミングには批判も必要!?

Wikipediaによると、

「ブレーンストーミングとは、少数の集団で自由に意見を出し合い、あるテーマに関する多様な意見を抽出する技法のことである。質より量を重視し、お互いの意見に批判をせず、自由に意見を出し合うことで、周辺知識を列挙することができる」

ここでのポイントは、お互いの意見を批判しないです。こういうことは、おそらくビジネスパーソンの間では周知の事実でしょう。

しかし、最近の研究によると、じつは、そうしたお互いを批判しないというルール自体が、自由な発想を阻害するのだそうです。むしろ、批判を恐れずに議論をしあうことでより創造的なアイディアを引き出し、結果的に実りのあるブレーンストーミングになるというのです。

批判をしないというルールそのものが、頭の思考をどこかで縛ってしまうということなのでしょう。何となく分かる気がします。そして、自分がアイディアに対して、相手がチャレンジしてきたら、やはりぐっと一段と深く考えますから、そこからより一歩クリエイティブなアイディアが出てくるというわけですね。自分の経験と照らし合わせても分かる気がします。

ここで大事なのは、何の束縛もなく、意見を言い合うというのが、ブレストのそもそもの意味だったはず。それが、いつの間にか、相手を批判してはいけないという盲目的なルールに昨今なってしまった、というのは大きな気づきです。

そして、自分の意見を批判されても、それはその人が批判されているのではなく、その意見がチャレンジされているという感覚をきちんと持ち合わせることが、私たちに必要になってくると思います。ここの精神構造の変革なくして、ただ批判OKとしてしまっても日本企業ではおそらく昨日しないのだと思います。

<以下、研究結果の概要について-LBSポータルサイトより>
New research from Professor Charlan Nemeth finds that setting rules in brainstorming can impair creativity
‘Don't criticise anyone's ideas' is a typical rule of brainstorming sessions, but new research from Charlan Nemeth, Visiting Professor of Organisational Behaviour at London Business School reveals that such instructions can actually make people less creative.
While discussing ideas without fear of criticism is intended to encourage people to share creative ideas, research suggests that criticism and debate are in fact liberating and stimulating for creative thought and thus lead to creative outcomes from brainstorming.
Charlan Nemeth, Visiting Professor of Organisational Behaviour at London Business School, has previously documented the value of debate, even criticism, for creativity in a study conducted both in France and in the United States. In this more recent study, she explored whether it was lack of criticism that impaired creativity, or the setting of rules. Charlan predicted that when participants were given suggestions, not rules, they would produce more creative ideas, particularly when encouraged to criticise freely.
Charlan and her co-authors found that giving participants rules produced less creative outcomes than giving suggestions. Whether criticism was allowed or not had less of an impact than the way in which this guidance was delivered.
This research suggests that imposing rules on creative processes produces effects of conformity and convention that are not conducive to creativity. People are less likely to play, to come up with the "wild" ideas, that are part of the creative process when they are trying to follow rules, regardless of how well meaning those rules may be. Having rules to remember and consciously follow may also distract people from creative thinking.
The research, ‘The "rules" of brainstorming: an impediment to creative thought', was funded by the Institute for Research on Labor and Employment at University of California Berkeley which has supported Charlan's previous research on the liberating role of conflict in group creativity.
Created on 19 Nov 2008

2008年11月23日日曜日

Case Competition

欧州のUndergraduates、MBAのリクルーティングのために、うちの会社の東京オフィスメンバーが、やってきました。私もロンドン丁度ロンドンにいるので、昨日の夜と今朝とインタビューなど、お手伝いをしました。こちらの学部生や他の学校のMBAと交流できたりしたのは、新鮮でなかなか楽しかったです。

その後、午後は、Case Competitionのための初会合のために、学校に移動。Case Competitionとは、ある会社の実際のケースにもとづいて、その会社への提言を3,4人のチームでまとめ、それらをチーム間で競うというものです。今回は、シンガポールのNUS Business Schoolが主催するCompetitionでBest World Internationalという、化粧品などをマルチ商法で販売するシンガポール企業への提案になります。Best World InternationalがこのCompetitionをスポンサーしています。

こうしたCompetitionはビジネス・スクールにはたくさんあります。こうした既存の企業への提案をするケースもあるし、ビジネスの起業プランを競うものもあるし、さまざまなものがありますので、学生は自分の趣向に合わせて、どれに参加するか選んでいくことになります。

こうしたCompetitionは、また世界に新しい友人を作り、とても良い機会だと思っています。今回のチームは、元気のいい中国系アメリカ人エド、ドイツとUSのハーフのトーマス、シンガポールのイーホン、そして私の4人。必修科目(Core科目)を一緒に取り組むStudy Groupと違ったメンバーと作業を進めるのも新鮮です。

一方、SponsorであるBest World Internationalにしてみれば、そんなに大きくないこの会社にとって、こうした企画をスポンサーすることによって、世界中のビジネススクールに通っている学生に名前が知り渡るのは大きな宣伝効果になります。また、何十チームと、スポンサー企業への提言を考えてもらえるわけですから、安いコンサルティングフィーだと思えば、とても費用対効果は高いモノでしょう。質の悪いコンサルティング会社を1社頼むよりも、はるかにいいかもしれません。

一方で、主催社であるNUS Business Schoolにとっても、NUSのロゴが入ったケースをみなが読みますから、これも、世界中のリーダー候補へNUSの名前をとどろかせるのにとても効果的なわけです。私も、このCompetitionの前には、この学校の名前をよく知らなかったことからも、認知をあげるという意味で、効果があるということでしょう。

さてこのケースの主人公である、Best World Internationalとは、こんな会社です。

Best World specializes in the development of health and wellness
products that are distributed through its proprietary direct selling
channels. Founded in 1990 to provide quality products to enhance
lives, Best World has since evolved into one of the leading
companies in the health and wellness industry. Today, Best World
has a healthy presence in Australia, Brunei, China, Hong Kong,
Indonesia, Malaysia, Taiwan, Thailand and Vietnam – even as it
continues to expand outside the Asia-Pacific region.

お題は、「今後のさらなるアジアマーケットの拡大に向けて、どのような打ち手を展開すればいいか?」です。どの国にエントリーして、どのような顧客に、どのような商品を、どのように届けるのか? 業界がMulti-Marketing(いわゆるマルチ商法)なだけに、通常のマーケティングに少しヒネリを加えて考える必要がありそうで、面白そうです。たとえば、この商売は、どうしても「うささんくささ」、社会的な許容度が大いに関係するので、その国の文化と大いに関係があったりするわけです。そんな視点も踏まえた上での提案が求められるます。どなたか、いいアイディアがありましたら、教えてください。Straight Forwardにマーケティングプランを書いてもつまらないので、競争のルールを変えるような提案をしようとハナシをしています。

このケースの中でビックリさせられるのが、日本のMulti-Marketing Businessのマーケットサイズ。アムウェイなどを輩出しているアメリカにおけるマーケットサイズは、29.5 Billion ドルなのに対して、なんと27.3 Billionドルもあるのです!!ほぼ、アメリカと変らない大きさが日本にはあるのです。その次は、ドーンと離れて、Koreaの8.03 Billionです。そして、Taiwan 1.56、Malaysia 1.26と続くわけです。はっきりいって、アジア=日本のようなものです。-この会社は日本には参入していません。日本への参入への是非は大きな論点になるでしょう。

ところで、SNSのようなネット上のネットワークを使って、販売できないかを考えたいと思います。そして、上記のようなビジネスは、どうしても高価で(だからこそ原価率を低くできて儲かるわけですが)、それ故にアッパーセグメント、30歳以上を狙うのが通例なのですが、ここはぐーっとプライシングを下げて、ネットと親和性の高い若い世代にも変えるような商品を投入して、SNSのネットワークに乗せて売ることはできないものでしょうか。マルチ商法のピラミッド階層を、ネット上で実現するようなイメージ。もう少し議論する必要がありそうです....

