2008年11月29日土曜日

ネット世代の試験対策

最近は、もうすっかり期末試験のシーズン。このはじめのAutumn Termも終わりが近づきつつあると思うと、改めてTime fliesと感じずにはいられません。時間が経つのは早いものです。お世話になって卒業生に一人が、「一瞬一瞬を大事にして!」と言っていましたが、まさにそうなのだろうと思います。

こうした学校のレポートや試験対策には、インターネットが大活躍しているようです。今の学生世代は、まさに空気のようにインターネットを使いこなしている世代ですから、当然といえば、当然です。われわれの学生の間でも、試験前になると、過去問やその解説、クラスのポイントをまとめた資料などが、メールを通じて飛び交っています。

こうしたのはまだまだ原始的な手口であって、先日のBusiness Weekによると、各学校、教授、クラスの、過去問、クラスノートの情報共有サイトがここ数年で急速に伸びているという記事がありました。今まで物理的に行っていたモノを、ネットの世界に載せることで飛躍的に共有を効率化するという、とても簡単なアイディアですが、誰にもとめることのできないトレンドです。ここに紹介されてあるものとして、以下のようなものがあります。

過去問の共有サイト(PostYourTest.com, Exams101.com)
授業のノート共有サイト (NoteCentric.com)
study guides (HowIGotAnA.com)
上記の全部 (CourseHero.com).

その他にも、Business Weekには載っていないですが、よくあるレポート課題のレポートサンプルの共有サイトや、レポートの代筆、添削など、なんでもありの状況になってきています。レポートの代筆や、添削は、インドの比較的低賃金だけど、高学歴な学生を雇えば、安くできるというわけです。

こうしたサイトに対して、学校の先生、教授陣は、憤慨しているようですが、なんと時代遅れな対応をしているのかと、思わずにはいられません。試験問題の共有は、知的財産法の侵害にあたるとして、その違法性を主張したりと、あの手この手で、このサイトをなくそうとしているようですが、「音楽配信」「動画共有」などと同じで、この手のトレンドは、「止めることのできない」トレンドです。いくら阻害しようとしても、大きな力の前にはただただひれ伏すしかないわけです。

問題あるところにビジネスあり。たとえば、レポートのコピー・アンド・ペーストを摘出するソフトウェアで、Turnitin(http://turnitin.com/static/index.html)があります。大学、高校などの教育機関では、スタンダードになっているソフトウェアのようです。学生から提出されたレポートを、このソフトウェアにかけると、「カット・アンド・ペースト度」を算出するというすぐれもの。ネット上の文書などありとあらゆるテキストとの照合をかけることによって、学生が既存の文書をコピーしていないか、アイディアを盗んでいないかを検出するわけです。

アイディアの盗用に関しては、ある種の「倫理的な」問題が伴うので、別の議論が必要ですが、過去問、過去のノート、スタディガイドの共有に関しては、Business Weekで発言しているある教授のコメントは的を得ていると思います。「われわれが、もう少し努力をすればいいだけ」。そうなのです、たとえば単純なハナシですが、新しい問題をつくればいいわけです。

昨日あったStrategyの試験は、朝の9:00にメールで試験が配信されて、その日の12:00に返信すべし、というもの。ネイティブも時間いっぱいかかるという、なかなかライティングヘビーな試験です。この試験の場合は、そもそも何でももちこみOKです。やろうと思えば、クラスメイトとも相談もできますが、時間的なタイトなので、なかなか他人をサポートしている余裕もないわけです。とはいえ、こうした状況下でも、他人の力を借りられる人は、それも立派な実力でしょう。

また、日本のビジネス・ブレークスルー大学院のテストでは、授業によっては、学生の中間レポートに応じて、学生の問題をすべて変えているそうですから、これもまた、イノベーティブなやり方です。

インターネット世代である学生には、従来のもぐらたたきのアプローチではない、インターネット時代にふさわしい対応策が必要、でも学校側が、非インターネット世代なのがなやましいところです。

2008年11月26日水曜日

ブレーンストーミングには批判も必要!?

Wikipediaによると、

「ブレーンストーミングとは、少数の集団で自由に意見を出し合い、あるテーマに関する多様な意見を抽出する技法のことである。質より量を重視し、お互いの意見に批判をせず、自由に意見を出し合うことで、周辺知識を列挙することができる」

ここでのポイントは、お互いの意見を批判しないです。こういうことは、おそらくビジネスパーソンの間では周知の事実でしょう。

しかし、最近の研究によると、じつは、そうしたお互いを批判しないというルール自体が、自由な発想を阻害するのだそうです。むしろ、批判を恐れずに議論をしあうことでより創造的なアイディアを引き出し、結果的に実りのあるブレーンストーミングになるというのです。

批判をしないというルールそのものが、頭の思考をどこかで縛ってしまうということなのでしょう。何となく分かる気がします。そして、自分がアイディアに対して、相手がチャレンジしてきたら、やはりぐっと一段と深く考えますから、そこからより一歩クリエイティブなアイディアが出てくるというわけですね。自分の経験と照らし合わせても分かる気がします。

ここで大事なのは、何の束縛もなく、意見を言い合うというのが、ブレストのそもそもの意味だったはず。それが、いつの間にか、相手を批判してはいけないという盲目的なルールに昨今なってしまった、というのは大きな気づきです。

そして、自分の意見を批判されても、それはその人が批判されているのではなく、その意見がチャレンジされているという感覚をきちんと持ち合わせることが、私たちに必要になってくると思います。ここの精神構造の変革なくして、ただ批判OKとしてしまっても日本企業ではおそらく昨日しないのだと思います。

<以下、研究結果の概要について-LBSポータルサイトより>
New research from Professor Charlan Nemeth finds that setting rules in brainstorming can impair creativity
‘Don't criticise anyone's ideas' is a typical rule of brainstorming sessions, but new research from Charlan Nemeth, Visiting Professor of Organisational Behaviour at London Business School reveals that such instructions can actually make people less creative.
While discussing ideas without fear of criticism is intended to encourage people to share creative ideas, research suggests that criticism and debate are in fact liberating and stimulating for creative thought and thus lead to creative outcomes from brainstorming.
Charlan Nemeth, Visiting Professor of Organisational Behaviour at London Business School, has previously documented the value of debate, even criticism, for creativity in a study conducted both in France and in the United States. In this more recent study, she explored whether it was lack of criticism that impaired creativity, or the setting of rules. Charlan predicted that when participants were given suggestions, not rules, they would produce more creative ideas, particularly when encouraged to criticise freely.
Charlan and her co-authors found that giving participants rules produced less creative outcomes than giving suggestions. Whether criticism was allowed or not had less of an impact than the way in which this guidance was delivered.
This research suggests that imposing rules on creative processes produces effects of conformity and convention that are not conducive to creativity. People are less likely to play, to come up with the "wild" ideas, that are part of the creative process when they are trying to follow rules, regardless of how well meaning those rules may be. Having rules to remember and consciously follow may also distract people from creative thinking.
The research, ‘The "rules" of brainstorming: an impediment to creative thought', was funded by the Institute for Research on Labor and Employment at University of California Berkeley which has supported Charlan's previous research on the liberating role of conflict in group creativity.
Created on 19 Nov 2008

