2009年12月31日木曜日

英国ロイヤルオペラバレーから学ぶ人材育成

世界三大バレー団のひとつ、英国ロイヤルオペラバレー団による「くるみ割り人形」を見てきました。まさにこのクリスマスから新年を迎えるにあたって、ぴったりのおちゃめで愉快なバレー。お菓子の国でのファンタジーな物語は、初心者の私も、無事、眠らずに楽しく数時間を過ごすことができました。





感心したのは、英国ロイヤルオペラバレーの人材育成術。


1.世界中からタレントを引っ張る

ロイヤルという名を冠しているものの、人材はローカル採用ではなく、それこそ世界中から取り入れているのがこのバレー団の特徴です。



たとえば、今日の目玉はなんといっても、世界最高峰とも言われる、アリーナ・コジョカル。彼女は、ルーマニア出身。



そして、うれしいことに、日本人も4人出演していたという快挙。こんなところで、日本のグローバル人材は活躍していたのです。うれしくなりました。韓国人もいました。



熊川哲也もこのバレー団出身ですね。



2.幼少からトレーニングをする

また、このバレー団、自前の学校をもっています。その名も、Royal Ballet Schoolで、これまた世界有数のバレーダンサー育成機関だそうです。



11歳から16歳が学ぶLower Schoolと、17歳から学ぶUpper Schoolの二つが併設。Upper Schoolは、専用の劇場Royal Opera Houseに隣接しています。



3.どんどん実地を積ませる

今日の「くるみ割り劇場」でも、このRoyal Ballet Schoolの学生の多くが出演していました。練習しながらも、一流の舞台に出演する機会が与えられるという仕組みなわけです。その上、超一流といわれるプロの演技を間近で同じ空気を吸いながら学びとることができる。



また、専用の劇場があることから、定期的にRoyal Ballet Schoolの発表会も頻繁にあるようです。



ロイヤルオペラハウス

専用のトレーニングセンターをもち、専用の劇場をもつ。優秀であれば世界中から人材を引き抜き、自前でトレーニングしつつ、実地経験も積ませながら成長させる、この人材育成の生態系が見事にできあがっていると感じさせるのです。



これは、ビジネス人材育成でも同じ考え方が通用しそうです。

2009年12月29日火曜日

会議では暖かい飲み物を出そう!

ロンドンは、ここ最近天気が続いていて快調ですが、外に出るとピリリと寒い。こういうときには、ぬくもりが恋しくなるものです。



今日のお題は暖かさについて。みなさんもご存じのとおり、暖かいには二通りの意味があります。



ひとつは、物理的に暖かいか冷たいか。熱い飲み物と冷たい飲み物とか、そういう表現のときにつかう「物理的な暖かさ」。



もうひとつは、あの人は暖かい人だよね、とか冷たい人だよね、というように使う「対人的な暖かさ」。



面白いのは、最近の研究成果*によると、この「物理的な暖かさ」は「対人的な暖かさ」を促進するというのです。



要するに、この二つの異なる「暖かさ」は、知らない間に私たちは、関連づけているというのです。



どういう実験かというと、被験者に暖かいものを持たせて、ある人にあわせるのと、冷たい物を持たせて、ある人にあわせるのとでは、暖かい物を持たせた被験者の方がそのある人をより暖かい人と判断する傾向にあることが分かりました。



この研究結果からの示唆:


会議や仕事で人を招いたときなどは、暖かいお茶かコーヒーを出しましょう!



*Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth

Lawrence E. Williams and John A. Bargh

2009年12月26日土曜日

革命をもたらしたセクシー料理番組

こんにちは、クリスマスも終わりですね。イギリスでは、12月26日もBoxing Dayと称して、お休みです。元旦明けの3が日はお休みというのと、同じで、クリスマスの余韻が残りつつ、New Yearを迎えるのです。



さて、Nigella Lawson(ナイジェラ・ローソン、1960年生まれ)をご存じでしょうか?じつは、彼女は料理ジャーナリストであり料理研究家。で、BBCやいくつものチャンネルで料理番組をもっています。



こう書くと、日本にでもありそうな料理研究家のパターンですが、彼女が料理界にもたらしたコンセプトが、衝撃的なのです。



ひとことでいえば、「料理」に「セクシーさ」を存分にもってきたということなのです。日本で料理番組というと、分かりやすく、清潔感あふれていて、昼間の明るい時間の番組で、わきあいあいという感じですが、これとは全く違う。



「料理」に「セクシーさ」。この二つ、一瞬考えると、相容れない感じなのですが、それを見事に合体させたところに、そのユニークさがあると思います。



こういう切り口があったかぁ、と思わず感嘆してしまう。そのインパクトたるや、すごくて、本が売れない時代に、今や彼女の本は全世界で300万冊!を売り切る実績で、メディア界でも相当な影響力をもつに至っているようです。



Youtubeに彼女の料理番組はゴロゴロ転がっているので、そちらを見て頂くとして、たとえば、ひとつあげるとすればこれ。



BBC “Nigella Christmas Kitchen”




この番組の特徴は、ドラマ仕立て、耽美、パーソナル・ドキュメンタリーの3つにあると思います。

ドラマ仕立て

実際のクリスマスパーティーを開催するというセッティングのもと、番組が進んでいきます。パーティする前日の準備、当日の朝何をするのか、そして、パーティ開催中はどう動けばいいのかなどを知ることができるわけです。だから、パーティ開催中のシーンなどは、キッチンを撮影していても、ゲストの歓談が聞こえたりする。また、誰もが憧れるようなキッチンとリビングルームのセットも雰囲気を盛り上げていますね。



耽美

50歳には見えないナイジェラの美貌を全面に押し出した番組づくり。料理をつくるときのアップの切り取り方も計算尽くされたつくりで、耽美感を醸し出しています。また、彼女の放つコトバ選びもたいしたものだと思います。また、途中に流れるジャズなどの音楽も日本の料理番組では考えられなかったセレクション。感覚に訴えかけるつくりです。だから、塩が何グラムでとかといったレシピは一切画面にでてこず。詳しく知りたければネットでどうぞということでしょう。



パーソナル・ドキュメンタリー

あわせて、この人気大物料理ジャーナリストのパーソナル・ドキュメンタリーにもなっています。料理の手順を伝えるのではなく、彼女がどう考えているか、どう思っているか、料理に対してどういう思いをもっているか、そんな彼女ならではのパーソナル感もよく出ているつくりになっている。