“パスタ”がしみじみとおいしい

日本で食べる熱々の「釜揚げうどん」がおいしいように、「素パスタ」がとても気に入っています。作り方はとてもカンタン。

たっぷりと張った水に、多めかなと思うくらい塩をドバっと入れて、パスタをゆでる。10分ゆでたら、さっと熱湯をきり、そのまま皿にパスタをのせる。あとは、オリーブオイルをたっぷりとパスタに絡ませて、仕上げはパルメザンチーズをどっさりとかける。「素パスタ」の一丁上がり。

まだ熱いうちにパスタを頬張ると、パルメザンの塩気と、オリーブオイルの豊かな風味、それからパスタの少し堅めの歯ごたえが絶妙にマッチして、なんとも至福な気持ちになれる一瞬なのです。ペンネで作ってもとてもおいしいです。ちょっとした夜食にもってこいです。

ここロンドンにいるから、なんとなく「おいしい」が感じているのかもしれませんが、じつは、パスタもパルメザンチーズも、オリーブオイルも、日本で買うより、ほんの少しだけ質がいいのではないかと思っています。というのも、たとえば、オリーブオイルにしても、こちらのスーパーでは、ものすごい選択肢があるわけで、メーカーにしてみたら熾烈な競争にさらされているわけです。

一方、日本では、オリーブオイルがスーパーにあればいい、というくらいで、品種の多さは問われないでしょう。逆に、日本のもちもちとした「米」はやはり、こちらで買うと、日本で買うのに比べるとパワー不足を感じてしまいます。

パスタは色々の応用も、いともカンタンにできる食材でもあり、我が家の食卓に「パスタ」が登場する機会が増えている今日このごろです。

食材が少しずついいモノを使っていることで、結果的には、ある臨界点を超えて、「ああ、うまい!」と感じているのかもしれません。-強引に学びをみつけるとすれば、ほんの積み重ねが、結果的には、大きな差につながるということでしょう!

そう考えると、企業もそうで、たとえば業界内の2社を比べたときに、やっている業務や活動はそんなに変らなくても、ひとつひとつの細かいタスクレベルの仕事の精度が少しずつ違うだけで、企業の最終的な業績には大きな差がついているのはよくあることかと思います。

新世代学生の出現:B-Schoolのチャレンジ

こないだBusinessWeek恒例のビジネススクールランキングの発表がありました。めでたく1位に輝いたのは、Chicago Business Shcool。この特集を手がけた編集者のインタビューを聞いたのですが、彼らによると、今の学生は、いままでの世代とは違う、新人類世代が入ってきているんだそうです。したがって、当然違ったニーズを持ち合わせているわけで、学校側もそれへの対応が迫られているわけです。この新人類世代の特徴として、私なりの解釈をすれば、ネット世代、自己中心的、グリーン世代、個性喪失の4つ。

ネット世代:
インターネットをフル活用して育った初めてのジェネレーションがビジネススクールに着始めているという指摘。たしかに、私も高校、大学の頃からインターネットを使い始めたのを思い出すと、そうかもしれません。要は、ネットが当たり前と心から思える世代が入学してきたということです。こうした学生の新しい趣向を学校側が、十二分に対応できるかどうかがチャレンジだというのです。

たしかに、ネットの活用をもっともっと活用するチャンスは至るところにあると思っています。たとえば、今日も、教授からのメールがあり、「みんなから質問のメールが多いので、返事が遅れるかもしれないけど、ごめん」との発信がありましたが、それに対して、クラスメートが「Strategyのクラスで集団知を習ったように掲示板を使って、集団知で、質問に答え合おうよ、、」との提言。いや、たしかにそのとおりです。先生、生徒とのコミュニケーションだけでなく、生徒から知恵をひっぱってくる仕掛けをより活用する余地はあるな、と思いました。

また、オンラインでのクラスもほとんどないので、これも検討の余地ありです。今、私は、Spoken Englishという英語のスピーキングに関するコースを受けているのですが、これが唯一のオンラインの授業です。リアルキャンパスの学校であったとしても、すべてクラスで受講しなくてもいいのかもしれません。リアルとオンラインの双方の活用は、これから検討に値する面白いテーマだと思います。

自己中心的:
自己中心的な世代のようです。自分をみて、かまってくれないとイヤという世代のようです。したがって、画一的なカリキュラムを押しつけられるのがイヤな世代。ここ最近のビジネス・スクールのトレンドとして、選択科目のフレキシビリティをぐーんとあげてきているようです。たとえば、シカゴは、1年生のときから自分の関心に合わせて、バンバン選択科目をとれると聞いています。一方、LBSは、いまのところ、1年生の1学期は、100%必須科目で埋め尽くされています(笑)。このあたりの方針は学校によって大きく分かれるところです。

グリーン世代:
環境問題、エネルギー、CSR、こうしたトピックへの関心度が飛躍的に高いのがこの世代の特徴です。こうした問題を学ぶためのカリキュラム、教授、体制を整えるのがひとつのチャレンジになるとのこと。たしかに、この分野は新しいので、なかなか教授も揃えるのが難しいし、理論も確立していないので、教えるのも一筋縄ではいかないところです。いまのところ、多くのビジネス・スクールは、授業でメインに扱うというよりは、他の機関との連携や、クラブ活動などの課外活動を通して、こうしたイシューを学んでもらおうと考えているようです。

個性喪失:
じつは、一見すると個性が失われているように見えるのもこの新しい世代の特徴なのだとか。これは、ネットを駆使する世代ということ大いに関連しているでしょう。みんな瞬時に同じような情報を浴びることができるし、何か分からないことがあればネットでさっと答えをみつけて回答することができる。Googleからきたスタディグループのメンバーは、以前、ケースのディスカッションをするとき、ティーチングノート(先生用のインストラクション)をネット上で、上手に見つけていました。出願用のエッセイを書くときも、ネットで、合格者のエッセイサンプルを見つけてきて、それを加工して、出願する。さっと、正しい答えにたどりつくことはできるものの、みんな同じ情報に基づいてしまうため、書くモノに個性がなくなってしまうのです。

ビジネス・スクールのアドミッション側も、最近はどのエッセイも同じようなモノになってきてしまっているとも指摘しているとのこと。そういうこともあって、エッセイをただ文章で書かせるのではなく、パワーポイントでプレゼンをさせたり、「砂漠を車で旅するには誰をつれていきますか」といった一見奇抜な質問を出したりすることで、出願者の個性やユニークさを見いだそうとしているのでしょう。

多くの企業と同じように、顧客(=生徒)のニーズの変化にあわせて、もしくは先取りして、ビジネス・スクールもこれからどんどんと進化を続けなければならなそうです。そして、この新人類の登場は、マーケティング的に言えば、新セグメントの登場。それは、企業にとっても、チャレンジであり、ビジネスチャンスにもなり得ると思います。

2008年11月21日金曜日

不況の幕開けにどう対応する!?

まさに本格的な不況の幕開けとなりました。

The Bank of England says that the UK has entered a recession which will continue into 2009, and suggests it may cut rates further.(BBC)

金融危機の煽りをうけて、今度は、企業側が、きわめてパニック的な施策に走っています。中期的な視点を置き去りにして、経営上動かしやすい施策に走っているのに危機感を感じます。すなわち、コスト削減、その中でも人削減、もうひとつは価格の切り下げです。

最近ニュースの常套句ともなってきているのが、人員削減のニュース。その削減数を競うかのように、次々と飛び込んでくるこの手のニュース。ここ数日のBBCニュースのトピックから拾ってみます。

Sun Micro to cut up to 6,000 jobs
RBS to cut 3,000 jobs worldwide
Virgin Media plans 2,200 job cuts
Mobile phone group Vodafone announces £1bn of cost cuts
Peugeot Citroen cuts 2,700 jobs
Rolls-Royce plans 2,000 job cuts
Wolseley to shed 2,300 more jobs
JPMorgan cuts first of an expected 3,000 jobs
AstraZeneca plans 1,400 job cuts
Citigroup job cull to hit 75,000
......