2008年11月23日日曜日

Case Competition

欧州のUndergraduates、MBAのリクルーティングのために、うちの会社の東京オフィスメンバーが、やってきました。私もロンドン丁度ロンドンにいるので、昨日の夜と今朝とインタビューなど、お手伝いをしました。こちらの学部生や他の学校のMBAと交流できたりしたのは、新鮮でなかなか楽しかったです。

その後、午後は、Case Competitionのための初会合のために、学校に移動。Case Competitionとは、ある会社の実際のケースにもとづいて、その会社への提言を3,4人のチームでまとめ、それらをチーム間で競うというものです。今回は、シンガポールのNUS Business Schoolが主催するCompetitionでBest World Internationalという、化粧品などをマルチ商法で販売するシンガポール企業への提案になります。Best World InternationalがこのCompetitionをスポンサーしています。

こうしたCompetitionはビジネス・スクールにはたくさんあります。こうした既存の企業への提案をするケースもあるし、ビジネスの起業プランを競うものもあるし、さまざまなものがありますので、学生は自分の趣向に合わせて、どれに参加するか選んでいくことになります。

こうしたCompetitionは、また世界に新しい友人を作り、とても良い機会だと思っています。今回のチームは、元気のいい中国系アメリカ人エド、ドイツとUSのハーフのトーマス、シンガポールのイーホン、そして私の4人。必修科目(Core科目)を一緒に取り組むStudy Groupと違ったメンバーと作業を進めるのも新鮮です。

一方、SponsorであるBest World Internationalにしてみれば、そんなに大きくないこの会社にとって、こうした企画をスポンサーすることによって、世界中のビジネススクールに通っている学生に名前が知り渡るのは大きな宣伝効果になります。また、何十チームと、スポンサー企業への提言を考えてもらえるわけですから、安いコンサルティングフィーだと思えば、とても費用対効果は高いモノでしょう。質の悪いコンサルティング会社を1社頼むよりも、はるかにいいかもしれません。

一方で、主催社であるNUS Business Schoolにとっても、NUSのロゴが入ったケースをみなが読みますから、これも、世界中のリーダー候補へNUSの名前をとどろかせるのにとても効果的なわけです。私も、このCompetitionの前には、この学校の名前をよく知らなかったことからも、認知をあげるという意味で、効果があるということでしょう。

さてこのケースの主人公である、Best World Internationalとは、こんな会社です。

Best World specializes in the development of health and wellness
products that are distributed through its proprietary direct selling
channels. Founded in 1990 to provide quality products to enhance
lives, Best World has since evolved into one of the leading
companies in the health and wellness industry. Today, Best World
has a healthy presence in Australia, Brunei, China, Hong Kong,
Indonesia, Malaysia, Taiwan, Thailand and Vietnam – even as it
continues to expand outside the Asia-Pacific region.

お題は、「今後のさらなるアジアマーケットの拡大に向けて、どのような打ち手を展開すればいいか?」です。どの国にエントリーして、どのような顧客に、どのような商品を、どのように届けるのか? 業界がMulti-Marketing(いわゆるマルチ商法)なだけに、通常のマーケティングに少しヒネリを加えて考える必要がありそうで、面白そうです。たとえば、この商売は、どうしても「うささんくささ」、社会的な許容度が大いに関係するので、その国の文化と大いに関係があったりするわけです。そんな視点も踏まえた上での提案が求められるます。どなたか、いいアイディアがありましたら、教えてください。Straight Forwardにマーケティングプランを書いてもつまらないので、競争のルールを変えるような提案をしようとハナシをしています。

このケースの中でビックリさせられるのが、日本のMulti-Marketing Businessのマーケットサイズ。アムウェイなどを輩出しているアメリカにおけるマーケットサイズは、29.5 Billion ドルなのに対して、なんと27.3 Billionドルもあるのです!!ほぼ、アメリカと変らない大きさが日本にはあるのです。その次は、ドーンと離れて、Koreaの8.03 Billionです。そして、Taiwan 1.56、Malaysia 1.26と続くわけです。はっきりいって、アジア=日本のようなものです。-この会社は日本には参入していません。日本への参入への是非は大きな論点になるでしょう。

ところで、SNSのようなネット上のネットワークを使って、販売できないかを考えたいと思います。そして、上記のようなビジネスは、どうしても高価で(だからこそ原価率を低くできて儲かるわけですが)、それ故にアッパーセグメント、30歳以上を狙うのが通例なのですが、ここはぐーっとプライシングを下げて、ネットと親和性の高い若い世代にも変えるような商品を投入して、SNSのネットワークに乗せて売ることはできないものでしょうか。マルチ商法のピラミッド階層を、ネット上で実現するようなイメージ。もう少し議論する必要がありそうです....

“パスタ”がしみじみとおいしい

日本で食べる熱々の「釜揚げうどん」がおいしいように、「素パスタ」がとても気に入っています。作り方はとてもカンタン。

たっぷりと張った水に、多めかなと思うくらい塩をドバっと入れて、パスタをゆでる。10分ゆでたら、さっと熱湯をきり、そのまま皿にパスタをのせる。あとは、オリーブオイルをたっぷりとパスタに絡ませて、仕上げはパルメザンチーズをどっさりとかける。「素パスタ」の一丁上がり。

まだ熱いうちにパスタを頬張ると、パルメザンの塩気と、オリーブオイルの豊かな風味、それからパスタの少し堅めの歯ごたえが絶妙にマッチして、なんとも至福な気持ちになれる一瞬なのです。ペンネで作ってもとてもおいしいです。ちょっとした夜食にもってこいです。

ここロンドンにいるから、なんとなく「おいしい」が感じているのかもしれませんが、じつは、パスタもパルメザンチーズも、オリーブオイルも、日本で買うより、ほんの少しだけ質がいいのではないかと思っています。というのも、たとえば、オリーブオイルにしても、こちらのスーパーでは、ものすごい選択肢があるわけで、メーカーにしてみたら熾烈な競争にさらされているわけです。

一方、日本では、オリーブオイルがスーパーにあればいい、というくらいで、品種の多さは問われないでしょう。逆に、日本のもちもちとした「米」はやはり、こちらで買うと、日本で買うのに比べるとパワー不足を感じてしまいます。

パスタは色々の応用も、いともカンタンにできる食材でもあり、我が家の食卓に「パスタ」が登場する機会が増えている今日このごろです。

食材が少しずついいモノを使っていることで、結果的には、ある臨界点を超えて、「ああ、うまい!」と感じているのかもしれません。-強引に学びをみつけるとすれば、ほんの積み重ねが、結果的には、大きな差につながるということでしょう!