私なんかは、料理番組というと、NHKの料理クッキングのような固定観念をもっていたので、良い意味でそれを崩され、「こうきたかぁ!」と感心した次第です。思い込みを捨てることから、チャンスを生まれる、ですね。

2009年12月25日金曜日

英国家庭で過ごしたクリスマス・デイ

ヨーロッパでクリスマスといえば、家族で過ごす大事な時間。移民が多いロンドンは、すっからかんになる感じです。もちろん、ロンドンですので、いくつかのお店は開いていますが、いつもと違って、落ち着いているこの時期のロンドンも違う横顔を発見するようです。

そして、幸いにも、いつも親しくさせてもらっている近所のイギリス人カップル(プラス5歳になる娘さん、クララちゃん)が、新年に帰省することになったことから、クリスマス・デイに招待してもらって、イギリス的クリスマス・デイを過ごすことができた貴重な1日となりました。

一歩、フラットに足を踏み入れると、ミシミシと床がうなり、建物の歴史を感じさせると共に、部屋を見渡すと、エントランスの家具、向こうに見えるリビングルームの机、シェルフなどがどれも古く、ほどよくこなれており、何とも心地よい重厚感を感じるのです。

それに加え、フラットのいたるところに飾られているクリスマス・デコレーションが華を与えてくれています。応接間には、本物のクリスマス・ツリーがあしらってあり、きらきらと電灯がカラフルに点火していました。

新しいものはいいこと!とどこかで思っている価値観とは、正反対で、ひとつのものを長く使い込み、そのほどよい使い込み感を楽しみながら、部屋をコーディネートしていく考え方です。

ご夫婦は、アート・リサーチセンターを二人で経営していることもあって、部屋の雰囲気にもひといちばい気をつかっているのかもしれません。

そういえば、ご夫婦は、宮崎アニメを絶賛していました。とくに、5歳になる娘が大好きだそうで、ラビュタ、ナウシカ、ポニョ、もののけ姫などなど、ほとんど見ている模様。

食事は、サーモンとブレッドや、オリーブオイルなどのスターターにはじまり、メインの魚、ローストポテト、栗とミニキャベツのロースト、と続きました。じつにおいしいではないですか!

そて、デザートはイギリスならではのプディング・ケーキでもてなしてくれました。ひとつは伝統的なプディング、もうひとつは奥さんオリジナルのプディング・ケーキ。


イギリスの伝統的なプディング


奥さんオリジナルなプディング

伝統的なプディング・ケーキは、果物、ナッツ、オレンジの皮、レーズンなどがぎっしり詰まった、濃厚なケーキ。最後にブランデーをかけて、火をポワーッとともしてアルコールを飛ばす。とてもいい香りが部屋に充満する。もう、ここまでくると、お腹いっぱい!

子ども達はとっくのとうに、食事に飽きて、テレビに釘付け(苦笑)。だからオトナ達はゆっくりしていられるのです。ラッキー。

最後は、やはり、ここはイギリス、フォートナム・メイソンの紅茶とチョコレートをいただくと、もう外は真っ暗。子ども達も疲れてきているようで(遊びすぎ!)、一家帰路につくのでした。

家につくと、うちの子は上機嫌。何でだろうと思うと、こんな発言。「クララちゃん、I LOVE YOUっていってたっ(ニヤニヤ)」。それは嬉しいよね。クララちゃん、かわいいもん。
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2009年12月23日水曜日

LBSのキャリア支援ポータルサイトとは?

以前のエントリで、ビジネススクールは転職エージェントと書いたことがあるのですが、それは、Career Servicesという就職課と、ビジネススクールというハブの機能があるから。

最近のリーマン・ショック以降の転職・就職氷河期で、ビジネススクールの在校生は職探しに苦労しているのは事実。そのために、Career Servicesが不満のはけ口になったりしているのもまた事実。

とはいえ、基本的には職探しは、学生の仕事。Career Servicesが職を機械的に提供してくれるわけでもありません。

でも、それなりに彼らも努力をしてサービスを提供しているのも事実。私も委員をやっているコンサルクラブとCareer Servicesは毎週定期的にミーティングをしているので分かるのですが、彼らもけっこう必死。

Career Servicesは、業界毎にチームが編成されています。金融、コンサル、インダストリがまず大きな分類で、その中でいくつかのサブチームに分かれています。彼らの業績は、在校生の「就職率」で評価されているのです。

では、学校の就職課であるこのCareer Servicesはどんな支援を学生にしてくれるのでしょうか?あまり、日本になじみのない機能のような気もするので、さわりだけ紹介したいと思います。

中心的な役割を果たしているのがこの、Career Centralと呼ばれるキャリアに関するポータルサイト。



ここからCareer Servicesが企画する各種のイベントへの申し込みを行うことができます。カバーレターの書き方、1 on 1のコーチングセッション、業界説明会、会社説明会、インタビュー練習などなどがここからサインアップします。人気のセッションをすぐに一杯になるようです。

学生が受けるサービスとしては、これとは別に、ファイナンスクラブ、コンサルクラブ、PEクラブなどのプロフェッショナル・クラブたちが企画するイベントもありますね。ですので、とくにイベントが盛んになる11月などは、よくよく考えないとイベントに忙殺されることになりそう。

それから、目玉は、このジョブ・ポスティング。ちょっとしたインターンやプロジェクト、またパーマネントのジョブがここにポストされていて、ここからそれらに応募することができます。



なお、アジアもカバーされていますが、残念ながら日本マーケットはそれほどカバーされていません。

また、学生は履歴書(CV)をこのCareer Centralに登録する必要があり、MBA生に興味のある会社に公開されています。これを通して、ときどき会社からコンタクトがきたりします。学生同士のCVも見ることができるため、CVの書き方に役立ちますし、お互いのバックグラウンドを理解するのにも役に立ちます。

イベントで使用した資料は、いくつかのイベント・説明会に関しては、On Demandでビデオをパソコン上で閲覧することも可能です。




そして、大事なのが人脈づくり。LBSのディレクトリを使ってアルムナイを検索し、コンタクトすることが奨励されています。インダストリー、ロケーション、ポジション、言語、卒業プログラムなど多くの項目から検索をかけることができるので、就職だけでなく、それ以外の理由でも大いに役に立つのがこのディレクトリです。



こういう支援はあるものの、最後にジョブを勝ち取る学生は、結局ものすごい個人で努力をしていることも忘れてはいけないと思います。

2009年12月22日火曜日

MBA受験を考えているみなさんへ

いよいよMBA出願シーズンがはじまり、人によっては来年の中頃まで忙しくなるかと思います。在校生としては、日本でもより、LBSのプレゼンスが向上し、日本人入学生が増えてくれればうれしく思います。