とにかく、この手の何らか業績向上が見える打ち手を発表しないと、株価がもたないのでしょう。経営的な打ち手として、人削減は、善し悪しは別として、もっとも簡単にコストを落とすことができますから。

こんなニュースを連日聞いていれば、消費者意欲はあっという間になくなってしまうもの。そのために、イギリスのリテール各社は、こぞって値下げに走りまくっています。ディスカウントの連発です。たとえば、UKのスーパーで、イギリスに住んでいるヒトなら誰でも知っているマークス・アンド・スペンサーは、昨日は、全品20%引きのセールをしました。その他にも、Dorothy Perkins, Burtons, Debenhams, Selfridges や John Lewisといった小売りセクターは軒並みディスカウントをして、顧客減をなんとか食い止めようとしています。まさにカンフル剤を打って、売り上げを確保しようというわけです。

一方、その発信源になっている「金融」危機は落ち着いてきたとの見方もありますが、しかし、まだまだ火タネは残っています。US最大の銀行シティや、UKでもっとも信頼できると言われているHSBCの雲行きが怪しくなってきていることや、AIG以外の保険会社の問題が表面化してきていないのも、何か不自然です。それに、竹中さんが指摘していたように、実際の損失額は、想定より多く、追加の公的資金が必要になる可能性がきわめて高いでしょう。さらに、不良債権の処理に追われていれば、新規の貸し出しは確実に減るわけで、結果として企業側にも大いに影響されてしまいます。

構造的な長期な不況が続く、そういう前提で企業の戦略を組み立てる必要性がいまほど、求められているときはないのではないでしょうか。そして、こうした戦略を立案するにあたって、日本の不況を通して成長した企業から学ぶものが大いにあると思っています。

たとえば、吉野屋。顧客の回転率と、オペレーションの効率性を吉野屋ほど追求したファースト・フードは、ここロンドンでは見たことがありません。この手の、高回転、超低価格型のレストランは、大きなビジネスチャンスがあると思います。また同じような発想として、日本で大ブレイクしたのが、回転寿司です。こちらロンドンでも、Yo Sushiなど、回転寿司はあることにはありますが、どちらかというと、寿司が回転する、ちょっと変った、面白いレストランというポジショニングで、値段も高めなのです。日本における回転寿司のビジネスモデルのポイントは、その劇的な効率性です。通常、30%と言われる食材原価に、50%もかけていることからも、その他の販売管理費などの少なさが想像できるでしょう。ビジネス・プランでも書こうかな。

もうひとつは、やはりユニクロに代表されるような「ベーシック×高品質×低価格」、というポジショニングをとることでしょう。不況に入ってしまうと、どうしても消費者の気持ちはふさぎ込みがち。おしゃれをしようとか、派手になろうとか、そういう気持ちは起きてこないものです。日本でも、1990年後半そんな状況下で、ユニクロは、大躍進をとげたわけです。派手にはしないけど、高品質なモノにはならされているけど、お金がない、もう派手にはしなくてもいい、そんな消費者が急速に増えて、ユニクロの提供価値がそこにぴたっとはまったわけです。そういった意味で、「ベーシック×高品質×低価格」なポジショニングをするような企業はいいのではないでしょうか。

先日、アクセンチュアのパートナーの話しを聞く機会があったのですが、彼女も、いまは消費者は、ありとあらゆるもので、"trading down"している、すなわち、格を落としてモノを消費しているといいます。実際、スターバックスは急激に業績をおとして、マックは業績好調ことからも分かるように、明確な消費のシフトが起きているわけです。

小手先の経営施策で、一時しのぎの利益確保に走るよりは、日本の事例を参考にしながら、ビジネスモデルやポジショニングを見直す絶好のチャンスでもあるように思います。そして、上記のようなビジネスモデルやポジショニングは、仮に景気が回復したとしても、ダメになることはありません。不況でも好況でも、ツヨイのです。

2008年11月19日水曜日

ロンドンの物価は高いのか?

最近は、ロンドンの為替が極端に弱くなったこともあって、少しはロンドンの物価も落ち着いてきているのではないかと思いますが、とはいえ、日本からの旅行者は、ロンドンの物価は高い!と口を揃えていいます。そうなんです、実際に高いのです。私も、日本からこちらに数ヶ月前にきて、この物価の高さの前に、本当に日本の国力も落ちてきたなあとしみじみ思いました。



たとえば、ちょっとしたサンドイッチは、500円以上します。日本で食べれば、まずは1000円いかないようなパスタが、こちらでは2000円くらい。ちょっと寿司の入った日本食の弁当でも買おうものなら、まず1500円は見ておいた方がいいでしょう。とにかく高い感じがするのです。

とはいえ、実際に物価に関する統計をみると、意外や意外。都市別生計費指数では、ロンドが106なのに対して、東京は124!なんと、東京の方が統計上は、高いことになっているのです。ちなみに、東京よりさらに、生計費指数が高いのは、モスクワです。今や、モスクワが世界でもっとも物価が高い都市になっています。

いったい、どうなっているのでしょうか?



数ヶ月ここに暮らして、その理由が少し分かってきました。じつは、ロンドンは、食料品日用品が日本に比べて、とても安い。たとえば、うちは、Waitroseというスーパーで、食料品、日用品を買っていますが、このWaitroseはいわゆる、高級スーパーの部類に属するようです。そこでの値段をみてみると、





食パン(日本の食パンの2倍くらい入っていて) 0.45ポンド
クッキー1箱 0.37ポンド
ミネラルウォーター 2L 0.44ポンド
コーンフレーク(日本の2倍くらいの箱) 1ポンド


という感じです。今は1ポンド=150円、ちょっと前までのレートである1ポンド=220円としても、日常品が安いことが分かります。主食になり得る、豆類や、パスタ関連もかなり安いと思います。妻に野菜や肉の値段も聞いても、日本と変らないか、安いくらいだと言っています。

もうひとつ、特筆すべきなのは、こうした日用食料品が、おいしいということでしょうか。にんじん、タマネギ、じゃがいもなどは、なんだか日本よりもおいしい気がします。ここではよく食べられている鶏肉などは、変なくせがなくて、とてもおいしいです。日本で、おいしい野菜や肉は、なかなか地元のスーパーでは手に入らなかったことを考えると、とてもうれしいことです。

さて、なぜ安いのかというと、そのひとつの理由として、日用品には、17.5%の消費税がかからないことがあげられます。。また、子供服にも消費税はかかりません。だから、安いのです。一方で、日用品ではないもの、たとえば、外食であったり、エンターテイメントであったりとした贅沢品には、しっかりと税金がかかります。

こうした発想は、ヨーロッパ特有の「階級社会」からきているのではないかと思います。下級階級のヒトも贅沢さえしなければ、きちんと暮らせる仕組みをつくる、そんな思想が根底に脈々と流れている気がします。逆に、中流階級以上で、自炊の手間をおしんで、サンドイッチを買うような人は、きっちりと20%近い税金をとられるわけです。このあたりの階級に応じた税金徴収の仕組みができあがっているわけです。