そう考えると、企業もそうで、たとえば業界内の2社を比べたときに、やっている業務や活動はそんなに変らなくても、ひとつひとつの細かいタスクレベルの仕事の精度が少しずつ違うだけで、企業の最終的な業績には大きな差がついているのはよくあることかと思います。

新世代学生の出現:B-Schoolのチャレンジ

こないだBusinessWeek恒例のビジネススクールランキングの発表がありました。めでたく1位に輝いたのは、Chicago Business Shcool。この特集を手がけた編集者のインタビューを聞いたのですが、彼らによると、今の学生は、いままでの世代とは違う、新人類世代が入ってきているんだそうです。したがって、当然違ったニーズを持ち合わせているわけで、学校側もそれへの対応が迫られているわけです。この新人類世代の特徴として、私なりの解釈をすれば、ネット世代、自己中心的、グリーン世代、個性喪失の4つ。

ネット世代:
インターネットをフル活用して育った初めてのジェネレーションがビジネススクールに着始めているという指摘。たしかに、私も高校、大学の頃からインターネットを使い始めたのを思い出すと、そうかもしれません。要は、ネットが当たり前と心から思える世代が入学してきたということです。こうした学生の新しい趣向を学校側が、十二分に対応できるかどうかがチャレンジだというのです。

たしかに、ネットの活用をもっともっと活用するチャンスは至るところにあると思っています。たとえば、今日も、教授からのメールがあり、「みんなから質問のメールが多いので、返事が遅れるかもしれないけど、ごめん」との発信がありましたが、それに対して、クラスメートが「Strategyのクラスで集団知を習ったように掲示板を使って、集団知で、質問に答え合おうよ、、」との提言。いや、たしかにそのとおりです。先生、生徒とのコミュニケーションだけでなく、生徒から知恵をひっぱってくる仕掛けをより活用する余地はあるな、と思いました。

また、オンラインでのクラスもほとんどないので、これも検討の余地ありです。今、私は、Spoken Englishという英語のスピーキングに関するコースを受けているのですが、これが唯一のオンラインの授業です。リアルキャンパスの学校であったとしても、すべてクラスで受講しなくてもいいのかもしれません。リアルとオンラインの双方の活用は、これから検討に値する面白いテーマだと思います。

自己中心的:
自己中心的な世代のようです。自分をみて、かまってくれないとイヤという世代のようです。したがって、画一的なカリキュラムを押しつけられるのがイヤな世代。ここ最近のビジネス・スクールのトレンドとして、選択科目のフレキシビリティをぐーんとあげてきているようです。たとえば、シカゴは、1年生のときから自分の関心に合わせて、バンバン選択科目をとれると聞いています。一方、LBSは、いまのところ、1年生の1学期は、100%必須科目で埋め尽くされています(笑)。このあたりの方針は学校によって大きく分かれるところです。

グリーン世代:
環境問題、エネルギー、CSR、こうしたトピックへの関心度が飛躍的に高いのがこの世代の特徴です。こうした問題を学ぶためのカリキュラム、教授、体制を整えるのがひとつのチャレンジになるとのこと。たしかに、この分野は新しいので、なかなか教授も揃えるのが難しいし、理論も確立していないので、教えるのも一筋縄ではいかないところです。いまのところ、多くのビジネス・スクールは、授業でメインに扱うというよりは、他の機関との連携や、クラブ活動などの課外活動を通して、こうしたイシューを学んでもらおうと考えているようです。

個性喪失:
じつは、一見すると個性が失われているように見えるのもこの新しい世代の特徴なのだとか。これは、ネットを駆使する世代ということ大いに関連しているでしょう。みんな瞬時に同じような情報を浴びることができるし、何か分からないことがあればネットでさっと答えをみつけて回答することができる。Googleからきたスタディグループのメンバーは、以前、ケースのディスカッションをするとき、ティーチングノート(先生用のインストラクション)をネット上で、上手に見つけていました。出願用のエッセイを書くときも、ネットで、合格者のエッセイサンプルを見つけてきて、それを加工して、出願する。さっと、正しい答えにたどりつくことはできるものの、みんな同じ情報に基づいてしまうため、書くモノに個性がなくなってしまうのです。

ビジネス・スクールのアドミッション側も、最近はどのエッセイも同じようなモノになってきてしまっているとも指摘しているとのこと。そういうこともあって、エッセイをただ文章で書かせるのではなく、パワーポイントでプレゼンをさせたり、「砂漠を車で旅するには誰をつれていきますか」といった一見奇抜な質問を出したりすることで、出願者の個性やユニークさを見いだそうとしているのでしょう。

多くの企業と同じように、顧客(=生徒)のニーズの変化にあわせて、もしくは先取りして、ビジネス・スクールもこれからどんどんと進化を続けなければならなそうです。そして、この新人類の登場は、マーケティング的に言えば、新セグメントの登場。それは、企業にとっても、チャレンジであり、ビジネスチャンスにもなり得ると思います。

2008年11月21日金曜日

不況の幕開けにどう対応する!?

まさに本格的な不況の幕開けとなりました。

The Bank of England says that the UK has entered a recession which will continue into 2009, and suggests it may cut rates further.(BBC)

金融危機の煽りをうけて、今度は、企業側が、きわめてパニック的な施策に走っています。中期的な視点を置き去りにして、経営上動かしやすい施策に走っているのに危機感を感じます。すなわち、コスト削減、その中でも人削減、もうひとつは価格の切り下げです。

最近ニュースの常套句ともなってきているのが、人員削減のニュース。その削減数を競うかのように、次々と飛び込んでくるこの手のニュース。ここ数日のBBCニュースのトピックから拾ってみます。

Sun Micro to cut up to 6,000 jobs
RBS to cut 3,000 jobs worldwide
Virgin Media plans 2,200 job cuts
Mobile phone group Vodafone announces £1bn of cost cuts
Peugeot Citroen cuts 2,700 jobs
Rolls-Royce plans 2,000 job cuts
Wolseley to shed 2,300 more jobs
JPMorgan cuts first of an expected 3,000 jobs
AstraZeneca plans 1,400 job cuts
Citigroup job cull to hit 75,000
......