私たちの代、MBA2010は日本人5名、その次のMBA2011は日本人9名と、ここ最近の減少傾向に歯止めがかかりました。最大の要因は、私費学生の増加なのですが、もしかしたら、ポンド安の影響かもしれません。

来期はこれが一時的ではないことを期待しています!ですので、アメリカには素晴らしいビジネススクールが揃っていますが、ぜひ欧州のビジネススクールも検討してみてください。

過去のブログの中から参考になりそうなエントリーとしては、まず学校の特徴についてはこちら

そして、LBSの出願エッセイの特徴については、こちら


また、己を知り、相手をしることがやはりエッセイの鍵です。LBSについての情報は、良質のものがけっこうウェブにも転がっていますので、思い付くままにリンクを貼り付けておきます。

LBSのオフィシャルブログ。在校生とアドミッションチームがブログを書いています。在校生のブログを読むと、日常が垣間見えてくると思います。

http://mbablog.london.edu/

とくに面白いのは、ある学生が11月のスケジュールを公開していて、1年目の秋学期の生活の様子が分かるかと思います。一ヶ月のスケジュールはこれ。
http://mbablog.london.edu/.a/6a00d834527c6769e20128764e76e4970c-pi

LBS MBA TV。アドミッションチームが作成したLBSを紹介するショートビデオ。全14編あります。映像があるとキャンパスビジットをされない方にとっても役に立つかな?
http://mbablog.london.edu/mbablog/mba_tv/

LBSの日本人在校生による非公式ウェブサイト。アドミッションチームも暗に認めてくれているサイトです。プログラムの概要に加えて、合格体験記、インターン、就職活動体験記も読むことができます。とくに合格体験記は、エッセイの準備、面接のこなし方など実践的なノウハウが含まれていると思います。
http://www.geocities.jp/london_bizschool/

LBSの教授陣について。教授については、あまり知る機会がないかもしれませんが、たとえば、この動画は雰囲気だけでも、参考になると思います。
http://www.londonbusinessschool2009to2010.co.uk/

それでは、みなさんのご健闘をお祈りしています!Good Luck!

2009年12月21日月曜日

ブログのラベルを整理してみました

このブログも気付けばエントリーは300ほどにもなり、かなり書き散らかした感があるので、左側にある「ラベル」を整理してみました(また分類方法は変わるかも知れませんが、現時点のは以下)

じつは、このブログ、読んで頂くという意味で適度なプレッシャーがかかり、かつ自分の考えを少し振り返り、定着化させるのにとても有効なんです。毎月最低15記事を書こう、と密かに目標を設定しいたのですが、大体達成できている気がします。

この留学生活ものこり1年きりました。書くことのできるエントリーも限られてくるというわけですね。書いておきたいのだけれど、いまひとつ落ち着いて時間がとれず、書けていないネタもたくさんあるのですが、なるべくアップしていきたいと思っています。

ロンドンビジネススクールを知る (121)
日常生活を綴る (64)
写真で見るヨーロッパ旅日記 (53)
経営を考える視点 (37)
ロンドンと英国 (35)
人材育成とビジネス教育 (28)
知の創造・蓄積・展開 (23)
マーケティングへの洞察 (18)
行き着くのはリーダーシップとヒト (16)
世界のMBA動向 (16)
世界経済を実感する (16)
コンサルタントの「技」 (12)
MBA受験に役立つ情報 (9)
我が国ニッポンを振り返る (8)
キャリア論と人生 (7)
コンサル業界と仕事 (7)
ビジネススクール初!アート展覧会 (7)
気に入った本・論文・記事 (7)

巨大岩の上にある街はロンダ

標高800メートルに位置するロンダは、なんと、岩だらけ。何人かの方々からロンダを薦めてもらったので、やってきました、この町に。スペインのマラガからバスで1時間45分ほどかけて、地中海沿岸から山へ登っていく。バスの車窓から、のどかな田園風景やなだらかな斜面と段々畑、また時折通り過ぎる白い屋根が連なる小さな街を楽しんでいると、ロンダにつく。この辺りのバスは、どれもすこぶる快適。シートの余裕もたっぷりあるし、バスの車体も新しいのがいい。スペインらしからぬ、時間の正確性も旅行者には強い味方です。



さて、このロンダの最大の見せ場は、この標高差100メートルあるヌエバ橋からの絶景。このような見せ場スポットは、まず日本ではあり得ない。危険すぎるのです!



そして、その深くV字に切り出された谷をのぞき込むと、おお、久々に味わうこの恐怖の感覚。もうかれこれ10年以上前には、山岳部時代に日本アルプスを縦走したいた頃の感覚が瞬時によみがえって来ました。



ヌエバ橋から望む、岸壁にはせり出すようにホテルやレストランが建ち並びます。日本のように地震が多い国でしたら、まず建築基準法にひっかかって、こんなのは無理で、観光スポットにならないでしょうね。



これは橋の反対側からの景観。いやー、人間、どんなところにでも住めるものですね。巨大岩の上にあるロンダは、コルトバと打って変わって、力強さたっぷりの街となりました。そして、やはりこれくらいのインパクト!がないと観光スポットにはなり得ないというのもひとつの教訓です。
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アイスランド人が語るアイスランド経済

今日は、アイスランドについて考えさせられた1日となりました。というのも、アイスランドの旦那さんとフランス人のカップルが3人の子ども!を連れて我が家に遊びにきてくれたからです。ロンドンとは国際都市といったものですが、本当に様々な国籍の人がいる。奥さんはフレンチですが、モーリシャス島のとなりにあるレユニオンの出身。じつに優しい方です。



私にとって、こうしたゲストと話すのが一番の世界経済の勉強になっています。その国の人話しをすることによって、日頃の乾いたニュースに彩りが添えられのです。彼らが本当はどう思っているのか、そんな素顔を垣間見ることで、経済の実態が少し見えてくるように思います。



日本人にとっても、2008年の金融危機では記憶に新しいアイスランド。アイスランドは、わずか30万人の人口で、国土は北海道と四国を足したくらいの実に小さな国。しかし、侮ってはいけない。金融危機以前は、一人当りGDPが8万ドルを超し、日本の実に2倍!世界でもトップ5に入る強さを誇っていたのでした。EUには加盟せず、独自の通貨クローナをもっていましたが、金融危機で一気にやられ、3つの銀行は全て崩壊、国の公的管理下に置かれました。



そもそも、なぜ一人当りGDPが高かったのか?