一方、日本は、一億層中流な社会。たとえば、今日本で議論になっている、定額給付金のハナシも(これまた全く不毛な政策ですが)、金持ちにも不公平にならないようにとか、細かな議論が繰り広げられていることからも容易に、一億層流中的な発想がみてとれる。みんな総中流で幸せ、という見方もできるが、政府からみれば、国民全員からお金をとれるというわけで、近い将来に向けた、一律増税の布石が着々とうたれています。イギリスのような日常品を非課税にするといったそういう発想はみじんもでてこないわけです。

要は、ロンドンと東京では、ものによって物価の大小が違っていて、ならしてみると、東京の方が高いということでしょう。とくに日本からの旅行客の場合、日用品は買わず、だいたいにおいて、贅沢品だけを買ってすごすことになるので、余計に割高感を感じるのだと思います。

経営手法のイノベーションを考える

興味があるゲストスピーカーや教授の講演にはなるべく出るようにしています。今日はLBSの教授、Julian Birkinshaw氏が、自分の研究分野を簡単に紹介してくれました。Julianは、コア・コンピタンスの著者でもある、Gary Hamelとともに、Mlabという機関を設立し、まさに”M”anagement Laboratoryの文字のごとく、経営方法自体の研究をしています。その内容は面白そう。
http://www.managementlab.org/

Julianの主張は、これからは、経営方法や組織のあり方そのものが、競争優位要因になるんだ、というものです。マネジメントのやり方自体のイノベーションを考える必要がある、そこに21世紀的企業になるための、広大な機会が広がっているという主張です。たとえば、マネジメントとというと、ゴールを明確に定義して、ツリー上の組織の意志決定の仕組みを活用しながら、実行し・・・と想像しますが、本当にそれでいいの?と疑問を投げかけています。

イノベーションというと、商品であったり、技術であったり、もしくはビジネスモデルだったりします。たとえば、iPodはまさに商品のイノベーションでしょう。技術のイノベーションは、自動車、鉄道、飛行機などなど枚挙にいとまがありませんし、ビジネスモデルのイノベーションもDELLの受注生産方式は、あまりにも有名です。その中で、次のイノベーションは、経営方法そのものだ、というわけです。

たしかに、その通りで、経営自体のやり方については、冷静な考察が必要な時期にきていると思います。たとえば、MBA的なハナシでいえば、上記のゴール設定ひとつとっても、明確なそして具体的なビジョンを示す必要がある、と習うことでしょう。たしかに、ベーシックとしては正しいでしょう。しかし、そうでない例が回りを見渡せば、いくらでもみつかります。

たとえば、日本の商社。いったいビジョンは何なのか。かなり曖昧模糊としています。トヨタ。ビジョンの中に「産業に持続的な発展に貢献する」というのがある。これは明快な目ジョンなのだろうか。我がLondon Business Schoolは、Becoming the pre-eminent global business school. 全くビジョンになっていません。そうはいっても、上記の企業や組織は、きちんと業績を出しているわけです。

また、web 2.0的な、集団知を活用する、技術的なプラットフォームも整ってきていますので、こうしたものを存分に活用した新しいマネジメント手法の体系があってもいいと思います。実際、先進的な企業は、こうした新しいテクノロジーを、マネジメントに取り入れていることでしょう。

今まで、固定概念として考えられてきた、マネジメントの方法論は、じつは、事例を丹念にみていったり、新しい技術の登場のおかげで、バラエティに富んだものであって、唯一絶対なものはない。新しいマネジメントの方法を考えることができる時代がきていて、それこそを、経営上の競争優位とすることを考えてみるのは、価値があると思います。

コンサルティングを仕事としてやっていると、どうしても、クライアントごとの個別課題の解決に時間をとられて、なかなかあつかったプロジェクトを振り返ったりして、知の体系化をする時間がないのが課題だと思っていたのですが、今は逆に日々の業務から解放されているので、新しいマネジメントの方法という視点で、様々な事例を見ていきたいと思います。

2008年11月17日月曜日

違う意味合いを持つ2つの2位

フィギアスケートのグランプリシリーズ・フランス戦の日本勢の結果は、男子シングル小塚崇彦2位、女子シングル浅田真央2位でした。おそらくこの2つの意味する2位は、全然違うものだった思います。

小塚崇彦の2位は、まさに上出来の2位。実力の限りを出し切った2位。滑り終わったあとの快活な表情、やりきった感にそうしたことがありありと滲み出ていました。本当によくやった!と思える会心の演技だった思います。昇り龍のような勢いを感じさせる選手だったと、素人目にも思います。まだできあがっていない、これからもまだまだ伸びる余地がある、これからの成長が楽しみ、そんな感じです。

一方の、浅田真央の2位は、迷える2位。王者の抱える壁にぶつかってしまったかのような2位。滑り終わった直後の、あの悲しそうな表情、表彰台の上にたってもどこか浮かないその表情にすべてが表れていました。実際の演技は、あのしなやかさは健在で、芸術性もバッチリでうっとりさせるものがあるのですが、ジャンプにおびえている様子で、実際二つもジャンプをミスしました。

荒川静香も、10代に一時期絶頂をきわめて、その後ルールの変更や、王者ならではのプレッシャーを受けつつも、それをのりこえたのを思い出します。迷いの中から、自分なりの滑りを自ら確立して、その滑りをオリンピックでぶつけて見事に金をとったのを思い出します。かの有名なイナバウワーも、じつは、審査の評価上はプラスにはならないと知りつつ、周りからなんでプラスにならない演技を入れるんだという批判を受けつつ、あえて演技に入れていった。浅田真央も、そんな風にこれから成長していくのかなと思います。

プロの緊張感溢れる、そして息をのまずには見られない演技を生で間近で見ることができたのがgoodな旅行でした。

2008年11月16日日曜日

マッキンゼー:Strategy Classのケースより

今週のStrategy Classのケースは、経営コンサルティングのマッキンゼーでした。テーマは、組織の成長について。クラスの後半は、マッキンゼーのコンサルタントによるプロジェクト紹介。個人的には、自分の関心にもマッチして、とても面白いセッションでした-一方で、今回のクラスは、とてもつまらない、といっていたクラスメイトもけっこういたので、やはり人は多様だと思わされます。何が面白かったかといえば、

1. 組織の成長という個人的にも関心のあるテーマだった
2. ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白かった
3. マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトに満ちあふれていた

ということでしょうか。


組織の成長という面白いテーマ!

クラスを通じて、教授が伝えたかったのは、

・企業の競争優位を決定づける能力を獲得するには時間がかかる-そして、時間がかかるからこそ、競争優位になり得る
・そうした能力を生み出す、組織に関わる構成要素として、“人”、“組織構造”、“インセンティブ”、“カルチャー”がある
・これらの組織に関わる構成要素が戦略とマッチすることで、そこから生み出されるリソースが、企業成長へのドライバーとなり得る

といったあたりでしょうか。要するに、

企業の戦略、組織に関わる構成要素、競争優位となりうる能力・資源の間で、整合性をとることが大事ですよ、ということでした。

マッキンゼーという、ある意味で、“くせ”のある、人、組織構造、インセンティブ、カルチャーをもつプロフェッショナル・ファームが生み出す、ナレッジが、競争優位を生み出す資源になるというもの。ごもっともです。

ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白い!