とにかく、この手の何らか業績向上が見える打ち手を発表しないと、株価がもたないのでしょう。経営的な打ち手として、人削減は、善し悪しは別として、もっとも簡単にコストを落とすことができますから。

こんなニュースを連日聞いていれば、消費者意欲はあっという間になくなってしまうもの。そのために、イギリスのリテール各社は、こぞって値下げに走りまくっています。ディスカウントの連発です。たとえば、UKのスーパーで、イギリスに住んでいるヒトなら誰でも知っているマークス・アンド・スペンサーは、昨日は、全品20%引きのセールをしました。その他にも、Dorothy Perkins, Burtons, Debenhams, Selfridges や John Lewisといった小売りセクターは軒並みディスカウントをして、顧客減をなんとか食い止めようとしています。まさにカンフル剤を打って、売り上げを確保しようというわけです。

一方、その発信源になっている「金融」危機は落ち着いてきたとの見方もありますが、しかし、まだまだ火タネは残っています。US最大の銀行シティや、UKでもっとも信頼できると言われているHSBCの雲行きが怪しくなってきていることや、AIG以外の保険会社の問題が表面化してきていないのも、何か不自然です。それに、竹中さんが指摘していたように、実際の損失額は、想定より多く、追加の公的資金が必要になる可能性がきわめて高いでしょう。さらに、不良債権の処理に追われていれば、新規の貸し出しは確実に減るわけで、結果として企業側にも大いに影響されてしまいます。

構造的な長期な不況が続く、そういう前提で企業の戦略を組み立てる必要性がいまほど、求められているときはないのではないでしょうか。そして、こうした戦略を立案するにあたって、日本の不況を通して成長した企業から学ぶものが大いにあると思っています。

たとえば、吉野屋。顧客の回転率と、オペレーションの効率性を吉野屋ほど追求したファースト・フードは、ここロンドンでは見たことがありません。この手の、高回転、超低価格型のレストランは、大きなビジネスチャンスがあると思います。また同じような発想として、日本で大ブレイクしたのが、回転寿司です。こちらロンドンでも、Yo Sushiなど、回転寿司はあることにはありますが、どちらかというと、寿司が回転する、ちょっと変った、面白いレストランというポジショニングで、値段も高めなのです。日本における回転寿司のビジネスモデルのポイントは、その劇的な効率性です。通常、30%と言われる食材原価に、50%もかけていることからも、その他の販売管理費などの少なさが想像できるでしょう。ビジネス・プランでも書こうかな。

もうひとつは、やはりユニクロに代表されるような「ベーシック×高品質×低価格」、というポジショニングをとることでしょう。不況に入ってしまうと、どうしても消費者の気持ちはふさぎ込みがち。おしゃれをしようとか、派手になろうとか、そういう気持ちは起きてこないものです。日本でも、1990年後半そんな状況下で、ユニクロは、大躍進をとげたわけです。派手にはしないけど、高品質なモノにはならされているけど、お金がない、もう派手にはしなくてもいい、そんな消費者が急速に増えて、ユニクロの提供価値がそこにぴたっとはまったわけです。そういった意味で、「ベーシック×高品質×低価格」なポジショニングをするような企業はいいのではないでしょうか。

先日、アクセンチュアのパートナーの話しを聞く機会があったのですが、彼女も、いまは消費者は、ありとあらゆるもので、"trading down"している、すなわち、格を落としてモノを消費しているといいます。実際、スターバックスは急激に業績をおとして、マックは業績好調ことからも分かるように、明確な消費のシフトが起きているわけです。

小手先の経営施策で、一時しのぎの利益確保に走るよりは、日本の事例を参考にしながら、ビジネスモデルやポジショニングを見直す絶好のチャンスでもあるように思います。そして、上記のようなビジネスモデルやポジショニングは、仮に景気が回復したとしても、ダメになることはありません。不況でも好況でも、ツヨイのです。

2008年11月19日水曜日

ロンドンの物価は高いのか?

最近は、ロンドンの為替が極端に弱くなったこともあって、少しはロンドンの物価も落ち着いてきているのではないかと思いますが、とはいえ、日本からの旅行者は、ロンドンの物価は高い!と口を揃えていいます。そうなんです、実際に高いのです。私も、日本からこちらに数ヶ月前にきて、この物価の高さの前に、本当に日本の国力も落ちてきたなあとしみじみ思いました。



たとえば、ちょっとしたサンドイッチは、500円以上します。日本で食べれば、まずは1000円いかないようなパスタが、こちらでは2000円くらい。ちょっと寿司の入った日本食の弁当でも買おうものなら、まず1500円は見ておいた方がいいでしょう。とにかく高い感じがするのです。

とはいえ、実際に物価に関する統計をみると、意外や意外。都市別生計費指数では、ロンドが106なのに対して、東京は124!なんと、東京の方が統計上は、高いことになっているのです。ちなみに、東京よりさらに、生計費指数が高いのは、モスクワです。今や、モスクワが世界でもっとも物価が高い都市になっています。

いったい、どうなっているのでしょうか?



数ヶ月ここに暮らして、その理由が少し分かってきました。じつは、ロンドンは、食料品日用品が日本に比べて、とても安い。たとえば、うちは、Waitroseというスーパーで、食料品、日用品を買っていますが、このWaitroseはいわゆる、高級スーパーの部類に属するようです。そこでの値段をみてみると、





食パン(日本の食パンの2倍くらい入っていて) 0.45ポンド
クッキー1箱 0.37ポンド
ミネラルウォーター 2L 0.44ポンド
コーンフレーク(日本の2倍くらいの箱) 1ポンド


という感じです。今は1ポンド=150円、ちょっと前までのレートである1ポンド=220円としても、日常品が安いことが分かります。主食になり得る、豆類や、パスタ関連もかなり安いと思います。妻に野菜や肉の値段も聞いても、日本と変らないか、安いくらいだと言っています。

もうひとつ、特筆すべきなのは、こうした日用食料品が、おいしいということでしょうか。にんじん、タマネギ、じゃがいもなどは、なんだか日本よりもおいしい気がします。ここではよく食べられている鶏肉などは、変なくせがなくて、とてもおいしいです。日本で、おいしい野菜や肉は、なかなか地元のスーパーでは手に入らなかったことを考えると、とてもうれしいことです。

さて、なぜ安いのかというと、そのひとつの理由として、日用品には、17.5%の消費税がかからないことがあげられます。。また、子供服にも消費税はかかりません。だから、安いのです。一方で、日用品ではないもの、たとえば、外食であったり、エンターテイメントであったりとした贅沢品には、しっかりと税金がかかります。

こうした発想は、ヨーロッパ特有の「階級社会」からきているのではないかと思います。下級階級のヒトも贅沢さえしなければ、きちんと暮らせる仕組みをつくる、そんな思想が根底に脈々と流れている気がします。逆に、中流階級以上で、自炊の手間をおしんで、サンドイッチを買うような人は、きっちりと20%近い税金をとられるわけです。このあたりの階級に応じた税金徴収の仕組みができあがっているわけです。