アイスランドの産業は、漁業と金融が主だとのこと。そして、漁業は相当に儲かっているのだそうです。金融に関しては、アイスランドの銀行はUKにもどんどん進出し、金利を高めに設定して、お金を集めまくっていたそうです。そのお金をどんどんまた融資していく。



そして、とにかく浮かれていた!

景気がいいときには、それでいいのですが、アイスランド人曰く、「それが長続きするわけがなかった」とのこと。なにしろ、貸し出しが相当ずさんになっていた模様。アイスランドは狭い国土、そして、みんな知り合い。だから、きちんとした審査もろくにせずにどんどん集まったお金を使って融資、投資しまくっていたらしいのです。



この世の春を謳歌していた頃は、アイスランド人はみんないい思いをしていたとのこと。会社の経費を使って、色々と楽しいことをやれたのだそうだ。まあ、バブル期の日本と似たようなものなのでしょうね。


EU加盟に一気に動いている!

危機をへて、今は一気にEU加盟に動いているそうだ。歴史的に、アイスランドはいつもEUとロシアの間にいて、どっちつかずの態度をとって、両者をもてあそんでいたそうだ。今回の金融危機の際も、ヨーロッパ勢ではなく、ロシアが4000億ほど融資するというニュースを覚えている方もいると思います。ヨーロッパが助けてくれるのなら、ロシアがいるもんね、という感覚。ところが、結局、ロシアは救済策を言い出したものの、結局お金を出してくれなかった!んだそうです。そうだったんだ。



でもって、やはり頼れるのはEUということで、一気に加盟申請に傾き、すでに加盟申請手続き中という変わり身の早さには脱帽です。それだけ、ショックが大きかったということでしょう。そうとなると、話しは早い。アイスランド人曰く、「すでに多くの経済活動がEUに組み込まれている」そうで、もともとヨーロッパに根を根ざしているということを主張していました。



でも様々な障壁が立ちはだかる

とはいえ、やはりEUへの反対も根強いようです。とくに、北欧諸国から独立した経緯があるアイスランドにとって「その独立心!を失うのか!」的なノリがあるらしく、ここを克服しなければいけないらしいのです。もうひとつ、彼が言っていたのは、漁業権がどのような影響を受けるか不透明なので、この点について多くの国民が疑心暗鬼になっているとのこと。



彼自身は、フランスに4年、イギリスに8年住み、海外生活が長く、もうアイスランドに戻る予定はないようです。アイスランドは今後、どうなるでしょうか。やはり30万の小国が単体で、この不安定な金融の世界を生き延びるのは不可能と証明されてしまった以上、EUには加盟すべきでしょう。でもアイスランド政府も気付いているように、早く動かないと、喉元通ればなんとかというように、危機の痛みを忘れてしまうと、独立熱がメジャーになりかねないと思います。

2009年12月19日土曜日

スペインとは“食”で繋がる!

スペインといえば、何を思い浮かべるでしょうか?

日本からスペインへはじつは直行便が飛んでいません。ロンドンやオランダなどのヨーロッパのの都市で一度乗り換えてこなければいけません。文化的、経済的にもにもラテンで南米と親密ですので、そういった点からも日本とつながりがうすい。

ところが、地理的な環境を見ると、意外と似ていることに気付かされます。まず、緯度がだいたい同じ。山がある。海に囲まれている。だからなのかどうか分かりませんが、日本食との共通点があり、だからこそ、私たち日本人はスペイン料理がウマイ!と思うのではないかと勝手に推測しています。

いやいや、スペイン料理は本当においしいのですよ。



ハムとチーズの盛り合わせ。スペインの生ハム、ハモン・セラーノは、口に入れると、塩味が絶妙でとろけそう。このあたりはどこかとろや和牛の感覚と近いのかもしれない。



これは、タパスの基本形とでもいいましょうか、ホタルイカの天ぷら。スペイン人の友人曰く、これは絶対食べろ、とのこと。

オリーブオイルで揚げてあるので、香りがとてもいい。レモンを搾って、熱々のまま口に頬張る。外はかりっとしているけど、ひとたびかむと、中はジューシー。アツアツと言いながら食するのが美味です。

そもそも、天ぷらのルーツは、このオリーブオイル揚げがルーツだとか。日本人の味覚に合うわけですよね。




そして、おなじみのパエリア。ライスに魚介ベースでの味付けですから日本人好みにきまっています。子どもは正直なもので、パエリア大好きと化し、顧客満足を通り越して、歓喜のダンスを始める始末。そう、顧客歓喜はこういうことですね。



そして、数々のタパス。食べきれません。調子にのって、オーダーしすぎました。



もちろん、イベリコ豚もおいしくいただけます。野菜ときのことともにいただくこのイベリコ豚も、ポーク料理が大好きな日本人の味覚によく合うこと。

やはり、人間、食べ物が豊かだと幸せになれるのだと実感させてくれるのがスペイン料理。

私たちがスペイン料理が好きなように、じつはスペイン人も日本料理好き。私のスタディ・グループメンバーだったスペイン人も毎日のように寿司を買って食べていると言っていたっけ。

先日は、スペイン人ファミリーと料理を教えあう会をやったほど。我が家で食事するときは、日本料理を教え、こちらから向こうにお邪魔するときは、スペイン料理を教わるというもの。料理をつまに話しも盛り上がり、このやり方はなかなかいいことを発見。

そう、スペインとは“食”でつながります!

ビジネススクールMBAも提携・連携の時代

 
産経ニュースによると、神戸大・慶応大・京都大がMBA教育で提携するとのこと。

神戸大と慶応大、京都大の3校は18日、MBA(経営学修士)教育で包括的な連携を行うと発表した。来年1月18日に基本合意書を締結する。私立と国立の専門職大学院が広域で提携するのは初めて。

現在、3校のMBA教育方法はそれぞれ異なるが、各校の強みを学び合うことで従来の欧米型ではない日本独自のMBAプログラムを開発するのが目的。来秋にも“出前授業”や単位互換を行う方針という。


日本のビジネススクールでもMBAプログラムで提携が始まってきました。その目的はまだこのニュースだけではクリアではないところもありますが、欧米のビジネススクールではここ最近、提携はかなり多く見ることができます。

たとえば、ロンドンビジネススクールは、その「国際性」というウリをより強固にするために、かなり広範に世界中のビジネススクールと提携をしています。その形態はいくつかの形があるようです。