さらに、あまりクラスでは議論になっていなかったのですが、ケースでは、このナレッジをどう取り扱うか、でマッキンゼー社内では、ひとつ課題になっているという記述が面白かった。要は、ナレッジをレバレッジしまくってクライアントの問題解決をするのか、もう一方の議論として、もっとゼロベースで、クライントの問題解決にあたるべきではないか、どちらに舵を切ればいいのか、がissueになっていました。ナレッジの整備は大事なんだけど、あまりそれに頼りすぎると、クライアント特有の悩みにゼロベースで取り扱えなくなり、tailor-madeソリューションではなくなってしまうのではないか、という危惧があるのでした。

これは、個人的には、結論は明快で、ナレッジをレバレッジして、クライアントの問題解決にあたるべし!だと思います。そして、「Client Interest First 顧客の利益をまず第一に考える」価値観があれば、ソリューションありきの解決策を押しつけることにもならないと思います。

第一に、ナレッジを活用することは、クライアントの課題のうち、コンサルタントが、もっとも難しい部分にフォーカスできることを意味します。というのも、ベーシックな課題のところは、既存の知識やノウハウで処理をして、そのクライント固有で、前例がないような課題、そこにわれわれのリソースをフォーカスできるわけです。クライントの課題のうち、共通性が高いところと、固有性の高いところを切り分け、後者にプロジェクトの時間を多く割くことができます。

トヨタをはじめとした、日本の製造業では、「改善」がすごい!と世界的に注目を浴びていますが、あの「改善」がすごい一つの理由は、「標準化」がすすんでいるからだと思うのです。「標準化」というと、マニュアル化ととらえられ、よりよくするとは全く対極に写りますが、日本の製造業が、この「改善」と「標準化」を両立できているのはなぜでしょうか?

それは、「標準化」という土台があるからこそ、その先の未解決の領域に取り組むことができるからです。じつは、「改善」と「標準化」は対立する概念ではなく、「標準化」があるからこそ、その「改善」ができるのであって、両方とも補完する概念なのですが、そのあたりの誤解は、まだまだこの世の中多いなあというのは感じるところ。私が思うに、「標準化」という言葉が悪いんですよね。

第二に、ナレッジを活用する文化は、結局は、みなが先進的なナレッジを生みだすことにつながります。ナレッジを活用して、効率的に問題解決をすると、ナレッジの重要性と有効性に気づきます。さらに、課題の中でももっとも難しい部分にコンサルタントが取り組むことで、そこから生まれる知見も、かなり希少なものになるはずです。ナレッジを活用する文化があるとすれば、同じような課題に遭遇したコンサルタントが、そうした知見を誰かが求めてくることになります。そこで、ナレッジの移転が起きるわけです。その際、クライアントの事例をそのまま語ってもだめなわけで、ある程度抽象化したナレッジとして共有することになり、クラインアントの抱える課題に関して、より一段上のレベルから俯瞰できるようになってくると思うのです。

そういうわけで、ナレッジの活用は、コンサルティング会社では大いに奨励した方がいいというのが私の持論です。

マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトフル

クラスの後半は、実際の経営コンサルタントによるプロジェクト紹介でした。実際のゲストスピーカーをクラスに呼ぶことで、よりpracticalなトピックを学生に提供すると同時に、ゲストスピーカーを出す会社としては、自社のプロモーションにもつながり、win-winの関係ができています。

このプロジェクトの解決のアプローチがかなり鮮やかで、いわゆる、経営コンサルティング的な知的好奇心が大いに満たされたものでした。「そんなの当たり前じゃん」というひややかなクラスメイトもいたのですが、私は、同業者として、その鋭い切り口に至る紆余曲折が肌で分かる分、より楽しめたのかもしれません。

プロジェクトは、停滞しているコングロマリット企業の成長戦略というもの。100以上の事業をもっている企業で、あまりにも多種多様な商品をもっているため、この数年間どう、成長の切り口を見いだせばいいか分からないというのが依頼のテーマ。どの事業部も自分たちの事業部の大切さを説く中で、どのようなロジックで事業ポートフォリオを再整理すればいいのか、かなり迷走していたとのこと。

ゲストスピーカーがとったアプローチは、そのコングロマリット企業が展開している事業を、「マーケット側から再整理する」というものでした。すなわち、ある事業部は、じつは複数のマーケットに商品を提供しているので、事業部=マーケットではないのです。ひとつひとつの事業がどのマーケットセグメントに商品を提供しているかを分析した結果、100以上の事業部があるにも関わらず、そして多様な商品展開をしていると思われるものの、じつは、大部分があるひとつのマーケットセグメントにしか商品を提供していないことが分かっり、しかもそのセグメントは他のセグメントに比べて、マーケットサイズが急激に落ちているというものでした-だから、会社全体として停滞している!ということでした。

要は、利益の源泉は、マーケットセグメントの選択にあったわけです。どっぷりと事業サイドからみるクセがついているクラインアントとしては、このキードライバーが見えなくなっていたわけです。

この会社の場合は、マーケットセグメントの選択が、キードライバーだったわけですが、他の会社、インダストリーでは違うかもしれないということも、注意を促していました。たとえば、鉄鋼の場合は、どのマーケットセグメントもにたようなもの。むしろ、内部の業務プロセスにキードライバーがあるという事例を話されていましたが、同感。

ビジネススクールのいいところの一つは、自分の知的関心にあわせて、様々な知的好奇心のネタを与えてくれるところだと思います。他にもいろいろなケースから、面白い学びがあるので、自分の記録のためにも、少しずつアップしたいなとおもっとります

2008年11月15日土曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その3

ロジカルシンキング以前が大事というオハナシとして、3つのポイント。

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。

で、今日はその二番目について。「素直に考えること」。これはとても難しいと思います。
われわれ、経営のフレームワークなどなどを大量に学んでいるので、逆説的ではあるのですが、素直に考えられなくなっているのです。従来の方法や先入観、前例、過去の知見などに惑わされて、難しく考えすぎてしまうときがあります。それと、あまりにも当たり前の問題指摘や、解決策を出すと、頭が悪いんではないかと思われてしまう恐怖心も、素直に考えられない要因のひとつかもしれません。今の世の中ほど、シンプルに考えるのが難しい時代はないのかもしれません。

素直に考えるために、コンサルタント時代に良くやっていた方法は、「ぼーっと」考えること。それもできれば、頭が少し疲れているときの方がいいです。ある程度必要な情報を頭につめこんだら、目を静かに閉じて(そのまま寝ないように注意をして!)、頭の中にアイディアを浮かぶのを待つ、というもの。風呂につかっているとき、トイレにいるとき、タクシーにのっているとき、電車にのっているときに行うのがいいかも。

不必要な情報やフレームワークをシャットアウトして、頭の中だけで思考するというもの。若干、疲れているときの方がいいのは、無駄な情報も処理できてしまうため。本質的なことだけにフォーカスできるようにしたいわけですので。そして、シンプルな質問を投げかけるのも効果的な気がします。
 結局、何が原因で、どうなったんだっけ?
 要するに、何が問題なんだっけ?
 要は、どうすればいいんだ?
 クライアントは明日から何をすればいいんだ?

くもった眼鏡をはずして、素朴に考えることで、だれも気づかなかったんだけど、でも本質的な問題や解決策に行き当たることができるというシンプルな法則でした。

2008年11月14日金曜日

パリの休日~ファイナルグランプリシリーズ~



パリにきています。早起きをして(朝5時!)、最寄り駅からEurostarに乗ること数時間で、パリの北駅に到着です。もうかれこれ、10年ぶりのパリでしょうか。こちらパリも、ロンドンと同じかもしかしたら、もっと寒いくらいの気温かもしれません。そして雨。この何となくどんよりとした、なにかすかっとしないところが、いかにもParisという感じでしょうか。雨で建物が濡れていると、なぜか絵になります。

そして、ロンドンと同じ、同じヨーロッパ街並みなのに、当たり前ですが、言語はフランス語に様変わりで、コミュニケーションをとるのにもちょっと一苦労。ふと、考えてみると、ヨーロッパ圏で英語を母国語としている国はわずか、というよりイギリス、それも一部の地方だけ。英語は文化的にはとてもマイナーなのだなと改めて気づかされます-ビジネスは別として。