一方、日本は、一億層中流な社会。たとえば、今日本で議論になっている、定額給付金のハナシも(これまた全く不毛な政策ですが)、金持ちにも不公平にならないようにとか、細かな議論が繰り広げられていることからも容易に、一億層流中的な発想がみてとれる。みんな総中流で幸せ、という見方もできるが、政府からみれば、国民全員からお金をとれるというわけで、近い将来に向けた、一律増税の布石が着々とうたれています。イギリスのような日常品を非課税にするといったそういう発想はみじんもでてこないわけです。

要は、ロンドンと東京では、ものによって物価の大小が違っていて、ならしてみると、東京の方が高いということでしょう。とくに日本からの旅行客の場合、日用品は買わず、だいたいにおいて、贅沢品だけを買ってすごすことになるので、余計に割高感を感じるのだと思います。

経営手法のイノベーションを考える

興味があるゲストスピーカーや教授の講演にはなるべく出るようにしています。今日はLBSの教授、Julian Birkinshaw氏が、自分の研究分野を簡単に紹介してくれました。Julianは、コア・コンピタンスの著者でもある、Gary Hamelとともに、Mlabという機関を設立し、まさに”M”anagement Laboratoryの文字のごとく、経営方法自体の研究をしています。その内容は面白そう。
http://www.managementlab.org/

Julianの主張は、これからは、経営方法や組織のあり方そのものが、競争優位要因になるんだ、というものです。マネジメントのやり方自体のイノベーションを考える必要がある、そこに21世紀的企業になるための、広大な機会が広がっているという主張です。たとえば、マネジメントとというと、ゴールを明確に定義して、ツリー上の組織の意志決定の仕組みを活用しながら、実行し・・・と想像しますが、本当にそれでいいの?と疑問を投げかけています。

イノベーションというと、商品であったり、技術であったり、もしくはビジネスモデルだったりします。たとえば、iPodはまさに商品のイノベーションでしょう。技術のイノベーションは、自動車、鉄道、飛行機などなど枚挙にいとまがありませんし、ビジネスモデルのイノベーションもDELLの受注生産方式は、あまりにも有名です。その中で、次のイノベーションは、経営方法そのものだ、というわけです。

たしかに、その通りで、経営自体のやり方については、冷静な考察が必要な時期にきていると思います。たとえば、MBA的なハナシでいえば、上記のゴール設定ひとつとっても、明確なそして具体的なビジョンを示す必要がある、と習うことでしょう。たしかに、ベーシックとしては正しいでしょう。しかし、そうでない例が回りを見渡せば、いくらでもみつかります。

たとえば、日本の商社。いったいビジョンは何なのか。かなり曖昧模糊としています。トヨタ。ビジョンの中に「産業に持続的な発展に貢献する」というのがある。これは明快な目ジョンなのだろうか。我がLondon Business Schoolは、Becoming the pre-eminent global business school. 全くビジョンになっていません。そうはいっても、上記の企業や組織は、きちんと業績を出しているわけです。

また、web 2.0的な、集団知を活用する、技術的なプラットフォームも整ってきていますので、こうしたものを存分に活用した新しいマネジメント手法の体系があってもいいと思います。実際、先進的な企業は、こうした新しいテクノロジーを、マネジメントに取り入れていることでしょう。

今まで、固定概念として考えられてきた、マネジメントの方法論は、じつは、事例を丹念にみていったり、新しい技術の登場のおかげで、バラエティに富んだものであって、唯一絶対なものはない。新しいマネジメントの方法を考えることができる時代がきていて、それこそを、経営上の競争優位とすることを考えてみるのは、価値があると思います。

コンサルティングを仕事としてやっていると、どうしても、クライアントごとの個別課題の解決に時間をとられて、なかなかあつかったプロジェクトを振り返ったりして、知の体系化をする時間がないのが課題だと思っていたのですが、今は逆に日々の業務から解放されているので、新しいマネジメントの方法という視点で、様々な事例を見ていきたいと思います。

2008年11月17日月曜日

違う意味合いを持つ2つの2位

フィギアスケートのグランプリシリーズ・フランス戦の日本勢の結果は、男子シングル小塚崇彦2位、女子シングル浅田真央2位でした。おそらくこの2つの意味する2位は、全然違うものだった思います。

小塚崇彦の2位は、まさに上出来の2位。実力の限りを出し切った2位。滑り終わったあとの快活な表情、やりきった感にそうしたことがありありと滲み出ていました。本当によくやった!と思える会心の演技だった思います。昇り龍のような勢いを感じさせる選手だったと、素人目にも思います。まだできあがっていない、これからもまだまだ伸びる余地がある、これからの成長が楽しみ、そんな感じです。

一方の、浅田真央の2位は、迷える2位。王者の抱える壁にぶつかってしまったかのような2位。滑り終わった直後の、あの悲しそうな表情、表彰台の上にたってもどこか浮かないその表情にすべてが表れていました。実際の演技は、あのしなやかさは健在で、芸術性もバッチリでうっとりさせるものがあるのですが、ジャンプにおびえている様子で、実際二つもジャンプをミスしました。

荒川静香も、10代に一時期絶頂をきわめて、その後ルールの変更や、王者ならではのプレッシャーを受けつつも、それをのりこえたのを思い出します。迷いの中から、自分なりの滑りを自ら確立して、その滑りをオリンピックでぶつけて見事に金をとったのを思い出します。かの有名なイナバウワーも、じつは、審査の評価上はプラスにはならないと知りつつ、周りからなんでプラスにならない演技を入れるんだという批判を受けつつ、あえて演技に入れていった。浅田真央も、そんな風にこれから成長していくのかなと思います。

プロの緊張感溢れる、そして息をのまずには見られない演技を生で間近で見ることができたのがgoodな旅行でした。

2008年11月16日日曜日

マッキンゼー:Strategy Classのケースより

今週のStrategy Classのケースは、経営コンサルティングのマッキンゼーでした。テーマは、組織の成長について。クラスの後半は、マッキンゼーのコンサルタントによるプロジェクト紹介。個人的には、自分の関心にもマッチして、とても面白いセッションでした-一方で、今回のクラスは、とてもつまらない、といっていたクラスメイトもけっこういたので、やはり人は多様だと思わされます。何が面白かったかといえば、

1. 組織の成長という個人的にも関心のあるテーマだった
2. ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白かった
3. マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトに満ちあふれていた

ということでしょうか。


組織の成長という面白いテーマ!