1.交換留学
ロンドンビジネススクールの場合、MBAの学生のじつに35%(120人くらい)もが、30の他のビジネススクールに交換留学に出かけていきます。ですから、2年目にもなると、最近見ないなぁという学生が大量に続出するわけになるわけです(笑)。スペイン、中国、アフリカ、香港、オーストラリア、アメリカなど世界中のビジネススクールに出かけていくことができます。その枠は相当数あるため、希望をすれば大抵第二希望内にはどこかへ行けるようです。逆に、LBSに世界中のビジネススクールから交換留学にくるため、交換留学生ということで一クラスの絆ができあがっているようです。

2.ジョイントディグリー
LBSに現在あるのは、コロンビアビジネススクールと香港のHKUビジネススクールとの2校。それぞれの学校とジョイントでMBAを出すようです。また、コロンビアビジネススクールのあるニューヨーク、HKUのある香港、そしてLBSのあるLBSの3地点で学ぶという選択も可能だとか。いずれにしても、地理的な多様なニーズをとらえるために、他のビジネススクールと提携しています。中東エリアは提携はせず、独自にキャンパスを構えて、Dubai London MBA Programmeがあります。

3.カリキュラム共同開発
たとえば、最近何かと話題のCSRやEthicsに関しては、LBS、Oxford、Cambridgeで授業で使用するケースや教材を共同開発をしています。これは企業に置き換えて考えてみると、R&D、商品開発はジョイントで行うのと似ていますね。

企業の世界でも、全ての企業活動を独自に行う必要がなくなっていったとのとまったく同じ現象が、ビジネススクールでも起きていると見ることができると思います。

2009年12月18日金曜日

「組織が主語になる言葉」

これは、いつも読ませていただいている“Nakahara-lab.net 中原研究室 大人の学びを科学する”のブログ・タイトル。冒頭こういう出だしです。
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/12/post_1621.html


“先日、Learning barで金井壽宏先生がおっしゃっていた言葉で、非常に印象的なものがあった。  それは、 「組織が主語になる言葉は、怪しい」  ということである。”

そう、まさにこれは多くの企業の方々と接していて思うこと。企業もしくは職場の健全度というのは、そこで会話されているコトバでもって、ある程度判断できます。

今、財政的な危機に陥ったある教育機関のコンサルティングを学業の傍らで行っているのですが、まさに「組織が主語になっていたこと」が大きな根本原因だったのです。その教育機関のキーパーソンを集めて、ワークショップを開催したとき、冒頭で議論が膠着して、進まない。議論が進まない。自分たち探しをし始めたのです。

"そもそも私たちのミッションは何なの?ミッションをきちんと定義しないと、だめよ"
"チャリティ組織とは、こうこうしかじか、あるべき"
"今のこの組織は、そうなっていないから問題なのよ"
"この組織はチャリティ組織なのだから、利益を考えてはいけない"
"でも、今はお金がないのだから、利益を出さないといけない"
"創業者との関係をきちんと決めない限り、前に進めない"


この手の議論が始まると、絶対にといっていいほど、議論は収斂しません。なぜか?それは、どの議論の断片もそれなりに一理があるからです。みな、それぞれのバックグラウンドから合理的に正しいと思うコトを主張していくわけですから。

このような場合、全ての関係者が納得し、議論を導いてくれるガイドが必要です。では、どのようなガイドが必要でしょうか?

今回のケースでは、議論がきわめて内側に志向してしまっているので、それを外部から客観的に評価する必要があります。私がこのとき話したのは、「顧客」この一点のみです。

"みんなは、この組織のことばかり話しているけれど、生徒はどう思っているんでしょう?"

"400人の生徒のうち、100人がこの1年間で去ったのは、本当に金銭的な理由だけでしょうか?彼らは、何を思い、何を感じているのか、何に不満をもっているのか、そして彼らがこの組織に何を期待しているのか、みなさん答えられるでしょうか?"

"私たちは、まず、生徒さんの悩みに思いを馳せ、それをくみ取り、そしてその次に、この組織が彼らに何をサーブできるのかを考える必要があるのではないでしょうか。ですから、ミッションやチャリティや各種の施策はおいておいて、生徒のニーズ、思い、悩みから議論しませんか。"


だれもが顧客が大切だと思っています。しかし、議論の渦中に入ってしまうと、それが見えなくなる。そして、いつの間にか組織が主語になっていく。そのときに、この顧客の視点を一気に導入すると、いつだってきわめてパワフル。具体的な顧客の悩みと切り出すと、そこには誰もが逆らえない崇高感があるのです。組織が主語になっている場合は、顧客視点をガツンと議論の中に投げ込んであげると効果的です。ここさえきちんと押さえられれば、いわゆる通常のマーケティングのプロセスにのせてあげることができるからです。

2009年12月17日木曜日

イスラムが色濃く残る街、コルドバ

日本人には、宗教という概念があまりない-少なくとも私自身は普段はあまり意識しないで生活しています。じつは、文化も然り。日本人は、独特の宗教観をじつのところ、持っていると思うし、外から見るときわめて独特な文化も持ち合わせています。ところが、それを顕在的に実感としてもたないのは、奪われたことがないからではないか、そんな風に思います。奪われてはじめて気付くものがある。


スペインの南、コルドバは、文化の色が長い歴史の中で何度も塗り替えられ、その結果として独特な雰囲気を醸成しています。(コルドバの街並み)



8世紀まではキリスト教であったコルドバも、オスマン・トルコによる侵略でイスラム教に。その後、イスラムは大繁栄。その際のイスラムらしい建造物は街のいたるところで見ることができます。(メッシータで見ることのできるアーチ)



その後15世紀には、再びキリスト教徒の手にコルドバの地は明け渡されます。イスラムの建物を利用して造られたカテドラルがこれ。さらに、この建造に数百年を要していることから、その建築スタイルも変わっていく。まさに建築の変化と宗教の変化の両方が相まって、複雑性の高い建物に仕上がっています。(カテドラル)


さらには、ユダヤ人街もコルドバには残されています。ここは毎年5月には、花の祭典を行うようで、細く曲がりくねった通路が人と花で一杯になるそう。そんな時期に訪れるのもいいかもしれませんね。
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スペイン~城を改装した豪華ホテル

パラドールをご存じでしょうか?