じつは今日は、フィギアスケート・ファイナルシリーズ第4戦フランス大会の初日です。さっそく行ってきました。スポーツはどれもそうだと思いますが、やはり生でみると迫力が違います。テレビでは見て取れない、演技の質感も伝わってくるようで、素人の私でもかなり楽しめます。

日本だとこのファイナルシリーズはたしか、朝日かなにかで放映されるほど人気ですが、会場はガラガラ。自由席なのに、妻と私でかなり前の方の席で楽しむことができました。そもそものフィギアスケートの国民的人気のレベルも違うということもあるかもしれませんが、こちらにきて思うのは日本は、興味の対象がかなり集中化しているということ。日本だとチケットが数時間で売り切れ、とかそういうのが常ですが、こちらだと、よほどのことがない限り、ほしいと思ったチケットは手に入るような感覚です。

さてさて、われわれ日本人の期待は、なんといっても、浅田真央でしょう。浅田真央がリンクに登場してくると、一斉に歓声があがります。この会場にこんなに日本人がいたの!と思うくらい、いたるところで日の丸の国旗もみえました。期待は募るものの、浅田真央、はじめのジャンプがうまくいかず・・・。その後も、その失敗を精神的に引っ張ったのか、なぜか演技にきれがなく終了。しかし、それでもSPで堂々の二位ですから、明日のフリーで頑張れば十分に優勝は射程範囲内です。



それにしても、浅田真央に限らず、フランスのジュベールなどの超大物スケーターもミスを連発していて、やはり「本番」に向けたコントロールはなんとも難しいものだと感じさせられます。

明日もこのファイナルシリーズ、見に行く予定なので、果たして最終結果どうなるか、しっかりと見届けたいと思います!

2008年11月9日日曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その2

ロンドンは、すっかり寒くなってきました。こちらの紅葉も見事なものです。ロンドンは公園や広場が数多くあるので、そしてその伝統を大切にしているせいか、大木がたくさんあり、その黄色や紅に染まっている様はなんとも美しいものがあると思います。私のフラットの前の公園にも大木が幾本も並び、まるで紅葉の壁のようになっています。ここ最近は、その葉も相当と落ちて、木枯らしを感じさせる今日この頃です。

さて、前回書きかけになっていた、「ロジカルシンキングより大切なこと」の続きです。

問題解決といえば、ロジカル・シンキングなのです。しかし、実はその前に、こうなっていそう!とか、これが解決策なのではないか!という、筋のいい直観が出せなていないかぎり、ロジカル・シンキングもとても空しいものになってしまうというお話でした。実際、私も、ときどき採用面接で、インタビューイーがしきりに、ただひたすらに、ロジカルに細かく問題を分解していった果てに、何も出てこないというのも何度も経験しました。

で、前回書いたのが、以下の3つでした。

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。

こう書くと、当たり前すぎるのですが、どれも、個人的には、超!奥が深いと思っています。まず一つ目は情報収集プランです。

なぜ大事かというと、人間というのは、与えられた情報で、ひとつの世界観を作ってしまうから、です。その世界観でしか思考ができないという当たり前の事実を無視できません。たとえば、こないだ倫理の授業で習ったように、人間というのは、いとも簡単に組織文化に染まってしまう。組織内で受け取る様々なデータや情報をもとに、人間は、組織文化というひとつの世界観を作ってしまうのは周知のとおりだと思います。

社会に憤りを感じていた野心的な若者が、フォードという大企業に入り、瞬く間にそのOrganizational Contextの中でしか考えられなくなり、人の死も、「コスト」に換算し、本来回収すべき車種を回収できなかったわけです。

ですので、ある問題を解決しようとするときに、どのような情報のインプットをするか、これが極めて大事なのです。情報のインプットこそが、私のようなコンサルタントには、ひとつ、大事な差別化要因になっているわけです。クライアントには出すのが難しいバリューは、じつはここから生まれてくると思うのです。

なぜでしょうか?

それは、クライントがおおよそ、偏った情報のインプットをもとに、偏った世界観を形成し、その中で解決策を考えようとしているからです。

したがって、その偏りをきちんと、見抜いてあげて、よりバランスのとれた情報を集めるのがコツ。たとえば、

<領域の拡大>

・ある組織だけでなく、組織横断的に情報収集
(例)マーケティング立案だったしても、技術部、営業、総務部などからもきちんと話を聞く

・組織階層の一部だけでなく、上から下まで情報収集
(例)マーケティング本部長だけの話を聞くのでなく、現場の人にもきちんと話を聞く

・顧客層を拡大して情報収集
(例)じつは、クライアントは、自分の顧客を知らないことが多い。今までよりもスコープを広げて、マーケティング調査や、グループ・インタビューを実施する

・有識者・エキスパートから情報収集
(例)海外のエキスパートにヒアリング

<深さの拡大>

・社員の行動を詳細に調査
(例)業務改善プロジェクトであれば、業務執行者に1日べったり張り付いて行動を観察する

・顧客の行動・言動を詳細に調査
(例)クライントは意外と競合の顧客を知らないもの。競合のサービスを使っている人をみつけて、2,3時間徹底的に、なぜクライアントのサービスを使わないのかなどを徹底的にヒアリング

などなど、あげればきりがないのですが、要するに、バランスよく情報収集を行い、より適切な世界観を自分の頭に作る努力をするのが大事だと思います。そして、みんなの情報インプットの偏りに気づくことも重要です。

人間は、断片的な情報から、勝手にある世界を作り上げてしまうのだから、それを逆に利用してあげるのです。正しい世界観から、問題を俯瞰すれば、問題の真因や、解決策はとても簡単に思いつくことができるはずです。

クライント企業の人々が頭に描いている世界観とは違う、よりバランスのとれた世界観さえ、自分の中にもてれば、これはしめたものだと思います。

他人と差別化できるような、情報のインプットを設計するのが、いい仮説を思いつくひとつの方法だと思います。気づいたら長くなってしまいましたので、2番目の「素直に考える」はまた今度、書きたいと思います。

2008年11月7日金曜日

ロジカルシンキングより大切なこと

Strategic Problem Solving。数回程度の軽いセッションなのですが、いわゆる日本でもはやっている(はやった?)ロジカルシンキングの授業があります。教授のレクチャーに加えて、Boston Consulting Groupのコンサルタントもゲストスピーカーがきたりと、そんな科目。いわゆる、ロジックツリーやイシューツリー、論点設定、仮説設定、仮説検証、データ収集などなど、そんなもろもろのことを扱います。どうやら、LBSの学生は、この手の思考が弱いとの指摘をリクルーターから受けているそうで、この科目を導入したようです。ロジカルシンキングが弱いのは日本人だけではないようです。


仕事柄、ロジカルシンキングはよく使うのですが、これけっこう誤解があるのではないかと、授業を聴きながらふと思いました。というのは、ロジカルシンキングは、「ロジカルに考えれば、いい答えが出る」と誤解されているように思うのです。


語弊を恐れずにいえば、ロジカルに考えたから答えが出るというよりは、なんとなくこういう答えがあるので、それを上手に説明伝えるための武器として、ロジカルシンキングがあるように思うのです。なんというのでしょう、ロジックが先にくるのではなくて、直観、なんかこうなっていそう、思い、そういうのが先にあるような気がするのです。


たとえば、MECE(もれなくだぶりなく)に問題を分解すべし、というのがありますが、もれなくだぶりなく、物事を切る方法は、ごまんとありえます。日本人は、男女でもきれるし、年代別にでもきれるし、地域別、所得別、などなどなんでもありえます。ではどのような軸で、きればいいのでしょうか?それは、たとえば、「低所得層の購買が増えているかもしれない」というなんとなく直観があるからこそ、そうか、所得別に分解してみようという考えてが出てくるのではないでしょうか。意味のない分解は、何の役にも立ちません。


では、どうやったら、こうなっていそう!という、筋のいい直観を出せるようになるのでしょうか?思うに、ひとつには、バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。そして、素直に考えること。もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。(続く)

2008年11月5日水曜日

Partners' Club パートナーの活動の場

Partners' Clubも立派なひとつのLBSのクラブでして、各種言語の教室や、小旅行の企画などを催しています。

 


毎週水曜日18:00から19:00まで、妻はPartners' Clubの英会話教室に通っています。LBSのセミナールームで行われるので、その間、私は子供と一緒に学校で遊んでいるわけです。学校のガーデンがすごく好きで、毎週きゃっきゃいいながら、走り回っています。困ったことに、最近は日が暮れるのが早く、だんだんと外で遊べなくなってきたこと。そうすると、子供と二人で、校舎を探検です。

今週の日曜日は、Partners' Club主催のBath旅行に行ってこようと思っています。
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2008年11月4日火曜日

ダイヤモンドは永遠の輝き~人工的に生み出されたその価値~



よく見慣れているこのこの手のCM。ダイヤモンドにまつわる素朴な疑問をいくつか。


なぜダイヤモンドは希少なのか?