クラスを通じて、教授が伝えたかったのは、

・企業の競争優位を決定づける能力を獲得するには時間がかかる-そして、時間がかかるからこそ、競争優位になり得る
・そうした能力を生み出す、組織に関わる構成要素として、“人”、“組織構造”、“インセンティブ”、“カルチャー”がある
・これらの組織に関わる構成要素が戦略とマッチすることで、そこから生み出されるリソースが、企業成長へのドライバーとなり得る

といったあたりでしょうか。要するに、

企業の戦略、組織に関わる構成要素、競争優位となりうる能力・資源の間で、整合性をとることが大事ですよ、ということでした。

マッキンゼーという、ある意味で、“くせ”のある、人、組織構造、インセンティブ、カルチャーをもつプロフェッショナル・ファームが生み出す、ナレッジが、競争優位を生み出す資源になるというもの。ごもっともです。

ケースにあるナレッジ・マネジメントに関する議論が面白い!

さらに、あまりクラスでは議論になっていなかったのですが、ケースでは、このナレッジをどう取り扱うか、でマッキンゼー社内では、ひとつ課題になっているという記述が面白かった。要は、ナレッジをレバレッジしまくってクライアントの問題解決をするのか、もう一方の議論として、もっとゼロベースで、クライントの問題解決にあたるべきではないか、どちらに舵を切ればいいのか、がissueになっていました。ナレッジの整備は大事なんだけど、あまりそれに頼りすぎると、クライアント特有の悩みにゼロベースで取り扱えなくなり、tailor-madeソリューションではなくなってしまうのではないか、という危惧があるのでした。

これは、個人的には、結論は明快で、ナレッジをレバレッジして、クライアントの問題解決にあたるべし!だと思います。そして、「Client Interest First 顧客の利益をまず第一に考える」価値観があれば、ソリューションありきの解決策を押しつけることにもならないと思います。

第一に、ナレッジを活用することは、クライアントの課題のうち、コンサルタントが、もっとも難しい部分にフォーカスできることを意味します。というのも、ベーシックな課題のところは、既存の知識やノウハウで処理をして、そのクライント固有で、前例がないような課題、そこにわれわれのリソースをフォーカスできるわけです。クライントの課題のうち、共通性が高いところと、固有性の高いところを切り分け、後者にプロジェクトの時間を多く割くことができます。

トヨタをはじめとした、日本の製造業では、「改善」がすごい!と世界的に注目を浴びていますが、あの「改善」がすごい一つの理由は、「標準化」がすすんでいるからだと思うのです。「標準化」というと、マニュアル化ととらえられ、よりよくするとは全く対極に写りますが、日本の製造業が、この「改善」と「標準化」を両立できているのはなぜでしょうか?

それは、「標準化」という土台があるからこそ、その先の未解決の領域に取り組むことができるからです。じつは、「改善」と「標準化」は対立する概念ではなく、「標準化」があるからこそ、その「改善」ができるのであって、両方とも補完する概念なのですが、そのあたりの誤解は、まだまだこの世の中多いなあというのは感じるところ。私が思うに、「標準化」という言葉が悪いんですよね。

第二に、ナレッジを活用する文化は、結局は、みなが先進的なナレッジを生みだすことにつながります。ナレッジを活用して、効率的に問題解決をすると、ナレッジの重要性と有効性に気づきます。さらに、課題の中でももっとも難しい部分にコンサルタントが取り組むことで、そこから生まれる知見も、かなり希少なものになるはずです。ナレッジを活用する文化があるとすれば、同じような課題に遭遇したコンサルタントが、そうした知見を誰かが求めてくることになります。そこで、ナレッジの移転が起きるわけです。その際、クライアントの事例をそのまま語ってもだめなわけで、ある程度抽象化したナレッジとして共有することになり、クラインアントの抱える課題に関して、より一段上のレベルから俯瞰できるようになってくると思うのです。

そういうわけで、ナレッジの活用は、コンサルティング会社では大いに奨励した方がいいというのが私の持論です。

マッキンゼーのプロジェクト紹介がインサイトフル

クラスの後半は、実際の経営コンサルタントによるプロジェクト紹介でした。実際のゲストスピーカーをクラスに呼ぶことで、よりpracticalなトピックを学生に提供すると同時に、ゲストスピーカーを出す会社としては、自社のプロモーションにもつながり、win-winの関係ができています。

このプロジェクトの解決のアプローチがかなり鮮やかで、いわゆる、経営コンサルティング的な知的好奇心が大いに満たされたものでした。「そんなの当たり前じゃん」というひややかなクラスメイトもいたのですが、私は、同業者として、その鋭い切り口に至る紆余曲折が肌で分かる分、より楽しめたのかもしれません。

プロジェクトは、停滞しているコングロマリット企業の成長戦略というもの。100以上の事業をもっている企業で、あまりにも多種多様な商品をもっているため、この数年間どう、成長の切り口を見いだせばいいか分からないというのが依頼のテーマ。どの事業部も自分たちの事業部の大切さを説く中で、どのようなロジックで事業ポートフォリオを再整理すればいいのか、かなり迷走していたとのこと。

ゲストスピーカーがとったアプローチは、そのコングロマリット企業が展開している事業を、「マーケット側から再整理する」というものでした。すなわち、ある事業部は、じつは複数のマーケットに商品を提供しているので、事業部=マーケットではないのです。ひとつひとつの事業がどのマーケットセグメントに商品を提供しているかを分析した結果、100以上の事業部があるにも関わらず、そして多様な商品展開をしていると思われるものの、じつは、大部分があるひとつのマーケットセグメントにしか商品を提供していないことが分かっり、しかもそのセグメントは他のセグメントに比べて、マーケットサイズが急激に落ちているというものでした-だから、会社全体として停滞している!ということでした。

要は、利益の源泉は、マーケットセグメントの選択にあったわけです。どっぷりと事業サイドからみるクセがついているクラインアントとしては、このキードライバーが見えなくなっていたわけです。

この会社の場合は、マーケットセグメントの選択が、キードライバーだったわけですが、他の会社、インダストリーでは違うかもしれないということも、注意を促していました。たとえば、鉄鋼の場合は、どのマーケットセグメントもにたようなもの。むしろ、内部の業務プロセスにキードライバーがあるという事例を話されていましたが、同感。

ビジネススクールのいいところの一つは、自分の知的関心にあわせて、様々な知的好奇心のネタを与えてくれるところだと思います。他にもいろいろなケースから、面白い学びがあるので、自分の記録のためにも、少しずつアップしたいなとおもっとります

2008年11月15日土曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その3

ロジカルシンキング以前が大事というオハナシとして、3つのポイント。

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。

で、今日はその二番目について。「素直に考えること」。これはとても難しいと思います。
われわれ、経営のフレームワークなどなどを大量に学んでいるので、逆説的ではあるのですが、素直に考えられなくなっているのです。従来の方法や先入観、前例、過去の知見などに惑わされて、難しく考えすぎてしまうときがあります。それと、あまりにも当たり前の問題指摘や、解決策を出すと、頭が悪いんではないかと思われてしまう恐怖心も、素直に考えられない要因のひとつかもしれません。今の世の中ほど、シンプルに考えるのが難しい時代はないのかもしれません。