パラドールとは、スペインにある国営のホテルチェーン。なんとその数はいまや、92。国営といって、侮ってはいけない。これらのホテルは、昔の城、宮殿、修道院を改装してホテルにしていることも多く、スペインの歴史や文化を堪能するにはうってつけ。

"観光の中心地ヨーロッパ、そしてその中の歴史と文化の宝庫スペインには素晴らしいホテルがたくさんありますが、スペイン独自に開発され国営のホテルとして世界中の脚光を浴びているのがパラドールなのです。"

"ベガ・インクラン伯爵が(現国王の祖父にあたる)アルフォンソ13世に提唱して自分の所有するグレードスの狩猟の為の山荘改装し1928年にパラドールとして公開したのが第一号です。その後、貴族制度の崩壊と共に荒れ果てていた昔からの歴史的建造物である古城や宮殿、修道院といった文化財を国家で買い受けあるいは借り受けて修復を施しホテルとして見事に蘇らせることに成功したのです。"

"文化財の保存の費用を生み出し、宿泊客からは一級の設備の整ったホテルでありながら、実在の歴史上の人物がかかわった城や宮殿に実際に触れ、中世の旅が味わえるということで世界中の旅行客から人気を集めているのです。アルハンブラ宮殿の修道院を利用したホテル・サンフランシスコや神聖ローマ帝国皇帝を兼ねたカルロス5世が住んでいたハランディージャ・デ・ラ・ベラなどは特に有名です。"


(パラドールの日本総代理店ウェブページより)

そして、驚くべきはその破格の値段。20歳~35歳までの若者であれば、何と一泊朝食付きで56ユーロ(およそ7500円)で泊まれるのです。これは、日本でいえば、東横イン並のローエンドな値段で、ラグジュアリー感満載のホテルを満喫できるわけです。その他シニア向けや連泊割引なども多く用意されていて、賢く使えばかなりよいと思います。

これを見逃さない手はないでしょう。

凍えるロンドンを逃げるようにして、やってきたのが南国色漂うマラガのパラドール。ここは、マラガの街並みを一望できるジブラファル城にあり、そこからの景色は息を飲むかのよう。マラガの海、街並み、要塞を展望するこの景色は、ホテルのロビーからはもちろん、レストラン、そして部屋からいつでも眺めることができるのは何とも贅沢。

爽やかで心地よい風とともにこの景色が朝を出迎えてくれ、夜は夜景とともにこの景色を楽しむ。中心街からは少し離れた丘の上にあるため、喧騒からも離れ、なんだかとてもゆったりとした時間が流れるていくかのよう。

そして、なによりもいいのがスタッフが子どもにとてもフレンドリー。あまりにもラグジュアリーすぎるホテルに泊まって、子どもが騒いで肩身がせまくなることもないのが嬉しい。



マラガのパラドールは30部屋


左にあるのがパラドール~最高のロケーション!


部屋からの景色


歴史を感じさせる佇まい


アンダルシアの雰囲気に寄り添うように過ごすことができたパラドール。次はどこのパラドールに行こうか、そんな風に思わせる魅力があります。
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2009年12月12日土曜日

「ジョージ・ソロス VS アカデミックの世界」から見えてくることとは?

イングランド銀行に対しポンドを空売りし、ポンドを暴落させたとして名を馳せたジョージ・ソロス。そして、ソロスファンドは、数千%の利回りをたたき出していく。

そのジョージ・ソロスと、ロンドンビジネススクールの教授陣Sir Andrew Likierman (chair), Julian Franks, Richard Portes, Lakshmanan Shivakumarがパネルディスカッションを展開しました。

独自の視点で世の中を見ているジョージ・ソロスと、ファイナンスの理論を通して世の中を見ている教授陣の対立が透けて見えるようで、面白かった。

じつは、私はソロスの思想には明るくないのですが、表面上は(?)教授陣は、ソロス氏の主張に賛同していましたが、おそらく根本的な思想の違いがあることがディスカッションから伝わってきてのが印象的。かつ、それは、私たちにとって、重要な示唆を含んでいます。

それはどういう対立軸か?

ファイナンスの世界には、効率的市場仮説という考え方があって、ファイナンスを少しでもかじれば、すぐに出てくる考え方です。

それは、おおやけ情報に基づいて株を買ったとしても、平均的な儲け以上よりは儲けられないというもの。この基本的な考え方からは、アカデミックの世界は様々なメッセージを紡ぎ出してきました。

パネルのJulian Franks教授によれば:

ハイリスク・ハイリターンの考え方
投資分散によるリスク低減の考え方
正味現在価値の考え方

が挙げていました。で、ソロス氏は、この効率的市場仮説を真っ向から否定する立場をとっています。この仮説を否定するということは、そう、上記3つの考えもたちどころに崩れることになるというわけです。

Franks教授曰く、「これらの一連の美しい体系が崩れ去るので、だから効率性市場仮説にこだわらざるを得ないのだ」と。

さらに、若きホープ的な教授であるShivakumar教授は、明確に「効率性市場仮説は、使えるのだ。どんな理論にでも限界はある。限界があるところは、他の理論で補っていけばいいのである」という主張。また、「それらの限界や、ソロス氏の主張についてはアカデミックの世界では今研究している」ともいう。

ソロス氏が大もうけした最大の秘訣は、ハーがリー生まれのユダヤ人であった彼が、ナチスの迫害から逃れながら、さらにはハンガリーのハイパーインフレを間近に見ながら、独自の視点でマーケットを見ることができたことだと思うのです。

効率性市場仮説の限界については、ソロス氏も教授陣も認めるところ。ここは両者とも賛成しているのでしょう。しかし、その仮説をなんとか維持して、よく言えば発展させよう、悪く言えば、つじつまを合わせようとするアカデミックの世界に対して、自分独自のモノの見方をした結果、その仮説を否定するソロス氏。

ここには大きな違いがあり、その違いこそが、ソロス氏の大もうけの秘訣なのではないかと思ったパネルディスカッションでした。

既存の見方を通して物事を整理しようとするか?
ありのままの事実を自ら咀嚼しようとするか?

みなさんはどちらのタイプですか?