ダイヤモンドの流通の70%から80%を握るDe Beer社が供給量を制限しているからなのです。じつは、南アフリカに大量にダイヤモンド原石が眠っています。

なぜ値段が高いのか?

供給量が減れば、価格は上がります。経済学のシンプルな法則によるものです。

なぜダイヤモンドは永遠の輝きなのか?

DeBeer社がそうマーケティングしているから。古今東西を問わず、ダイヤモンドといえば、”Diamonds are forever”。

価格が下落するリスクとして、中古ダイヤモンド市場が生まれてしまうこと。これを防ぐには、ダイヤモンドを購入したならば、一生もってもらわなければいけないわけです。だから、Foreverなのです。だから、婚約者に売るのです。見事なマーケティング戦略です。


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じつは、このDe Deers社、今日の経済学のクラスで使用したケースです。経済学で学ぶ、あの大胆なセオリーを戦略に応用しているという意味で、とても面白いケースです。日本のような成熟社会に長くいると、どうしても競合からシェアをとろうとか、商品を改良しようとか、きわめてミクロな視点に陥りがちです。しかし、マーケットに働いているもっとマクロなメカニズムを使って、企業の経営戦略を立案していく視点がもっともっとあっていいのではないかと気づかせてくれます。

しかし、ダイヤモンド関連のビジネスにかかわっていた学生によると、De Beers社のこの壮大な仕組みも今の金融危機で、これまた危機に瀕しているとのことです。じつは、De Beer社が、複数のダイヤモンドサプライヤーに統制を利かせているわけなのですが、昨今のようにキャッシュが不足してくると、サプライヤーの中にはキャッシュほしさに統制を無視してダイヤモンドを市場に流すようになるわけです。そうすると、ダイヤモンドは一気に価格が下落し、希少で高価だから買うというダイヤモンドの価値が損なわれるというわけです。私たちは、ダイヤモンドの次に変わる、新しい「石」を見つけなければなりません!

2008年10月31日金曜日

危機の終わりは、ちょっと楽観視?

相変わらず、連日のように金融危機に関するニュースが飛び交っています。最近は、個別銀行の破たんや救済、大手企業のリストラ、さらには、小国家の危機といったように、危機が至る所に連鎖、波及しています。アメリカの自動車ビッグ3は火の車だし、BP、ペプシなど名だたる企業もリストラの発表を次々としています。そして、ここロンドンではポンドの通貨が急速に弱くなりました。その半端でない方を身をもって体験しています。私が、数ヶ月前に日本から来たときは、1ポンド220円ほどでしたが、先週の金曜日には、いっとき140円まで、ストーンとおっこって行きました。ロンドンはバブル気味でしたから、ざーっとお金が抜けた感じでしょうか。

これだけ悪材料が出そろうと、もうそろそろ勘弁してよ、という気にもなってくるわけで、こちらの人たちは、そろそろこの危機も終わりつつあるのではないか、といった論調が時々聞きます。LBSの友人も、今が「ボトム」だから、株を突っ込んだよ、と言っていたし、LBSの経済学の教授もこんなコメントをしていました。たしか、「今は、The beginning of the end of the crisis」なのだとか。なんとも回りくどい言い方ですが、日本流にいえば、「下げ止まりつつある」ということでしょうか。投資銀行の人と話しても、「君らが卒業しているころにはよくなっているかも」といった声も聞こえてきます。感情的なところも多分にあって、もうこんなに悪いんだから、さすがにこれ以上悪くならないでしょ、というかんじでしょうか。

先のLBSの教授の話によると、日本も似たような問題を経験したが、日本は対応が後手後手になったのが問題だ、竹中大臣が資本注入、不良債権処理に踏み切ってからはすぐに問題は改善したとのこと。日本の状況に比べると、米国もヨーロッパもすぐに対応したので、この点、回復はもっと早いだろう、といったコメントをされていました。でも、これ、ほんとうかと。

その竹中さん、Financial Timesのインタビューで、竹中平蔵氏は、資本注入して、危機を脱出するのに4年かかったと言っています。
http://www.ft.com/cms/s/893ac9c8-757e-11dc-b7cb-0000779fd2ac.htm?_i_referralObject=905563191&fromSearch=n
実際、日本では、1990年代後半に資本注入をし、一時期的に日経平均はあがったものの、本格的に上昇をはじめたのは、2003年とかそんな時期だったと思います。竹中さんのいうところによると、資本注入しても、それは一時的な注入であって、実は、悪い資産はそれ以上に潜んでいて、危機の初期にはそれがわからないんだ、という趣旨でした。確かに、日本でも、政府発表があるたびに、不良資産の金額が雪だるま式に膨れ上がっていた時期がありましたね。さらに悪いことに、今回の金融危機の発端は、日本でいう単純な不良債権‐貸したものが返ってこない-ではなく、より高度な技術を駆使した不良債権なので、資産評価がもっと困難なのではないか、ということでした。

というわけでして、楽観論を展開したい気持ちはすごくわかる一方、われわれの今経験しているCrisisは、まだまだ続きそうです。

2008年10月30日木曜日

統計的仮説検定廃止論

理系の人であれば必ず習うものに、統計的仮説検定なるものがあります。何らかの仮説に対して、白黒をつけるための統計的な方法論です。もうそろそろお役目御免なのではないかと思っています。じつは、最近また「Business Statistics」という授業で、仮説検定やら回帰分析やらを一通りレビューして、やっぱり、仮説検定は使いづらいと思うのです。

その昔、今のMBAに入学する前、工学系の大学院にいた頃は、企業やベンチャー企業と協働で、データマイニングといった大規模なデータ解析をしていた頃もそんな問題意識をもっていたのをふと思い出します。

なぜそう思うのかというと、まず、第一に、ロジックが分かりにくい、ということです。たとえば、ある集団の平均年齢に関する仮説を議論しているとしましょう。統計的仮説検定では、こういう問題意識をもつことが出発点になります。

「平均年齢は25歳ではないのではないか?」

その問題意識のもと、仮に真実の平均年齢が25歳だとして、今手元にあるデータと照らし合わせ、どれだけありえそうかという確率を計算しにいくのです。もし、その確率が低ければ、

「平均年齢は25歳ではない」

という結論が得られることになります。

逆に、もし、その確率があまり低くなければ、「平均年齢は25歳ではないとはいえない」という何とも歯切れの悪い結論になるわけです。

これが仮説検定の論法なのですが、なんというか、わかりにくくありません?