素直に考えるために、コンサルタント時代に良くやっていた方法は、「ぼーっと」考えること。それもできれば、頭が少し疲れているときの方がいいです。ある程度必要な情報を頭につめこんだら、目を静かに閉じて(そのまま寝ないように注意をして!)、頭の中にアイディアを浮かぶのを待つ、というもの。風呂につかっているとき、トイレにいるとき、タクシーにのっているとき、電車にのっているときに行うのがいいかも。

不必要な情報やフレームワークをシャットアウトして、頭の中だけで思考するというもの。若干、疲れているときの方がいいのは、無駄な情報も処理できてしまうため。本質的なことだけにフォーカスできるようにしたいわけですので。そして、シンプルな質問を投げかけるのも効果的な気がします。
 結局、何が原因で、どうなったんだっけ?
 要するに、何が問題なんだっけ?
 要は、どうすればいいんだ?
 クライアントは明日から何をすればいいんだ?

くもった眼鏡をはずして、素朴に考えることで、だれも気づかなかったんだけど、でも本質的な問題や解決策に行き当たることができるというシンプルな法則でした。

2008年11月14日金曜日

パリの休日~ファイナルグランプリシリーズ~



パリにきています。早起きをして(朝5時!)、最寄り駅からEurostarに乗ること数時間で、パリの北駅に到着です。もうかれこれ、10年ぶりのパリでしょうか。こちらパリも、ロンドンと同じかもしかしたら、もっと寒いくらいの気温かもしれません。そして雨。この何となくどんよりとした、なにかすかっとしないところが、いかにもParisという感じでしょうか。雨で建物が濡れていると、なぜか絵になります。

そして、ロンドンと同じ、同じヨーロッパ街並みなのに、当たり前ですが、言語はフランス語に様変わりで、コミュニケーションをとるのにもちょっと一苦労。ふと、考えてみると、ヨーロッパ圏で英語を母国語としている国はわずか、というよりイギリス、それも一部の地方だけ。英語は文化的にはとてもマイナーなのだなと改めて気づかされます-ビジネスは別として。

じつは今日は、フィギアスケート・ファイナルシリーズ第4戦フランス大会の初日です。さっそく行ってきました。スポーツはどれもそうだと思いますが、やはり生でみると迫力が違います。テレビでは見て取れない、演技の質感も伝わってくるようで、素人の私でもかなり楽しめます。

日本だとこのファイナルシリーズはたしか、朝日かなにかで放映されるほど人気ですが、会場はガラガラ。自由席なのに、妻と私でかなり前の方の席で楽しむことができました。そもそものフィギアスケートの国民的人気のレベルも違うということもあるかもしれませんが、こちらにきて思うのは日本は、興味の対象がかなり集中化しているということ。日本だとチケットが数時間で売り切れ、とかそういうのが常ですが、こちらだと、よほどのことがない限り、ほしいと思ったチケットは手に入るような感覚です。

さてさて、われわれ日本人の期待は、なんといっても、浅田真央でしょう。浅田真央がリンクに登場してくると、一斉に歓声があがります。この会場にこんなに日本人がいたの!と思うくらい、いたるところで日の丸の国旗もみえました。期待は募るものの、浅田真央、はじめのジャンプがうまくいかず・・・。その後も、その失敗を精神的に引っ張ったのか、なぜか演技にきれがなく終了。しかし、それでもSPで堂々の二位ですから、明日のフリーで頑張れば十分に優勝は射程範囲内です。



それにしても、浅田真央に限らず、フランスのジュベールなどの超大物スケーターもミスを連発していて、やはり「本番」に向けたコントロールはなんとも難しいものだと感じさせられます。

明日もこのファイナルシリーズ、見に行く予定なので、果たして最終結果どうなるか、しっかりと見届けたいと思います!

2008年11月9日日曜日

ロジカルシンキングより大切なこと その2

ロンドンは、すっかり寒くなってきました。こちらの紅葉も見事なものです。ロンドンは公園や広場が数多くあるので、そしてその伝統を大切にしているせいか、大木がたくさんあり、その黄色や紅に染まっている様はなんとも美しいものがあると思います。私のフラットの前の公園にも大木が幾本も並び、まるで紅葉の壁のようになっています。ここ最近は、その葉も相当と落ちて、木枯らしを感じさせる今日この頃です。

さて、前回書きかけになっていた、「ロジカルシンキングより大切なこと」の続きです。

問題解決といえば、ロジカル・シンキングなのです。しかし、実はその前に、こうなっていそう!とか、これが解決策なのではないか!という、筋のいい直観が出せなていないかぎり、ロジカル・シンキングもとても空しいものになってしまうというお話でした。実際、私も、ときどき採用面接で、インタビューイーがしきりに、ただひたすらに、ロジカルに細かく問題を分解していった果てに、何も出てこないというのも何度も経験しました。

で、前回書いたのが、以下の3つでした。

1.バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。
2.そして、素直に考えること。
3.もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。

こう書くと、当たり前すぎるのですが、どれも、個人的には、超!奥が深いと思っています。まず一つ目は情報収集プランです。

なぜ大事かというと、人間というのは、与えられた情報で、ひとつの世界観を作ってしまうから、です。その世界観でしか思考ができないという当たり前の事実を無視できません。たとえば、こないだ倫理の授業で習ったように、人間というのは、いとも簡単に組織文化に染まってしまう。組織内で受け取る様々なデータや情報をもとに、人間は、組織文化というひとつの世界観を作ってしまうのは周知のとおりだと思います。

社会に憤りを感じていた野心的な若者が、フォードという大企業に入り、瞬く間にそのOrganizational Contextの中でしか考えられなくなり、人の死も、「コスト」に換算し、本来回収すべき車種を回収できなかったわけです。

ですので、ある問題を解決しようとするときに、どのような情報のインプットをするか、これが極めて大事なのです。情報のインプットこそが、私のようなコンサルタントには、ひとつ、大事な差別化要因になっているわけです。クライアントには出すのが難しいバリューは、じつはここから生まれてくると思うのです。

なぜでしょうか?