2009年12月11日金曜日

ヒートテックっていいですね

 



去年の冬から手放せないものがあります。そう、ユニクロのヒートテックです。明日からの旅行に備えて、オクスフォード・ストリートで、ヒートテックを追加。日本ほどの熱狂ぶりはないので、手に入りにくいということはなく、それは助かっています。

なにしろ、冬のロンドンは、日本より底冷えするため、ヒートテックは本当に欠かせません。そして、冬のヨーロッパ諸国も概して、東京より寒いので、そうヨーロッパを満喫にするにも、ヒートテックは欠かせないわけです。

最近は、毎日来ているので、ヒートテックのありがたさが当たり前になってしまったのですが、去年はじめて着たとき、一瞬暖かい空気の固まりに包まれる感がしたのが、今でも衝撃的に覚えています。売り文句に偽りなし、と感じる瞬間でもありました。

こちら、ロンドンでは、JAPAN TECHNOLOGY –FROM TOKYO TO THE WORLDをキャッチにプロモーションが展開されています。そして、何よりもユニクロのヒートテックが秀逸なのは、やはり、このコトバに凝縮されていると思います。

Give yourself a fashion edge with HEATTECH

すなわち、ヒートテックを使って、よりファッショナブルになろうと。そういうわけです。ヒートテックを着ることで、薄着でいい、冬だからといってド重いコートを着る必要はないというわけです。また、ヒートテックを下着としてきて、上着のファッションは他ブランドという組み合わせもOKです。

ファッションをじかに追求するのではなく、ファッショナブルになることを「支援する」ポジションを取りに行ったことが個人的には最大の学びです。より抽象化すれば:

ある価値そのものを提供するのではなく、その価値がより発揮できるように「支援する」というのもマーケティング上あり。

ということになりますでしょうか。

今年のヒートテックは、「魅せる」ヒートテックもあるので、徐々にファッションそのものを提供する方向にも進みつつありますね。
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大学院生のクリスマス・ディナー会

コチラロンドンではいたるところがクリスマスめいて参りました。

私が住んでいるロンドン大学寮であるInternationl Hallでも、いくつかクリスマス・イベントがあって、こういったのがあるのも、大学寮のいいところかもしれません。この間は、Children's Xmas Partyがあり、4歳になった我が子もサンタさんからプレゼントをもらって、大喜び。

International Hallについては、ときどきロンドン・ビジネス・スクールのアプリカントからも質問を受けるので、そのうちまとめてブログに書きたいと思います。

今日の写真は、昨日のクリスマス・ディナー会。外で食べるとちょっとしたパスタだけで10ポンドしてしまうロンドンで、なんと一人5ポンドでクリスマスディナーが食べられるというもの。今まで、メキシカンディナー、レバノンディナーとあったのですが、ことごとく逃していたので、ようやくこのシリーズ・ディナーに参加することができたというわけです。

 

 


コースは、トマト・スープ、ターキーと野菜、フライド・ポテト、パン、ワイン、デザート。寮のディナーですから、めちゃくちゃおいしい!というわけにはいきませんが、これで5ポンドと聞けば、納得。

また、ロンドン大学参加の他の学生の話しを聞くことが出来るチャンスでもありました。ロンドン・ビジネス・スクールは、ロンドン大学傘下ではあるものの、比較的独立しているので、他学部との交流は少ないので、このような機会は貴重ですね。
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2009年12月7日月曜日

Eメールを上手に書けますか?

みなさん、Eメールを上手に書けるでしょうか?

私たちは誰でも、何気ないEメールをもらっては喜んだり、何気ない励ましの言葉がうれしかったり、はたまた、メールでドキッとさせられたり、怒ったりとしているのではないでしょうか。誰かからの返答を長らく待ったり、きつい依頼分を送ったり。

メールは実に私たちの日常の喜怒哀楽といった感情と密接になってきていると思うのです。

ビジネスにおいてもメールは重要で、マネージャーならば、最低1割、多い場合では2,3割の時間、もしくはそれ以上の時間をメール処理に使っているはずです。最近はブラックベリーやiPhoneが出てきたおかげでもっと増えているかもしれませんね!

この時間の多さは半端な量ではありません。私たちは、莫大な時間をメールに注ぎ込んでいるといえます!

でも、これだけ、私たちの生活にインパクトがあるにも関わらず、この「メール」という響きが軽いのか、こちらのマネジメントの教授に聞いてみても、まだそういう分野(すなわち、マネジメントにおけるメールの効果的な使い方とか)はまだまだないのだそうです。

日本から送った1冊にこんなのがありました。ぱらぱらと読んでみると、これがスゴイ。じつによくできているんです。



つまるところは、英文のメールの書き方なのですが、タダ単に例文が並んでいるのではなく、相手との人間関係におけるパワーバランスや、依頼する内容、礼儀などに応じて、事細かに例文が分析とともに掲載されてあるのです。

とくに巻末の「状況別」依頼表現100 (100 ways to ask)は圧巻です。“フレーズは、ソフト(丁寧)な表現から徐々にキツイ表現になるようリスト化されている”とのこと。

「FastPACK(架空の配達サービス名)で送ってください」という依頼が100通りに並んでいるのです。

たとえば:

非常に丁寧
Do you think you will be able to send it by Fast PACK?

丁寧
I hope you’ll be able to send it by FastPACK.
I wonder if I could ask you to send it by FastPack?

ソフトかつポジティブ
I would be grateful if you would send it by FastPACK.
Could I trouble you to send it by FastPACK?

礼儀正しいがちょっとキツイ
I think we need you to send it by FastPACK

礼儀正しいが相手にノーと言わせない
Would you send it by FastPACK?

直接的な命令
We expect you to send it by FastPACK.
I advise that you send it by FastPACK.

というわけで、この本、読み物としても面白い。
改めて、コトバは、表現豊かになりうることを再認識させられた一冊です。

話しは戻って、メールのビジネスにおける重要性は高まってきているように思います。この本のようなノウハウがもっと共有されてもいいかと思っています。何かおすすめのサイトや本などがあったらぜひ教えてください。

輝くためには(2)

以前のエントリーの続きです。かなり前になってしまいましたが、続きを綴っておきたいと思います。

以前のエントリーから一部抜粋

“今の日本では、Gratton教授がいうところの、Hot SpotやGlowできる環境というのは減ってきているのかもしれない。経済が成熟してしまい、プロジェクトX的な熱くなれる場所、燃えることのできる場所が減っているのかもしれない。

もしそうだとすると、輝くために、個々人ができること、企業ができることがあるというGratton教授の主張は、日本にとって、大きな意義をもつことになるような気がするのです。彼女は、壮大なことを主張しているわけではなく、ごくごく「そうだよね」と思えることを言っていますが、その内容はまた今度”

さて、その輝くための3つの原則とは、コレ。

協力する力
異なる世界から学ぶ力
やる気に火を灯す力


さらに、この力が、

あなた自身にあるか?
あなたのチームにあるか?
あなたの組織にあるか?