もうひとつ、この論法には、弱点、もっといえば、致命的な欠陥があるのです。上の議論で、真実の平均年齢が25歳だとするという前提を置いているわけですが、この前提が正しいことはほとんどありえません、というかありえないでしょう。真実の平均年齢がぴったり、寸分たがわず、25.000000000000000000000000000000000000000000....になるなんてほとんど、もっと強くいえば絶対にないからです。

ですので、そもそも絶対に正しくない仮説をおいて、それが正しい、正しくないを判断しにいくというなんとも、ロジックが破たんしている議論をすることになるわけです。実際、統計のデータ分析で、サンプル数をあげていけば、すなわち、精度をあげていけば、必ず、「平均年齢は25歳ではない」という結論が得られるようになります。

そもそも、この仮説検定の枠組みが構築されたのは、コンピュータもない、ただただ手計算でデータ処理をする時代にうまれたもの。サンプル数もたかだ20-30個の時代の理論ということを考えれば、やはり時代錯誤的な論法ということになるでしょう。今ですと、サンプル数が平気で数千、数万、もっと多い場合もざらにありますから。

ではどうすればいいのか?

統計には、仮説検定論とは別に、推定論というのがあります。私は、仮説検定はさっさとやめてしまって、その中の区間推定だけでいいのではないかと思っています。区間推定とは、手元にあるデータからすると、「95%の確度で、平均年齢は、24歳~26歳の間にあるといえます」、という主張を導き出す方法です。こちらの方が100倍素直な感じがすると思いますし、ビジネスにも応用がききやすいと思います。

そうはいっても、統計的仮説検定は、今でも世界中の大学で教えられているし、MBAのような学位でも、必ず教えられる、まさにユニバーサルな方法論になっているので、なんとも不思議な感じがします。

要は、統計の理論が構築されたころに比べて、データの入手方法、分析の方法、解析の方法もろもろが変化し、結果として、ビジネスからの要請も大きく様変わりしている中、アカデミックサイドがこたえ切れていない、ひとつの学問分野だと思っています。

2008年10月29日水曜日

コンサル流スライドを書くコツ

コンサルティングのひとつの仕事に報告書というスライド書きがあります。最近は、プレゼンしておしまい、というプロジェクトも減ってきたので、相対的にスライドを書く重要性が薄れている昨今ですが、とはいえ、顧客にメッセージを伝える大事な手段であることは間違いがありません。

よく同僚と話していたのですが、よいスライドとは、「パッと力」のあること。そのスライドを見た瞬間に、パッと衝撃的にわかるというもの。

じつは、いいスライドを書くのは、コンサルタントにとってひとつの壁になります。簡単そうにみえて、奥が深く、はじめのうちは私もとても苦労したのを思い出します。

会社の同僚にスライドを書くときにどういうことに気をつけていますか?と聞かれたので、思いつくままに考えてみました。


1.スライドの「型」を覚える

要はスライドのパターンを覚えるということです。それは1枚のスライドの構成でもそうですし、ストーリーラインの型でもそうです。

実はこの「型」を知っていないと、いいスライドを作るのは難しいと思います。この「型」をたくさん覚えておくことで、必要に応じて「引き出し」てこれるようになります。ゼロベース思考に惑わされて、全部一から作ろうとすると大変です。

なので、いいスライドはすべて学びの対象です。深く考えず、丸ごと覚えておきましょう!そのとき、見るポイントは、どういう「型」を使っているか?です。そういう視点で他のプロジェクト、他のパートのスライドをどんどん見つめましょう。スライドの「型」をどんどん頭に蓄積させていく感じでしょうか。

2.スライドの縦と横の「意味」を明確にする

スライドは紙(もしくはスクリーン)ですので、結局2次元でしか表現できません。「縦」と「横」があるのですが、このそれぞれに明確な「意味」を持たせると、いいスライドができると思います。

田の字のスライドは、まさに明確に「縦」と「横」軸に意味をもたせています。これと同じで、他のパターンのスライドでも同じです。仮にテキストだけのスライドでもです。たとえば、スライドの左側に現状についての記述、右側に将来についての記述をしたとしたら、横軸は、時間軸なわけです。縦軸についても何らか意味をもたせるといいと思います。たとえば、それぞれのテキストを、ビジョン、戦略、アクションの順に書くとしたら、それは立派な軸になります。

スライドは2次元でしか表現できないので、スライド書きは、骨太な二つの軸を選ぶという作業といえるかもしれません。それ以上の次元のハナシを無理につめようとすると、わかりにくいスライドになってきます。

3.スライドのイメージで思考する

スライドのイメージを常にもって思考すると効率的です。仮にプロジェクトの初期段階であっても、スライドのストーリーライン、中身、構成についてイメージしておく。で、頭の中で(もちろん紙に書き出しておくと効果的です)、どんどん進化させていくわけです。

インタビューをしているとき、記事検索をしているとき、クライアントや社内でディスカッションをしているとき、どんなときでも、自分のスライドイメージのどこを改良できるのか、どのファクトがどのスライドにいかせるのかを考え続けましょう。

で、さあ実際にスライドを「書くぞ!」という段階には、だいたいもう頭の中にあるものを「はき出す」だけ、という状況がとても理想的です。時間の圧倒的な節約になると思います。

そして、一回書いたあとでも、一晩くらい寝かせて、またみてみると、さらに改良点がみつかると思います!一発で、いいスライドはかけません。色々と練り直して、進化させ続けていいものができます。

結局、コンサルのアウトプットのひとつがスライドなので、それベースに思考を合わせていくといいと思います。頭にスライドという「絵」を常に思い浮かべることになるので、右脳が鍛えられるとという副産物もあります。

雪降るロンドン

 
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先週で夏時間が終わり、すっかりと日が暮れるのが早くなったロンドン。17時に授業が終わるころには、すでに薄暗く、コートをしっかりと着てちょうどいい気候。

今日の帰りは、とくに寒いなぁと思っていたら、雪が舞い降りてくるではないですか!1時間もしないうちに、雨に変わりましたが、こんなにも早く雪に出会うとは驚きです。

だんだんと「ロンドンらしさ」が増してきた今日この頃の天気です。

2008年10月28日火曜日

入学審査官が語るLBSの入り方



Youtubeより。LBSの入学審査の統括リーダーが語る、出願のポイント。ややありきたりの内容ですが、いくつかしゃべっていたことをあげると、

 ● 自分自身を語ること
 ● 試験を通ることだけが学校ではない―勉強以外のクラブなどでいかに貢献できるかが大事
 ● グローバルな環境に身をおきたいという思いがあるかどうか

海外の大学院の場合、日本と異なり、エッセイと呼ばれる小論文がカギを握ります。そして、あなたの「物語」を文字につづり、入学審査官の心をとらえる必要があるのです。

よく差別化が大事とか、大量にいる出願者から目立つようなことを書かなきゃだめとか、自分自身をマーケティングをしなければいけないとか、そんな出願アドバイスを多く聞きます。それも一理あるでしょう。

だけど、差別化するといって、本当にできるのでしょうか?他の出願者が見えない中で、どう差別化するのでしょうか?目立つことを書く?何が目立つことなのでしょうか?この手のアドバイスはそれなりに正しいのですが、私はもう少しシンプルに考えたいと思います。

大事なのは、自分自身をさらけ出し、それを文字にしていくプロセスを楽しんでいくことだと思います。エッセイの執筆を楽しんでいるということは、それは自分自身であることの証左だと思うのです。ウソを書くのが楽しいとは思わないでしょうから。

自分自身をさらけ出したその物語こそが、入学審査官に響くのではないでしょうか?ノンフィクションの力を信じましょう。それに、こちらの方が、結局自分のこと「だけ」に収集して書けばいいので、楽です。差別化などと考えていると、他人がどうとかこうとか、考えないといけないですから。

私も、エッセイを書くのははじめはかったるかったですが、途中から、自分自身を素材にして物語を書くようで、それは、とても面白い経験でした。