それは、クライントがおおよそ、偏った情報のインプットをもとに、偏った世界観を形成し、その中で解決策を考えようとしているからです。

したがって、その偏りをきちんと、見抜いてあげて、よりバランスのとれた情報を集めるのがコツ。たとえば、

<領域の拡大>

・ある組織だけでなく、組織横断的に情報収集
(例)マーケティング立案だったしても、技術部、営業、総務部などからもきちんと話を聞く

・組織階層の一部だけでなく、上から下まで情報収集
(例)マーケティング本部長だけの話を聞くのでなく、現場の人にもきちんと話を聞く

・顧客層を拡大して情報収集
(例)じつは、クライアントは、自分の顧客を知らないことが多い。今までよりもスコープを広げて、マーケティング調査や、グループ・インタビューを実施する

・有識者・エキスパートから情報収集
(例)海外のエキスパートにヒアリング

<深さの拡大>

・社員の行動を詳細に調査
(例)業務改善プロジェクトであれば、業務執行者に1日べったり張り付いて行動を観察する

・顧客の行動・言動を詳細に調査
(例)クライントは意外と競合の顧客を知らないもの。競合のサービスを使っている人をみつけて、2,3時間徹底的に、なぜクライアントのサービスを使わないのかなどを徹底的にヒアリング

などなど、あげればきりがないのですが、要するに、バランスよく情報収集を行い、より適切な世界観を自分の頭に作る努力をするのが大事だと思います。そして、みんなの情報インプットの偏りに気づくことも重要です。

人間は、断片的な情報から、勝手にある世界を作り上げてしまうのだから、それを逆に利用してあげるのです。正しい世界観から、問題を俯瞰すれば、問題の真因や、解決策はとても簡単に思いつくことができるはずです。

クライント企業の人々が頭に描いている世界観とは違う、よりバランスのとれた世界観さえ、自分の中にもてれば、これはしめたものだと思います。

他人と差別化できるような、情報のインプットを設計するのが、いい仮説を思いつくひとつの方法だと思います。気づいたら長くなってしまいましたので、2番目の「素直に考える」はまた今度、書きたいと思います。

2008年11月7日金曜日

ロジカルシンキングより大切なこと

Strategic Problem Solving。数回程度の軽いセッションなのですが、いわゆる日本でもはやっている(はやった?)ロジカルシンキングの授業があります。教授のレクチャーに加えて、Boston Consulting Groupのコンサルタントもゲストスピーカーがきたりと、そんな科目。いわゆる、ロジックツリーやイシューツリー、論点設定、仮説設定、仮説検証、データ収集などなど、そんなもろもろのことを扱います。どうやら、LBSの学生は、この手の思考が弱いとの指摘をリクルーターから受けているそうで、この科目を導入したようです。ロジカルシンキングが弱いのは日本人だけではないようです。


仕事柄、ロジカルシンキングはよく使うのですが、これけっこう誤解があるのではないかと、授業を聴きながらふと思いました。というのは、ロジカルシンキングは、「ロジカルに考えれば、いい答えが出る」と誤解されているように思うのです。


語弊を恐れずにいえば、ロジカルに考えたから答えが出るというよりは、なんとなくこういう答えがあるので、それを上手に説明伝えるための武器として、ロジカルシンキングがあるように思うのです。なんというのでしょう、ロジックが先にくるのではなくて、直観、なんかこうなっていそう、思い、そういうのが先にあるような気がするのです。


たとえば、MECE(もれなくだぶりなく)に問題を分解すべし、というのがありますが、もれなくだぶりなく、物事を切る方法は、ごまんとありえます。日本人は、男女でもきれるし、年代別にでもきれるし、地域別、所得別、などなどなんでもありえます。ではどのような軸で、きればいいのでしょうか?それは、たとえば、「低所得層の購買が増えているかもしれない」というなんとなく直観があるからこそ、そうか、所得別に分解してみようという考えてが出てくるのではないでしょうか。意味のない分解は、何の役にも立ちません。


では、どうやったら、こうなっていそう!という、筋のいい直観を出せるようになるのでしょうか?思うに、ひとつには、バランスのいい情報収集プランを練るのがひとつ。そして、素直に考えること。もうひとつは、過去の経験・ナレッジの活用があげられるでしょうか。(続く)

2008年11月5日水曜日

Partners' Club パートナーの活動の場

Partners' Clubも立派なひとつのLBSのクラブでして、各種言語の教室や、小旅行の企画などを催しています。

 


毎週水曜日18:00から19:00まで、妻はPartners' Clubの英会話教室に通っています。LBSのセミナールームで行われるので、その間、私は子供と一緒に学校で遊んでいるわけです。学校のガーデンがすごく好きで、毎週きゃっきゃいいながら、走り回っています。困ったことに、最近は日が暮れるのが早く、だんだんと外で遊べなくなってきたこと。そうすると、子供と二人で、校舎を探検です。

今週の日曜日は、Partners' Club主催のBath旅行に行ってこようと思っています。
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2008年11月4日火曜日

ダイヤモンドは永遠の輝き~人工的に生み出されたその価値~



よく見慣れているこのこの手のCM。ダイヤモンドにまつわる素朴な疑問をいくつか。


なぜダイヤモンドは希少なのか?

ダイヤモンドの流通の70%から80%を握るDe Beer社が供給量を制限しているからなのです。じつは、南アフリカに大量にダイヤモンド原石が眠っています。

なぜ値段が高いのか?

供給量が減れば、価格は上がります。経済学のシンプルな法則によるものです。

なぜダイヤモンドは永遠の輝きなのか?

DeBeer社がそうマーケティングしているから。古今東西を問わず、ダイヤモンドといえば、”Diamonds are forever”。

価格が下落するリスクとして、中古ダイヤモンド市場が生まれてしまうこと。これを防ぐには、ダイヤモンドを購入したならば、一生もってもらわなければいけないわけです。だから、Foreverなのです。だから、婚約者に売るのです。見事なマーケティング戦略です。


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じつは、このDe Deers社、今日の経済学のクラスで使用したケースです。経済学で学ぶ、あの大胆なセオリーを戦略に応用しているという意味で、とても面白いケースです。日本のような成熟社会に長くいると、どうしても競合からシェアをとろうとか、商品を改良しようとか、きわめてミクロな視点に陥りがちです。しかし、マーケットに働いているもっとマクロなメカニズムを使って、企業の経営戦略を立案していく視点がもっともっとあっていいのではないかと気づかせてくれます。

しかし、ダイヤモンド関連のビジネスにかかわっていた学生によると、De Beers社のこの壮大な仕組みも今の金融危機で、これまた危機に瀕しているとのことです。じつは、De Beer社が、複数のダイヤモンドサプライヤーに統制を利かせているわけなのですが、昨今のようにキャッシュが不足してくると、サプライヤーの中にはキャッシュほしさに統制を無視してダイヤモンドを市場に流すようになるわけです。そうすると、ダイヤモンドは一気に価格が下落し、希少で高価だから買うというダイヤモンドの価値が損なわれるというわけです。私たちは、ダイヤモンドの次に変わる、新しい「石」を見つけなければなりません!