というように、3つのレベルでチェックすることを進めています。この3×3のマトリックス、すなわち9つをチェックすることで輝き度とその処方箋が分かるというのです。詳しくは、ぜひこの本を手に取ってみてください。時間があれば、ぜひ訳したいくらい。



さて、さっきの3つの力に戻ります。当たり前のようでいて、自分の反省を込めて考えてみると、仕事が忙しくなってきたり、疲れてきたりすると、意外とできなかったりするもの。たとえば、こんな具合に。

協力する力
→何とか自分で問題をねじ伏せようとしてしまうが、結局時間がかかってしまう
異なる世界から学ぶ力
→切羽詰まっているので、何とか身近にあるノウハウで処理しようとしてしまう
やる気に火を灯す力
→心身ともに削りながら、とにかくこなす、終わらせることに終始する

と、こう書くと、じつはこういう症状の日本企業は多い気がしてきてしまうのです。しかし、悲観していても始まりません。

Good Newsは、この3つの力を企業「外」に求める活動が若手のビジネスパーソンを中心に広がっているのではないかというのが私の勝手な仮説です。これは、この夏に短期的に日本に戻った折に感じた印象です。

たとえば、勉強会ブーム。たとえば、ビジネススクールブーム。たとえば、他企業への自主的なコンサルティング。たとえば、NGOへの活動。たとえば、ボランティア。

10年も不況というニュースが長らく続くと、どこかでその憂鬱な雰囲気を鬱憤すべく、こうした活動に繋がっているのではないかと思ったりするわけです。

問題は、ここが肝心なのですが、それがなぜ企業内に起きないのか?ということなのです。この3つの力を発揮したいと願っている、そういう場を求めている飢えたビジネスパーソンはいるんだけど、その場が社内にないのが問題なのではないか。

だとすると、この当たり前に思える3つの力の重要性に再認識させられるのです。

2009年12月5日土曜日

ビジネススクールからみた日本(その2)

World Economyの授業で、日本はどう紹介されたか?の続編です。前回はこちら

当日は、Tokeo Hoshi教授 (University of California)もクラスにコール・インをして、1時間ほどレクチャーをしていただきました。

なぜ、日本はこんなに停滞が長引いているのか?二つの考え方が示されました。

一つ目は、基本的に次の3つの失敗によるというもの。
1. 財政政策の失敗
2. 金融政策の失敗
3. 不良債権処理の失敗

財政政策に関しては、景気がまだよくなっていない97年の時点で緊縮財政路線に少し切ったのが失敗だったというもの。金融政策も同じようなロジックで、まだ回復していない段階で、金利を少しあげたのがダメだったというもの。不良債権処理は着手が遅すぎたというもの。

もう一つ、紹介されたのは、東大のHayashi教授の考え方。Total Factor Productivity(TFP、生産性)が落ちているという考え方。

経済の成長には、資本、労働、TFP(技術など)が必要ですが、日本はこのTFPがずっと低下してきている、ということです。そもそも、生産性が低い、すなわち金融の問題ではなくて、構造的な問題を抱えているという指摘です。

たとえば、銀行システムが機能していなくて、いまだにゾンビ企業に融資しているとか、労働の流動性がないために、なかなか新しい産業に人がいかないとか、そういう話しです。しかし、これらの改革は遅々として進んでいないというのがもっぱらの見方です。

明らかに二つの理由のうち、後者が本質的な理由だと思いますが、マクロ経済の弱いところは、問題解決の段階になると、急激に無力化するというか、具体論にかけるというか、そんな印象をもちます。

そして、こんな講義資料にはこんなコメントも:
“Amazing that a country that in many ways remains at the frontier of new technology has struggled so much in achieving productivity growth”

技術立国の日本が技術や生産性で悩む何て、不思議だねぇ、という指摘。やはり、ここはミステリアスであるようです。前回の冒頭の話しに戻りますが、ここに成熟社会の難しさの本質がある見え隠れします。

2009年12月2日水曜日

ビジネススクールが見る日本とは?

World Economy and Future Prospectsのクラスの最終回は、Japan。この授業は、全10回に渡って、各地域のマクロ経済状況や、最近の経済的な話題を概観するというもの。

カバーしたエリアは、ユーロエリア、アメリカ、南アフリカ、中国、インドなど。その他のトピックとしては、グローバリゼーション、金融危機など。一応、まだ世界第二位の経済大国だからかどうかは分かりませんが、有り難いことに、一コマ日本が入っているという感じです。

それでは、ビジネススクールは日本のことをどう見ているのでしょうか?

日本への関心は?


このクラスは、出席をとりません。したがって、そのクラスの出席状況を見れば、おおよそそのテーマへの関心度が分かるというものです。このクラスの出席状況はどれだったでしょうか。私がザッと見るところ、出席率は50%といったところです。驚異の低出席率!

さて、次回以降、日本は一コマ維持できるでしょうか?考えようによっては、日本をはずして、アジア全域で語ったり、ロシアにもっとフォーカスしたりとか、色々とクラス・ポートフォリオの組み直しはできそうですが。

さて、低出席率に話しを戻すと、たしかに、最終回でモチベーションが下がってきている、試験で忙しいという理由も考えられなくもないですが、この意味するところは何でしょうか?

経済・政治という側面からみた日本への関心度は極端に薄れていることを実感するともに、このクラスのFuture Prospectsに対しても憂慮したい気分にさせられるのです。一方で、文化・食に対する関心は明らかに高いように思いますので、全てがダメなワケではないのが救い。


日本はミステリアスな国?

冒頭のクラスメートの質問:

“日本は、イノベーションを次々とやり、テクノロジーはすごいし、日本に行くと、ありとあらゆるものがよくOrganiseされているし、きれい。一方で、ニュースを通して聞こえてくる日本は、失われた10年、長期低迷などGloomyなものばかり。この矛盾は何なのか?”

なるほど。

週に何回かコンサルティング・ファームの模擬インタビューを日本企業を題材にケースを出しているのですが、ほぼ100%の学生は、「日本は、Technologically advancedな国だから・・・」という枕詞をつけてくるので、そういうパーセプションなのでしょう。

にもかかわらず、たしかにFinancial Timesなどから聞こえて来るニュースは、ここ最近いいいものを見たことがあまりない。ここが外国人にとって、日本のミステリアスな部分なんですね。

教授の回答は、Good question。難しい質問がくると、先生はこういう傾向があります(笑)。たしか、言っていたのは、これはDeveloped Countryの直面するチャレンジで、西欧諸国も参考にしないといけない。均衡点に達してしまったので、Total factor productivity(技術、生産性など)を押し上げる構造的なリフォームをしないとダメかもしれないというもの。

まとめると、スゴそうなんだけど存在感がない国、という感じでしょうか。

次回は、クラス内容のポイントについて。

(続く)